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君の隣に  作者: ミサ
第2章
16/35

その15

本編に戻ります。

お付き合いいただけたら光栄です。

 あれから1か月後−−−取材された記事が載った雑誌が発売されると、メイは更に忙しくなっていった。

 唯香と2人でファッション誌の表紙を飾ったり、トークショー等にも出る様になった。(最初は嫌がっていたが、唯香に注意されてからは頑張って出る様にしていた)

 その為、最近は2人でゆっくり話す機会も減っていた。




 今日は月1回の【アンジェリア】の企画会議の日だった。

 唯香は他の仕事が入っている為欠席だったが、メイは参加していた。

 今回の企画は、人気ファッション雑誌【ディア】と【アンジェリア】のコラボというもので、2人がその雑誌のモデル達と【ルージュ】と【ブラン】の服で一緒に撮影する。勿論、モデルの皆もその服で撮影をし、その雑誌の中で特集を組む。

 一部、インタビューも入れ込む形になる様だ。

「で、【ディア】の方からは、『真帆まほ』と『リョウ』、『あきら』が出てくれる事になった」

 吉澤主任がホワイトボードに書き込んでいく。

「雪村、【ルージュ】と【ブラン】のメンズをこの企画用で準備出来るな?」

 主任の言葉に雪村さんは頷く。

「大丈夫−−−各々5着づつ、今製作してるから」

「……よし、おい田辺、【ディア】の担当とは話し合い出来てるよな」

 田辺さんは俺の2年先輩で、人当たりが良いため交渉等は彼が受け持っていた。

「はい、カメラマン、ヘア、メイク−−−全てうちが指定していい事になりました」

 彼の答えに満足そうに頷くと、主任はメイを見た。

「メイちゃん−−−」

 突然、主任に呼ばれたメイは慌てたように返事をした。

「は、はいっ?な、何ですか?」

 主任はちらっと俺の方を見た(?)後、彼女へ笑いかけた。

「あのさ、今度の撮影ってリョウや瑛との一緒の撮影が多いんだけど、メイちゃん大丈夫?」

「…と、言うと?」

 メイが不安そうに、主任の顔を見た。

「そうだなぁ…カメラマンの意向にもよるかもしれないけど、【ルージュ】ってどちらかというと、大人なイメージだから、セクシーさを求められるかも…まぁ、キスくらいは覚悟しててくれた方が---」

 主任の言葉を最後まで聞かずに、雪村さんが立ち上がった。

「ちょっと、吉澤君!メイちゃんにそんなことさせないわよ。メイちゃん気にしないでいいから。私がそんな事させないからね!」

 安心させるようにメイにそう言うと、何故か俺の方を見た。

 何?雪村さん。

 俺が訝しげに見返すと、雪村さんはそのまま何も言わずに席についた。

「---私、大丈夫ですよ。カメラに向かってするフリだけですよね?」

 恐る恐る主任に尋ねる。主任もうーんと唸っている。

「カメラマンがどう言うかなんだけどね。俺も判らない…ただ、覚悟はしててほしいかな」

「判りました」

 メイは小さく答えた。



 その後、何事もなく会議は終了した。

「メイ、車を表に回してくるから待ってて」

 俺はメイにそう言うと、車を取りに駐車場へ向かう為会議室を出ようとした---が、雪村さんに掴まった。

「うわっ、と、何ですか!雪村さん、驚かさないで下さいよ」

「いいの?」

 いきなり彼女は俺にこう聞いてきた。

「---何がですか?」

 意味が判らず俺が聞き返すと、雪村さんはムッとした様に更に聞いてきた。

「平気なの?メイちゃんが他のひととフリだけでもキスするの」

 俺は雪村さんの言葉に、ドキッとしたが平静を装った。

「どうして俺に聞くんですか?撮影じゃないですか。別に俺は何とも思いませんが」

「あぁ…そう!判った---この、鈍感!」

 雪村さんはそう捨て台詞を残して、怒ったように行ってしまった。



「……うっ、美味しい!久々だわ…手作りのご飯」

 メイは感動した様に呟いた。

 俺は美味しそうに食べるメイの姿を見ながら、自然と顔がほころぶのを抑えられなかった。

 今日は、会議終了後は直帰でいいとのことだったので、俺は久々にメイを誘って俺の家で夕飯を作って食べさせていた。

「お前、飯はちゃんと食べろよ。今は忙しいんだから、体力はつけとかないと」

「---わかってるんだけど、外食や弁当が多いから」

「自分で作れよ」

「家に帰ったら即、眠ってるし。それに朝倉君みたいに上手くないもん」

 拗ねたようにメイは言う。まったく、こいつは。

「とりあえず、保存食作ってあるから持ってけ。これとご飯だけでも少しはましだろう?味噌汁くらいは自分で作れ」

 そう言って、何個かの容器を紙袋に入れてメイへ差し出す。彼女は驚いた様にそれを受け取った。

「え?いいの?ありがとう!助かる----朝倉君いい旦那さんになるわね…奥さんになる人が羨ましいな」

 屈託なく言うメイに恨めしい気持ちが湧く。

「そうだな、いつになるか判らないけど」

 自棄でそう言うと、何故かメイは一瞬、変な顔をした。

 ---何だ?

 だけど次の瞬間、笑顔で答えた。

「大丈夫、朝倉君の奥さんになりたがる人は沢山いるよ」

 お前は違うんだな。

 わかってはいたが、少し落ち込んだ。

 そして、その後はお互いの近況報告等を夜更けまで話し、俺は彼女を家まで送った。



 【ディア】との撮影当日。

 メイと唯香はいつもの様に、時間前にはそれぞれのブランドの服を着てスタジオに入っていた。

「おはようございます」

 元気に挨拶しながらスタジオに入って来たのは『リョウ』だった。その後から『瑛』と『真帆』が挨拶しながらスタジオへ入ってきた。

 リョウは真っ直ぐに、メイと唯香の方へ歩いてくると、2人に手を差し出した。

「はじめまして、2人と撮影一緒に出来て光栄だよ。今日はよろしく」

「あ、はじめまして。メイです。今日はよろしくお願いします」

 そう言うと、彼の手を取り握手した。

 俺はじっとその様子を見ていた。

 彼はニコッと笑うと、メイの手を握り返し挨拶した。

 そして唯香の方へも手を差し出したが、唯香はその手を無視した。

「早く撮影を始めましょう。時間が勿体ないわ」

 彼女の一言で、撮影が始まった。

 残りの2人もメイとは挨拶したが、唯香にはリョウと同じく無視されてしまっていた。

 大丈夫かと心配したが、さすが全員プロだけあって撮影には何の問題もなかった。



 唯香の【ブラン】は瑛と真帆が一緒に撮影に入った。

 白い服の唯香に、淡いベージュのスーツに淡い綺麗なピンクのシャツを着た瑛と、彼のシャツと同じピンクの服を着た真帆は、唯香を引き立てるように見せている。

 唯香は今日も清楚で、そこにいる全員が見とれていた。

 メイの【ルージュ】はリョウが一緒だった。

 彼は黒のスーツに着替えていた。さきほどのにこやかな表情とは違い、大人の男の顔をしている。片やメイはボルドーのドレスを着ており、2人並ぶと大人の色香が漂っていた。

 リョウはメイの腰に腕を回し、彼女の身体を引き寄せて顔を近づけている。

 駄目だ!直視できない。

 俺は撮影の途中だったが、スタジオから外へ出た。



「だから、言ったでしょ?平気なのって…」

 振り返ると雪村さんが呆れたように立っていた。

「…雪村さん、何で?」

「朝倉君のメイちゃんを見る目って、熱っぽいもの」

 雪村さんの言葉に俺は赤くなる。気づかれてた。

「黙ってて下さいよ。あいつには」

「何で?」

「迷惑かけたくないですから」

 雪村さんが何か言う前に、俺は再びスタジオへ戻った。



 5人で対談という形でインタビューを行い、それが済むと今日の予定は全て終了だった。

 唯香は次の仕事が入っているという事で、すぐに帰ってしまった。

 俺はメイを送る為に、彼女の着替えが終わる迄、待つつもりだったのだが---

 その日、彼女を送る事は無かった。










 




 

本編再開です。

新キャラ出てきました。

少しは話が進むかなと期待してます。

よろしければ、お付き合い下さいませ。


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