トレーダーになりたいの回
トレーダー(とれーだー)
カテゴリ:債券・金利 /株式 /為替 / 売買・取引
自社の資金を使って株式、債券、為替などの取引を行い、リターンを追求する業務に携わっている人。
ディーラーと同じ意味で使われることが多いです。また、為替や株などの短期売買を行う個人投資家はデイ・トレーダーと呼ばれます。
大和証券HPより
相場がよくなったり、大きな値動きで話題になる投資対象が出てくると、急にトレーダーになりたい人が増えたりするよね。例えば……、仮想通貨だったり、為替だったり、ライブドアやガンホーといった株だったり。テレビなんかでも「億り人」なんて特集がされ、金融取引で億を稼いで悠々自適な人へのインタビューが放送されたりもする。
「寝ているだけで、朝起きたらお金が増えている」
これは仮想通貨特集がテレビ放送された際の、伝説の名言である。どれだけ浮かれポンチな状況であったか想像がつくよね。今まで投資経験がなかった人が、すすめられて買ってみたら面白いくらいに値上がりし、利益がでる。投資経験が少なく、まだ値上がりしか知らない……、そんな方のお言葉。
実はこの放送のしばらく後に、仮想通貨のとんでもない大暴落があったんだけど、この人のお金は一体どうなったんだろうね?
今回は、証券マンがトレーダーになったお話。登場人物は、リテール営業で社長賞をずっと受賞していた海野さん。海野さんは、第1話で登場した、ダマテン東村さんと同じように、信用取引を中心に手数料を稼ぐタイプであった。とにかく株が大好き。仕手株、材料株、急騰株、もう派手に動けばなんでもありで、極端な値幅を形成する株式に乗っかり、値幅を短期で取りに行く手口だった。売買回数も多く、たとえば、顧客の利益が50万円あったとしたら、その裏で、海野さんが頂戴している売買手数料は150万円になっていた……、こんなことは日常茶飯事だった。
海野さんの得意パターンの相場なら、向かうところ敵なしの強さを発揮し、周りの皆からも称賛されるほどの才能があったことは間違いはないと思う。まあ、それがあったからトレーダーになろうと思ったんだろうけどね。
海野さんは、証券マン時代に貯めた3000万円と親類知人から集めた4000万円の計7000万円でトレーダーデビューをした。この海野さんの嗅覚がすごいと思ったのは、トレーダーデビューがアベノミクスの始まりのタイミングだったことだ。それは、世の中が株式暗黒時代から脱出するタイミングだったこともあり、スタートダッシュはすごかったらしい。TwitterやFacebookやインスタでよく見るような、派手なウェイウェイした「金」と「女」と「シャンパン」みたいな生活だったらしい。しかし、それも長くは続かなかった。
生活が堕落し今まで出来ていた情報収集を怠るようになってしまったこと。資金管理が甘く、マイナスをすぐに大きなロットで取り返そうと思ってしまったこと。失敗した原因になりそうな理由は色々とあるが、恐らくこれが1番の原因だろう。
『自分のお金に関しては冷静に判断できない』
こんな話がある。「自分の脳みそが、東京大学生レベルの、非常に判断能力がある優秀な脳みそであっても、自分自身の大事なお金の運用に関しては、その判断能力は高校生レベルにまで落ちる。さらに、大暴落局面になると、その判断能力は中学生レベルにまで落ちる」
自己資金の運用においては、冷静に、客観的に考えられることが出来るか否か……。これが非常に大事なことである。とある方は「ゲームのお金だと思って増減に一喜一憂しない。数字の変化には無感情を貫く」と語っていた。これくらいの強メンタルでないと、他人事のような客観的な判断での売買はできないのだろう。
金融先進国である欧米では、約70%の個人投資家が、金融アドバイザーと契約しているという。それは、自分のお金に関しての判断が冷静にできないことを理解しているからであり、文化と金融リテラシーの違いである。日本の場合、仮想通貨にしてもFXにしても株にしても、どうもギャンブルっぽく考えてしまうし、そのような取引をしてしまっている。「100万円が無くなってもいいから、それを種にチャレンジ」みたいなね。まあ、自己責任だから、好きにすればいいんだけど、それじゃあ資産は形成されません。
話が逸れたので戻る。
人のお金だと天才的な売買ができた人が、自己資金だとボロボロになって勝てなくなった。当初の7000万円は、そのほとんどを溶かしてしまったらしい。その後、また証券会社に戻ったとか。
「トレードで利益をあげる」「デイトレーダーとなり億を稼ぐ」それは、サラリーマンからの脱却を目指したい人には夢があるよね。そりゃ、面白可笑しく、カッコいいイメージのトレーダーになって億とか稼ぎたいよね。自由に生きたいよね。けどね、そんな甘い考えで始める人のメンタルでは、そのメンタルのせいで失敗するよ……。もはや、テクニカル分析の腕とか、ファンダメンタルズ分析の精度とかそういう話以前のお話。
なんか、証券マンとかトレーダーとか、イメージ先行で、本当の実態はよく知られてないもの同士かもしれんね。
「本当のギャンブラーは大金をつかむというバカなことは考えない。いちばん大切なのは『負けない』ということだ。他に仕事をしていない俺たちにとってタネ銭をなくすことは死を意味するからだ。素人は大金を夢見てギャンブル場に金を落とし『運がなかった』と言って家に帰る。俺たちには帰る所などない。ここが俺たちの生活の場所なのだから」