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未定  作者: ちゅう
35/50

ほっぺ

「…入らないのか?」

「え、えっと…お邪魔しまぁす…」


樹さんに促され中へ

全体的にダークな色合いのお部屋だなぁ

なんか…樹さんのイメージ通りかも


「適当に座って」


リビングに入り、樹さんはYシャツの袖をまくってご飯の準備

私は…うん、ソファに座ろ


あの後、ハンバーグという単語だけでついてきてしまった私

お母さんには友達とご飯ってメールしたけど…

間違ってはないもんね

ってか、男の子の家って初めてだなぁ

中学校の時も、一緒にバカやってた男友達はいたけど…遊ぶなら外だし、付き合ってお互いの家にっていうのもなかったし…

あ、付き合ったことすらなかったです(てへっ)


「…キョロキョロしても、珍しいものはないぞ?」

「へっ?あ、いや、その…」


あわわ、自分でも気づかないうちにキョロキョロしてたのか

だって初めてなんだもん


「男の子の家って初めてで…樹さんは高校から1人暮らしですか?」

「ん…なにもなくてつまらないか?」

「ううん、綺麗にまとまってるなぁって思うなぁ…私の部屋なんかすぐ散らかっちゃうから」

「…想像つくな」

「むっ、どういう意味ですかぁ?」


まぁ…大雑把なのは認めるけど…


「お?もう成形してく感じですね」


対面式のカウンター越しに身を乗り出す

もうひき肉をこねこねしてる段階まで来てた


「私もやるぅ♫」


もうすぐハンバーグってだけでテンション上がってる私

単純だなぁ

隣には樹さん

この時は意識してなかったけど、端から見たら新婚夫婦みたいに映ったかも

後から思い出し、思いっきり赤面しました


「…デカ過ぎじゃないか?」

「そう?」


お肉をパンパンってやって、小判の形に…う〜ん…大判サイズかなぁ

気づけば手の平よりふた回りくらい大きくなってしまった

…食いしん坊がバレてしまうな


「いつも夕飯は作るんですか?」

「ん…大体は」

「大変だなぁ…お母さんも言ってるけど、1人分作るのって意外と難しいんでしょ?…誰かしらがいればいいんだろうけどねぇ…」

「…また来るか?」

「あ、バレましたぁ?」

「紗希だからな」


私の思惑、バレバレです

まぁ、その方が嬉しかったりして


「いっただきまぁす!」


おっきなハンバーグを目の前に、テンションマックス

樹さんのは私の半分くらいかな

あの後、焼いて、残った肉汁も使ってデミグラスソース作って…途中からよだれが止まりません


「うんまっ!」


絶対、ぜぇったいお母さんのより美味しいぞ

すごいな樹さん


「おかわり!」

「…ん」


勢いがいい私に驚いたのか、少し目を丸くしてから私の出したお椀を受け取る樹さん

ご飯がすすむよぉ


「はい」

「ありがとう…樹さん、料理上手ですねぇ」

「…食べる前に、ほら」

「へ?」


おかわりを貰い、ハンバーグに箸を伸ばそうとしたところで待てがかかる

樹さんを見れば…


「ん…綺麗になった」

「ぅんんん!?」


突然、樹さんの手が伸びてきて、私の口元に

どうやら、ハンバーグにがっつき過ぎて、ソースが口元についていたようだ

それを、躊躇なく指で拭き、ペロッと…


「い、いい…樹さん、なにをぉ〜」


こ、言葉にならない…

恥ずかしさ、ドキドキ、赤面…ごちゃまぜでなにがなんだか


「…紗希見てると、嬉しいな」

「………」

「まだハンバーグあるからな」

「う、うん…食べる」


その後は、おしとやかにハンバーグを頂きました

だって、恥ずかし過ぎて樹さん見れないし、なに話せばいいのかもわかんなくなって

樹さん…時々直球過ぎるボールを投げてくれますな



「ご馳走さまでした」

「ん、お粗末様…駅までいいのか?」

「うん、大丈夫」


マンションの外で樹さんに見送られる

ご飯を食べ終え、洗い物をしてる時になってようやく落ち着きを取り戻した

樹さんの顔も見れる


「い、樹さん、リアルに…また来てもいいですか?」

「ん…いつでも」


やった!

心踊る私…をなんとか沈める

もうちょっとで飛び跳ねてしまうところだった

危ない危ない


「私もお返しになにか作りますね」

「ん…ま、気にするな」


そう言うと思いました

ふと、ある映像がぱっと頭に浮かぶ

それは、人気アイドルグループがゲストに手料理を振舞う番組

その最後は決まって…


「…紗希、どうした?」

「あ、ううん、なんでも」


いやいや、ないでしょ

そんな、こんなとこで

でも、ほっぺならまだ…海外じゃ挨拶だし

いや、でも…


「………」

「紗希?…ホン」

「樹さん!」

「お、おう…どうした?」


思い立ったが吉日

勢いが大事

多分、いや、絶対顔真っ赤だけど

驚きの樹さんの顔をまっすぐ見る


「き、今日のお礼なんですけど…ちょっと、向こう見ててもらっていいですか?」

「?…ん」


単純というか、純粋というか…

樹さんだから…特別です


んっ


軽く触れる程度

ほんの一瞬だけ

でも…こんなにもドキドキして、嬉しかったりもして


「お、お礼ですから…他に意味なんてないですから…それじゃ」


見れない…見れるわけない

そして、見せられない

足早にその場を離れる


駅に着いても、電車に揺られても、家に着いてからも、ドキドキは続いてて

頭から離れなくて

ガムシロの回復も効果が見込めません



明日からの景色が、少し変わりそうです

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