表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第5話 きんもくせいの手紙

 今井さんへ


 もうすぐ二学期も終わりですね。


 覚えていますか?

 わたしが駅で困っていた時、声を掛けてくれましたよね。すごく助かりました。


 劇のエキストラの募集があったとき、また今井さんと話ができるかもしれないと思って、すぐに自分から応募しました。

 でも今井さん、途中からあまり練習には来てくれませんでしたよね。

 それが少しだけ残念でした。


 文化祭の劇、とても楽しかったです。わたし、まだ台本を大切に持っているんですよ。

 たぶんあのころには、今井さんのことが好きになってました。


 あの金木犀の公園で、付き合ってほしいと言われたとき、本当は飛び上がるほどうれしかったです。

 でも、従兄弟とのことがあって……正直に言うのが、あんなに苦しいことだとは思いませんでした。


 山崎さんって、本当にいい人ですね。

(はじめて会ったときは変な人だと思いましたけど……)



 あの駐輪場での出来事は、きっと一生忘れないと思います。

 あんなに怖くて必死な今井さんを見て、頭の中が真っ白になって、何も言えず固まってしまいました。


 でも、これだけは知っていてほしいんです。


 わたし、一晩中泣いたんですよ……ほんとに、ばかみたいに。


 今井さんのことが、悔しくて。悲しくて。それでも、やっぱり好きで。

 わたしが、ちゃんと話せていればって、ずっと思ってました。


 お見舞いのショートケーキ、どうもありがとう。

 今井さんが走っていく後ろ姿を見て、やっぱりこの人が好きだって思いました。


 それで、従兄弟のお兄ちゃんに電話をかけて、思い切って自分の気持ちを打ち明けました。

 そうしないと、絶対に後悔すると思って……


 そうしたらお兄ちゃん、「子供の時の約束だしさ……俺も好きな人ができたし……もう、時効にしようよ」だって!


 もう、なんなのよー!

 でも、これでやっと自由になれました。


 まだ熱のあとのフラフラが残ってますけど、気持ちはとても楽になりました。


 あの公園の金木犀、もう散ってしまいましたね。


 今井さん、心の整理がついたら、また声をかけてくださいね。

 ……うまく話せる自信はないですけど。


 わたし、待っていていいですか?


 早川なつみ



(完)



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


まだまだ公開を控えている短編がたくさんありますので、準備ができ次第、また新しい物語をお届けする予定です。よろしければ、また覗きに来てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ