11 試験開始
試験者番号票。私が受け取ったのは308番。一番最後の番号票でした。
そして、リグレットさんが307番。
試験は順に、番号の小さい人から受けていくことになります。
番号の若い受験者さんは、私とリグレットさんが番号を受け取った頃には最初の試験を終えていました。
最初の試験は、身体能力テスト。と言っても、実際に身体を動かすようなテストではありません。
試験官は、ハンター学園の先生であり、そして現役の一流ハンターでもあります。
ですから、武に優れた人もいれば、魔法に優れた人もいます。
中には当然、無属性魔法に詳しい人もいるのです。
何が言いたいかといいますと……試験官のお姉さんは、『サーチ』の魔法で受験者のステータスをチェックしているのです。
ステータスが低すぎたら脚切り。つまりこの時点で不合格。
いえ、私は脚切りを気にしているのではありません。
……これ、全属性適性と耐性持ってるの、バレません?
緊張のあまり、ぎくしゃくとした動きでサーチ試験の列に並びます。私の前に並ぶリグレットさんは、こちらを訝しげにチラチラ見てきます。
あああああ、心配事が一度に二つも押し寄せてきたのです。
嫌なのです。トラブルは嫌なのです。
私は平穏に、何事もなく普通にやり過ごして、普通に合格したいだけなのです!!!
「……貴女。手と足が同時に出ていますわよ」
「へっ、あっ、どうもなのです!」
前からリグレットさんに注意されちゃいます。
「あの、貴女」
「ひゃい!? まだ何か変でしょうか!?」
「変なところはいくらでもありますけれど……そうではありませんわ。いつまでも貴女、と呼んでいるわけにもいきませんもの。お名前を教えてくださらない?」
リグレットさんに名前を訊かれ、私はつい笑顔になります。
これは、あれではありませんか?
お友達イベントではありませんか!?
リグレットさんと仲良くなれるかもしれないのです。
私はにっこり笑って答えました。
「はい! 私、ファーリです!」
「そう。ファーリ・フォン・ダズエルというのですね。覚えておきましょう子爵令嬢」
「あ、あの私はただのファーリなのです」
「安心なさい、わざわざ他言はしませんわ」
突然フルネームを出されてビビっている私を、リグレットさんは安心させるように言ってくれました。
私のことを怪しく思って疑っているはずなのに、気遣ってくれるなんて。
きっとリグレットさんは、いい人なのでしょう。優しい人なのです。違いありません。
「……うふふ」
「どうしたのですファーリ。気持ち悪い声を後ろで上げないでくださる?」
「はーい♪」
なんだか、本当にお友達になれたような気分です。
楽しくなってきました。
「では次! 306番!」
試験官の声で、現実に引き戻されました。
そうです。私は今、サーチされる危険にさらされているのでした。




