ココア
マスターって…ホントにいるんだ
なんかアニメとかドラマの世界だけだと思ってた
珈琲(コーヒーって書いたら失礼な気がして)のいい香りが漂う
昔ながらの喫茶店って感じ
自鳴琴って読むみたい
白髪の長髪を1つに束ねて、黒色のエプロンを着て
なんか…こんな感じの芸能人いたなぁ
その隣には…
「樹くん…エプロン似合ってるなぁ」
…そもそもエプロンに似合う・似合わないがあるのかわからないけど…
私はというと、カウンターの隅でちょこんと座っている
ここが樹くんのバイト先みたい
こんなとこに、喫茶店があるなんて知らなかった
それに…バイトって言えばコンビニしか思いつかないし
店内には、私みたいな高校生もいれば、仕事終わりに奥さんと来たと思われるサラリーマン、品の良さそうなマダムなど
繁盛…って呼ぶには少ないけど、お客さんが何組か来ていた
…隠れ家みたいな感じかな
「ココア飲める?」
店内を眺めていた私に、カウンター越しに樹くんが声をかけてきた
「あ、うん、大丈夫」
そう伝えると、戻って準備を始める
…楽しみだな
「ご馳走さまでした」
樹くんのバイトが終わるのを待って、私達は喫茶店を出た
早くも1番星が光っていた
「なんか…雰囲気いいとこだね」
「ん…元々珈琲が好きでさ、それで」
うん、わかる気がする
珈琲好きがこっそり集まるお店みたいな
グループで来てた高校生は、なにか話し合いをしてたみたいだけど
「カフェアートってわかる?」
「…珈琲の上に絵を描くやつ…だっけ?」
「そ…まだ練習中だけど」
なんか…ちょっと恥ずかしそう
…からかっちゃおうかな
「…女子力高いね」
「………」
あ…
睨まれた…
「………」
「うっ………」
「…そうかもな」
「ぷっ」
思いもしない肯定の言葉に、思わず吹いてしまう
なんだ…可愛いとこあるじゃん
「…そういや」
歩きながら、ふと思い出したかのように樹くんがつぶやく
「ん?」
「…お前今日どうすんの?」
「へっ?」
「………」
「…あぁぁぁぁ!!」
忘れてたぁ!
そうだよ、私、家出してきたんじゃん!
肝心なこと忘れてるし!
進路のことでお母さんと喧嘩して、もう戻ってこないって言い残して家を出て、それで…
あわわ…
「えっと…その…」
どうしよぉ…うぅ…
家に戻る?
いや、その選択肢はなぁ…
かといってまた泊まる?
昨日は記憶がなかったからまだよかった(?)けど、今日は…
あ、でも結局昨日のこと、樹くんから聞けてないんだよなぁ…
「ぅ…」
「………」




