~ 18 ~
それから少しの間睨み合いが続いたが、レイヴァンは突然剣を握りしめたまま老人に背を向けて走り出した。
「おやおや、あれだけ強気な発言をしたのに……背を見せて逃げ出すとは、貴方は今まで殺してきた人間で一番臆病な人間のようです」
老人はレイヴァンを嘲笑するが、彼は反論することなく走り続けた。
「そのような遅い速度で、私から逃げ切ることができると思っているのですか?」
老人は逃げるレイヴァンを物凄い勢いで追いかけ、わずか数秒で背後を捕えた。
「一撃で殺して差し上げましょう!」
老人の鋭い爪がレイヴァンの左胸を背後から捕らえようとする。
その刹那、レイヴァンは踏み出した足をしっかりと堪え立ち止まると、振り返りながら剣を思いっきり薙ぎ払った。
闇の中に不気味な悲鳴が響いた。
老人の左腕は切断され宙を舞い、ぼとりと地面に落ちる。
その腕は血が流れる間もなく石へと変わった。
老人は空中で振るえ、怒りを全身で表している。
「に、人間如きが!」
老人が叫ぶと、その姿は爪と牙が闇夜に鋭く光る悪魔へと変化した。
爪と牙以外にも嘴が尖っており一見すると鳥の化け物に見える。
「その姿、ガーゴイルか」
「生きては帰さんぞ!」
ガーゴイルは再び叫ぶと大きく翼を広げレイヴァンに向かって飛びかかってくる。
「そうやって、そっちから来てくれるなら空に居ても問題ないな」
ガーゴイルは残った右手を振りかざし、鋭い爪で襲いかかる。
それに対しレイヴァンは剣をかざして真っ向から迎え討った。
爪と刃が何度もぶつかり合うこと十数回。
レイヴァンは痺れを切らし大振りになった相手の攻撃を剣で弾くと、無防備となった胴に斬撃を繰り出した。
ガーゴイルは攻撃をかわすことができずに脇腹に一撃を受け、小さな呻き声上げる。
慌てて空中に浮かび上がり体勢を整えた。
レイヴァンの攻撃にガーゴイルの怒りは更に膨れ上がった。
文字では表現できないような言葉を叫ぶと、脇腹から血を流しながら再度向かってくる。
ワンパターンの攻撃には思わずため息が出そうだ。
先ほどと同じように相手の攻撃を受け流すと今度は立て続けに斬りつけた。