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君の隣に  作者: ミサ
第2章
24/35

その23

「……おい、麻生…どうかしたのか?」

 メイを迎えて今日の撮影場所へ向かっている車の中で、俺は彼女に問い掛けた。

「えっ?何で…」

 窓の外を見つめていたメイがこちらを振り向いた。

「いや……何か、うかない顔してるから…」

 俺がそう言うと、メイは無理して笑顔を浮かべた。

「何もないよ、ちょっと緊張してるかな?」

「…は?……緊張?」

 何を今更−−−俺がそんな事を思っていると、メイは言葉を続けた。

「だって、今回は唯香さんがメインじゃなくて私なんでしょう?そんなの初めてだし……唯香さんに申し訳ないかな……って」

 たしかに今回の撮影と取材は【ルージュ】のモデルであるメイが中心になっている。そして唯香は撮影が少しだけだったはず……

「別に、今回は【ルージュ】がメインなだけで、来月は【ブラン】なんだから、申し訳ないって思うのは大袈裟じゃないか?」

「それは……そうだけど」

 メイはそう言うと、口籠ってしまいそのまま黙ってしまった。



 スタジオに着くと、すでに【ディア】のスタッフとうちの社員が到着しており、各々の段取りの確認と準備に慌ただしく動き回っていた。

 唯香は既に準備が出来ており、カメラマンの準備待ちといった様子だった。

「唯香さん……おはようございます」

 メイはいつもの様に唯香の所へ行くと挨拶をする。

 唯香も最近はメイに対して笑顔で接しており、時折何か2人で話をしている事もある。まぁ、仲良くしているのは良いことだと思うけど。

「おはよう、メイ。今日はあなたがメインね?頑張って」

「はい、よろしくお願いします」

 メイがお辞儀をすると、唯香はフッと笑ってメイクさんと一緒にスタジオの隅に行くと、そこにあった椅子へと腰かけた。

「じゃ、メイ。君も準備をしないといけないから……控室はこっち」

 俺は彼女を控室へと案内した。



 準備が整って彼女がスタジオへ戻ってくると、先程到着したリョウがメイの所へ近づいて行く。メイは彼の姿を見て笑顔で挨拶していた。

「メイ、今日はよろしく」

 リョウは満面の笑顔で彼女の手を握った。

「あ……こちらこそ」

「それじゃぁ、撮影始めるか!」

 カメラマンのその一言で、撮影は開始した。 

 最初は唯香の【ブラン】の撮影から始まった。新作の服を着ての撮影だ。

 今回は【ディア】読者が普段着れる様なワンピースやチュニック等が主だった。

 唯香はカメラマンの指示通り、無駄な動き1つ無くスムーズに撮影をこなしていった。

「じゃ、次はメイだな」

「あ、はいっ!」

 呼ばれたメイは、慌てて座っていた椅子から立ち上がるとカメラの前まで移動した。

 彼女の【ルージュ】は、今迄の大人の女性の服とは今回少し違っていて、二十歳前後の女の子の少し背伸びをしたい気持ちを現した服だった。

 背中が露わなドレスとかではなく、チュールを使って透け感を出した見えそうで見えない服に仕上がっている。

 まぁ、それでも一応【ブラン】に比べたら充分に色気漂うものだけど。

 さっきまでの浮かない表情はどこにも無く、今はカメラに潤んだ瞳を向けている。

 唯香もメイも撮影がスムーズに進んだ為、予定よりも早く撮影は終了した。

 俺はいつもの様にメイを送るため、彼女へ待っているように伝えようと近づこうとした時、リョウがメイに話し掛けた。

「メイ、俺が送るよ!着替えておいで」

「え?でもリョウさん、今から社に戻るんじゃないんですか?」

「いや、今日はそのまま解散だから、大丈夫。なんなら食事してから帰る?」

 2人の会話は近くにいた俺や吉澤主任、雪村さん、唯香や他のスタッフ等に筒抜けだった。

 何だ?この会話……2人こんなに親しかったか?

 他の皆も思った様で、驚いた顔で2人を見つめていた。

「それじゃ、着替えてきますね」

「あぁ、待ってる」

 メイはリョウに微笑むと控室に戻ろうとして---俺に気づいて近づいてきた。

「朝倉く……さん、今日は私……リョウさんと帰るので、送ってもらわなくていいです。ごめんなさい」

 俯きながらメイは謝ると、急ぎ足で控室へ戻って行った。

 俺は何も言えずに、そこへ立ち尽くしていた。

 え?一体どういうことだ?

 思考が止まってしまった俺に代わって、雪村さんがリョウへ話し掛けていた。

「……リョウ、メイちゃんと随分仲がいいみたいだけど?……」

 するとリョウは雪村さんの方を向き、にっこりとほほ笑みながら返事をした。

「はい…実はつい数日前から俺とメイは付き合ってます」

 その爆弾発言にその場にいた全員が言葉を失くした。


  

 


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