恋バナ
「茜ちゃん、なんかいいことあった?」
「へ?なんで?」
「なんか、いつも以上にニコニコしてるっていうか…まぁ可愛いに越したことはないんだけど」
「か、可愛くなんてないよぉ」
薫くんは相変わらずだなぁ
キューピット…なんていったら言い過ぎだけど…
やっぱ、嬉しいよね
少し先を歩いている、真美の後ろ姿
その横には、しっかりと昨日の塩系男子
お似合いだな、ホント…
「薫くんは…今彼女いるの?」
「っ!?…急だね…もしかして、俺と」
「それはないなぁ」
遮りきっぱりと
決して嫌いじゃないけど、ないかなぁって
「うぅ…そんなきっぱりと…どう思うよ樹ぃ」
「…薫自身が1番わかってるだろ?」
「ぐ…さらにばっさりと切ってきたぁ」
あ、泣いた
「…今はフリーだよ、正確には昨日から」
「うそぉ!?」
「ホントホント…まぁ俺が悪いからいいんだけどさぁ」
「また浮気?」
「またってなんだよ!?」
「あれ、違うの?」
「ひどいなぁ、これでも浮気したことはないんだからな…まぁ目移りしちゃって、そこから喧嘩にっていうのはそっちゅうだけど…」
「ダメじゃん、それ…」
ホント、相変わらずなんだから
「そういう茜ちゃんは?」
「いないよぉ…なんか、友達の延長な感じでよくわかんないっていうのが正直なところで…」
「ふ〜ん…いてもおかしくないけどなぁ…樹もいそうでいないしなぁ?」
「っ!?」
急に話を樹くんに振る
それに大きく反応してしまう…心拍が早まるのが感じられる…
ふ、不意打ち過ぎる…
「…いそうに見えるのか?」
「見えるだろぉ…いや、冗談抜きで、男として、俺の次にカッコいいからな」
「…」
「…いや、そこ突っ込めよ」
「…薫はモテるから…恐縮だな」
「ってちゃうだろ!」
樹くんも相変わらず…
いない…そっか…いないんだね…確かにいてもおかしくないだろうけど…
…私…ほっとしてる?
「私と学食でよかったの?」
「うん、なんか、まだ友達の関係だし、色々噂されるのも好きじゃないって」
いつもは焼きそばパン求めてダッシュの真美とランチ
話題はもちろん
「今度、映画行こうって」
「いいねぇ、いっぱい楽しんできて」
昨日の困惑顔からは想像できないくらい、キラキラした目で話してくれる
羨ましいくらい
恋愛は女性を美しくするってホントなんだなぁ
だって、今の真美、同性から見ても可愛いもん
「茜は進展ないの?」
「な、ないよぉ」
「私にできることがあったら言ってね、是非とも協力するよん♡」
「ははっ…その協力が必要になる日は来るのかなぁ…」
乾いた笑いってこのことだよねぇ
自分でも明後日の方向に視線が行く
と、その視線の先には…っているはずもなかった
何を私は期待していたんだ、まったく
自分でも、恋愛に関してはよくわからないって言ってたのに…
女の子は恋バナが好き…私にも当てはまるのかな…
「ん…上手くなったな」
「へへっ、ありがと」
今日も樹くんの横にちょこんと
あれから自分でも淹れてみた
お母さんにはブーブー文句言われたけど
でも、珈琲の香りっていいよね
店内には今日も常連さんや女子高生のグループが
隠れた人気店ってこういうお店のこというのかなぁ
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「いいからいいから」
少し大きな声がする
カウンター越しに顔をあげると、この間樹くんに声かけてた女の子と別の女の子が2人でやって来ていた
片方の女の子は…紗希って樹くん呼んでたっけ
「りぃたん待ってって!」
「待たないよぉ…樹くん…だっけ?」
「ん…ご用ですか?」
りぃたんって呼ばれた子が樹くんに声をかける
紗希さんは…なぜか顔真っ赤
「樹くん、今週末もここでバイト?」
「ん…日曜はなにも予定ないけど」
「やった!…紗希とデートしない?」
「っ!!??」×2
びっくり…は樹くんじゃなくて紗希さんと私がだった
これだから顔真っ赤だったのか
でも…なんで私まで?…べ、別に私は…
「…紗希と?」
「そ…不満?」
「り、りぃたん、あのね!」
樹くんは…驚きもあるんだろうけど、きょとんっていう表現の方がぴったりかな
「い、樹さん、真面目に受けなくていいですからね、りぃたんがふざけて、その…」
「…構わないが?」
「ふぇ?」
「んっ!?」
「…俺なんかでいいなら」
「………」
ボンっ…て今音した?
紗希さん…煙出てないか?
わ、私は…ふ、普通だよ、いたって普通だから、別に…い、いつも通り…
「樹くんありがとねぇ、じゃ、後で連絡するねぇ」
固まった紗希さんを連れて、りぃたんは戻っていった
…嵐のようだな
「…い、樹くん、やっぱモテてるんじゃない?」
「…」
わ、私はなにを…
動揺してるせいかな…
「…モノ好きだな」
この後の珈琲は、どれも苦味が強くなってしまった




