ハエトリ草が動く校舎その1
「キャー!キャー!」
逃げ惑い叫びをあげる教師や生徒達。
「キャー!キャー!はあ…、はあ…、離しなさい!オルバ!目の前に触手があるのに何故止めるの!?」
「俺というのがありながら植物と浮気するんですか!?」
止める理由はそっちですかオルバさん…。
「私の夢が目の前に広がっているのよ!?しかも植物系触手なんて生きてる間出来ないと思ってたの…。だから見逃してえ!!」
あんたっていう人はそんなこと考えてたんですか…
「駄目です。さあ、避難しましょう!」
「いや~!私のドリームうぅぅ!カムバ-ック!!!」
ズリズリと引きずられながら遠ざかっていく慶喜先生とオルバさん。
オルバさん、ウチの先生が迷惑かけます。
「さて、理恵?あんたの責任なんだから後始末くらいちゃんとしなさい」
「えー…」
「嫌そうな顔しない!」
シュル…ヒュン!
理恵目掛けて蔦がしなる。
「はあ、しょうがないなぁ…」
ゴソゴソとカバンの中を探っている。
蔦が理恵に届く寸前に理恵は何かを手に持っていた。
キュポン
ブスリ!
チュー…、
それは薄いピンク色の液体が入った注射器だった。
「んー…、失敗作だなぁ…」
蔦を見ずに注射し、チラリと蔦を見て呟く。
『ギッ…、ギャアアアアア!!』
巨大ハエトリ草が叫び声をあげたと同時に、
グズリ…、グズウ…、ベチャベチャ!
理恵が注射した蔦がグズグズになって溶けていた。
「理恵…、あんた何注射したの?」
「私が作った腐食剤の4倍の凝縮液…」
うおう…。また新しい毒薬を…。
「んじゃあ…、私は行くね…」
我等がマッドサイエンティスト、理恵、出陣す。
「あ、俺部室に忘れ物があったっけ」
「なに忘れたの?」
「カバン」
「ああ…。で、どうするの?」
「家に刀あるし、家に取りに行って校舎ん中入る」
何でそんな物騒なの持って来ようとするのかな?
まあいいか。
「がんばってね~。さて、家に帰ってダーリンの手紙をゆっくり読も…」
ヒュウウ
「「「あっ…」」」
風でとばされた真白の手紙が校舎の中に吸い込まれるように入っていった。
「ギャー!ダーリンの手紙があぁぁぁ!」
ダダダダッ!
追いかけて校舎の中に入っていった。
「いってらっしゃーい」
「頑張れよ~」
「従慈はどうする?私は除草してくけど」
「除草って…、また珍しいな。夜月はさっさと帰りそうだと思ってたんだけどな」
「ああ、あれに弟たちが泣かされたからそれのお礼参りよ」
従慈は凍りついた。
夜月は普段、あまり怒らないが(理恵は別)本気の時は見たことが無い。
昔俺がぼこられた時もいやでいやでしょうがないという感じで相手していた。
あれはあれでムカついたので女相手にマジになった。
結果、プライドすらズタズタにされたが…。
少し昔を思い出してブルーになったが横から殺気を感じ向いてみると、
夜月が凶悪な笑みを浮かべていた。
具体的に言うと、『どう料理してやろうか?』という感じだ。
「じゃ、行ってくるわ」
「はあ、しゃーねぇな、ついてってやるよ」
「あら、頼もしいね」
夜月・従慈ペア、理恵・真白に続き校舎に突入。
30分後、
「出遅れたな…、みんな行ったか…、それじゃ、真打ち登場といきますか」
草司郎、単独で校舎の東側、部室棟に突入。
理恵~
「はあ、後始末…、ちゃんとしとけばよかったなー…」
ヒュン!ヒュン!
蔦が襲いかかってくるが
バシャッ、
グズウ…
腐食剤を撒かれあっけなく溶ける。
「とりあえず、理科室いこ…」
理科室前、
「グルルル…」
ハエトリ草の補食部分が理科室の扉を護るように巻き付いている。
「ざっと50か…、繁殖能力は評価すべきかな…?」
「ガアアアア!」
「あー、気付かれちゃった…とりあえずあれ出さないと…」
カバンをあさり目当てのものを出す。
「あった、エタノールとスプレー缶と、チャッカ●ン…」
バシャン!!
エタノールの中身を全部撒く。
「ガアアアア!!」
補食部分が襲いかかるが、
プシュー、
慌てる事なくスプレー缶を補食部分に向けて噴射し、
カチッ、ボッ!
チャッカ●ンを点火して、
スッ、
ボオオオオ!!
「ギャアアアアア!!」
スプレー缶に近付けて簡易火炎放射器にした。
しかも補食部分にはエタノールがついているので火達磨になっている。
燃え移って無い補食部分が襲うが簡易火炎放射器に邪魔される。
理恵はまたカバンをあさり最後の仕上げの道具を出す。
「あった…」
理科室の窓を開けてそれを投げ込む。
そしてわずかに残ったエタノールをそれ周りに撒き、燃えている蔦を確認して逃げていった。
バアアアンッ!!!
その数十秒後、理科室が大爆発を起こした。
理恵が投げ込んだのは特性火薬とよく燃える液体を混ぜて作った特別製の爆薬だった。
エタノールを撒いたのは引火させるためであり、蔦を見たのは導火線になるかどうかを見ていたのだ。
理科室のハエトリ草はぐちゃぐちゃになり無事なのはひとつとしてなかった。
「はあ、後でみんなに怒られるなぁー…」
頭をぽりぽりかきながら呟やいた。