01 ファーリ、自分を知る
仲直りしたカミさまと手を繋いで、二人で王都に向かいます。
私は鍛えた身体のお陰で、旅路もそう辛くありません。
カミさまもまた、さすがカミさま、というところでしょう。疲れた様子も無く、日没までずっとあるき続けました。
その間。私はたくさんのことをカミさまに質問しました。
「カミさま。私の魔法の才能について、詳しく教えて貰えますか?」
「詳しく、というと?」
「全属性と無属性の適性があるのは知っていますが、それがどの程度のレベルの適性なのか、とか」
「なるほど。それなら簡単。ユッキーは元々、魔法の才能はずば抜けてるよ。現状でも、国内トップレベルの魔法が扱える。魔法耐性も同じで、どんな攻撃を受けても殆どのダメージをカットしちゃう」
「なるほど……つまり、魔法においては敵なしって感じなのですね?」
「いや、物理もだよ」
「?????」
「ユッキーはまだ勉強してないから知らないと思うけど、魔法の属性って、実は文字通りの意味じゃないんだよ」
カミさまは詳しく属性について教えてくれました。
それを纏めると、こんな感じです。
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
火属性:炎とか出す。正確には熱量操作。増やす方が基本だが、減らすことも可能。
水属性:水とか操る。正確には液体操作。自由に生み出せる。
土属性:土とか操る。正確には個体操作。自由に生み出せる。金属も自由自在。
雷属性:雷とか操る。正確には荷電粒子操作。
風属性:風とか操る。正確には運動量操作。物理攻撃は実は風属性。
光属性:光とか操る。正確には非荷電粒子操作。
闇属性:重力とか、なんかよくわかんねーパワーを操る。小難しい力は大体闇。
命属性:生命力とか操る。ヒール系。植物生み出したりして攻撃もできる。
複合属性:火と水で氷とか、火と水と土で毒とか、色々できるよ。
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
そして、この中でも重要なのは風属性です。
物理攻撃はつまり、運動量で対象にダメージを与える攻撃です。棍棒でシバくのをイメージすると、わかりやすいでしょう。
つまり、特殊なエネルギーや物質で相手を傷つける攻撃以外は、この世界『ファンタズム』においては風属性に該当するのです。
もちろん、物理攻撃と風属性魔法では出来ることは全く異なります。
ですが、属性としては同じ属性のダメージを弾き出すことになります。
つまり。
風属性耐性は、物理耐性も兼ねているわけです。
「……つまり、私は風属性耐性が高いから、剣で斬られてもダメージを軽減できる、ということです?」
「そだね。っていうか、多分傷一つつかないよ」
「仮に成人男性が全力で剣を振り下ろして来たとしたら?」
「チクっとするだろうねぇ」
これはひどい。
つまり、ほぼ無敵です。
「そこまで強いと、学園で目立っちゃって困るのです……私は、平穏が好きなのです」
「そうだねぇ……よし、それなら能力を『封印』すればいいよ」
「封印です?」
「そう。私がユッキーに今もやってること。正確には、条件付けによる能力の制限や開放、っていう仕組みなんだけどね」
「??????」
よく分からないのです。
「あぁ、つまり例えば『ユッキーが力を使いこなせるだけの経験と技術を得ている場合』という条件で、私がユッキーに与えた力が使えるようにしてあるんだ。だから、便宜上は封印と呼んでるけど、実態はちょっと違うね」
「なんか、よく分からないのです……その違い、意味あるのですか?」
「まあ、そんなに無いね」
だったら説明する必要無かったと思うのです。
「……で、その封印を使って、私の力を制限するのですか?」
「そうそう。正確には、ユッキーの身体の構成を少し書き換えて、力の一部分を『ユッキーが本気を出そうと思った時』に発動するよう条件付けするって感じかな」
「身体の構成を書き換えるって、ちょっと怖いのです」
「いや、そもそもユッキーの身体を構成したの私だからね? 実質ユッキーのママみたいなもんだからね?」
「ぬう……まあ、良いのです。とりあえず、手加減が出来るのは助かるのです」
「それじゃあ、構造いじっていい?」
「お願いするのです」
「できたよ」
「早いのです!?」
「いやこれでも神だからね? これぐらい造作もないからね?」
こうして、私は手加減をするのにちょうどよい能力を得ました。
カミさま曰く、私が自分の意思で封印した力は2段階あるそうです。
最大封印で『そこらの熟練戦士レベル』、一つ目の封印を解除すると『そこらの天才戦士レベル』になるそうです。
また、大規模な封印は主に私の攻撃能力に関してのみです。
耐性に関しては、ダメージカット率を少し下げ、物理攻撃でちゃんとダメージを受けるよう調整してもらいました。
……それでも鎧を着ている時に匹敵する強度がありますが。
耐性に関しては、封印しすぎると緊急時に危険なのだそうです。あとは自分の技術で手加減やダメージを受ける演技を覚えろ、とカミさまに言われてしまいました。
私も、この危険な世界であっさり死んでしまうのは嫌です。封印の程度については文句を言いませんでした。




