09 見知らぬお姉さんの助言
「ねえ、悪いことは言わないから帰ったほうがいいよ? お嬢ちゃん、見た感じ経験薄いでしょ。ここはね、お嬢ちゃんよりももっと大人の人が受けにくる試験なんだよ? それに、実戦ギリギリの試験もあるから、下手したら大怪我もしちゃうんだよ?」
全くもってその通り。
見知らぬお姉さんは、親身になって私を止めてくれます。
いや、本当にそのとおりだと思います……。
私だって、10歳の女の子がこんなところに居たら帰るよう促します。
けどまあ、帰るわけにもいかないのです。
「危なくなったら途中でやめるので、大丈夫なのです」
「……そう? そんなに言うなら止めないけど……本当に気をつけてね? 可愛らしいお顔に傷でもついたら、パパやママが悲しむんだからね?」
いや、でもちょっとこのお姉さん親身すぎません?
これ以上しつこく帰るよう言われても鬱陶しいので、話題を逸らすことにします。
「あの、お姉さん。今日の試験、有名な人やすごく強い人とかって試験を受けにきていたりするのですか?」
「ん? そうだねぇ……よし、ハンター試験歴3年のこのベテランお姉さんが何でも教えてあげちゃうぞ♪」
うまく話が逸れました。
というか、三年も浪人してるんですかこの人。
「前期試験で好成績だったけど落ちちゃった人がけっこう居るね。王宮騎士団員の娘さんとか、ハンターギルド長の一人娘。王都一の大商隊の専属護衛長の娘さんとか……貴族様もたくさんいるみたいだけど、中でも飛び抜けてるのはあの人!」
お姉さんは、一人の女の人を指差します。
サラサラの長い金髪を、高い位置でポニーテールにした女性。ここからだと横顔がちらりと見えるぐらいですが、それでもはっきり分かるぐらいの美人。
一瞬、その蒼い瞳がこちらを見たような気がして、ドキリとしてしまいます。
「あの人は、リグレットって名前なんだけど、それしか分かってないの。前期試験で圧倒的な成績だったのに、なんだか知らないけど途中で試験から帰っちゃったみたいで、不合格。前期の結果を見る限り、その日の受験者トップで合格するのが間違いないってぐらいだったから、試験官のハンターさんも惜しんでたよ」
なるほど、と私は頷きます。何か訳ありの受験者、というわけですね。
「それで、試験の成績もすごかったんだけど……何よりも、あの人は魔法の才能がとんでもなかったのよ」
「そうなんですか?」
私はリグレットさんの方を見ながら、首を傾げます。手に持っているのは、ライフルのような形状の銃に、銃身の下側に直刀を付けたような形状の特殊な銃剣。それも、片手に一つずつ。計二本。
どんな戦い方をするのか分かりませんが、それでも魔法主体で戦う人の装備には見えません。
「だって、すごかったのよ!? なにせ、みんな見てるところで、堂々と火、土、風、雷の4属性魔法を使ってみせたんだから! それも、その日いた誰よりも強力な魔法! こんな天才、ハンター学園創立以来初めてだって試験官が騒いでたよ」
「な、なるほど……」
4属性で、この騒がれよう。これは、私が8属性扱えることは秘密にしておいた方が良さそうです。
いや、最初から秘密にするつもりでしたけどね。より用心するつもりです。
「――これより試験者番号票を配布する! 希望者は順に並んで受け取れ!」
不意に、大きな声が響き渡りました。その方を見ると、ハンター学園の試験官らしい大人の女性がぞろぞろと並び、訓練場に入ってきたのです。
「そろそろ始まるみたいだね。それじゃあ私は行くから、お嬢ちゃんもがんばってね! 無理はしないようにね!」
お姉さんは、試験者番号票を受け取りに駆けていってしまいました。




