新たなる仲間
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裁判の後、皇子一行はリコリスを連れて帰った。着替えの一枚も持ってきていない。本当に身一つだ。
「とりあえず、あたしの服貸すから。ドレスは当分要らないかなー。今日から特訓だし」
ミナミはリコリスにハンターの服を着せ、皇子の元に連れていく。王城からの帰りの馬車で、彼は一言も口をきかなかった。あれは相当怒っている。ミナミも毎回勝手に話を進めて申し訳ないとは思っている。だが、あの頑固オヤジと堅物皇子では決着がつかないと思ったのだ。
「み…宮様はお怒りでしたね…」
リコリスがしゅんとして項垂れる。せっかく皇子の側に来れたのに、冷たくされれば当然だろう。
「大丈夫だよ。すぐ機嫌も直るよ」
「ミーナ様。あの、本当にありがとうございました」
改めて礼を言われると照れる。こんな可愛らしい令嬢が仲間に加わるなんて、ミナミは色々複雑な心境だった。
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リコリスを連れて練習場に行く。老師の家には、魔法の練習ができる広い場所がある。皇子が立って待っていた。
「お待たせ~。着替えてきたよ」
彼が無言で振り向くと、リコリスはいきなり土下座した。
「宮様!申し訳ございません!!」
ミナミは驚いて立たせようと腕を引っぱったが、びくともしない。皇子も目を見開いている。土下座のまま泣いているリコリス。
「ヨッシーが怒ってるから…」
「怒ってなどいない」
皇子は跪くとリコリスの肩に触れた。
「顔を上げてくれ彦四郎。…いや、リコリス」
ようやく顔が上がる。化粧をしていないので、前よりマシだ。皇子は優しく声をかける。
「すまなかった。長い間苦労をかけた。…俺が怒っていたのは、無力な俺自身にだ」
「宮様…」
「お前と再び会えて嬉しかった。だが家族を捨てるようなことは、させたくなかった。…俺が間違っていた。リコリス。再び俺に仕えよ」
「は…はいっ!!」
リコリスは喜びに打ち震えている。皇子はその腕を取って立たせた。ミナミはその姿に、過去の主従が少しだけ重なって見えた。
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リコリスは魔力量も属性も検査したことはなかったそうだ。なので老師に調べてもらうことになった。
「転生した異世界人か。スキルも知らんのじゃな?」
以前も使ったタブレット型の魔道具を出しながら、老師が確認する。
「はいっ!身体強化以外、ほとんど使えません!」
「元気はいいの…。まあ、剣術大会に出る子弟のほとんどは身体強化しか使えんよ」
リコリスが手を魔道具に乗せると、老師は覗き込む。
「魔力量600。ミーナより少し低いくらいか。属性は…光、雷、土だな」
「そーいや“癒し”使ってたじゃん。光魔法使えるんだ?」
ミナミはリコリスの記憶を思い出して言った。初めて気づいたようにリコリスが叫ぶ。
「そうでした!」
「あんたって結構脳筋よね」
「のうきん?」
「脳みそまで筋肉ってこと」
「ひどい!」
真っ赤になって抗議するリコリスは、正直言って可愛らしい。令嬢として育ったせいか前世の男らしさは全く感じられない。
(実際、ヨッシーはどう思ってるんだろう?)
気になる。元忠臣・現美少女が、彼にとってどんな存在なのかが。
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剣術大会優勝を目指して特訓の日々が始まった。大会のルールは簡単で、身体強化も魔法も使用可。相手を試合続行不能なほど叩きのめすか、降参させるかした方が勝ちとなる。
リコリスは剣と魔法を組み合わせた攻撃と防御を練習している。ミナミは土魔法が得意なのでそれを、皇子が雷魔法を指導する。
「せいっ!!」
可愛いい少女が気合と共に打ちかかる。今は皇子とリコリスが本番さながらの稽古をしているところだ。女性としても小柄な方のリコリスはリーチが無い。その分間合いを詰めるか、魔法でカバーをする。
打ち込みを防がれ、一旦下がり雷を打つ。前世が武士であった彼女の動きは良い。魔法も自在に打てるようになってきた。ただ皇子は容赦がない。女子なのに平気で壁までぶっ飛ばす。朝から晩まで、リコリスはボロボロになっていた。
「空恐ろしい令嬢じゃな」
隣で見ていた老師が呆れ声で言う。リコリスに魔法の基礎を教えたのは老師だが、剣術と魔法の融合武術は皇子たちに任せていた。
「身体強化をかけながら魔法は打てぬというのが常識じゃった。お前たちは全く新しい武術を生んだぞ」
「そうかなぁ。器用な人ならできそうだけど」
ミナミは王太子の近衛騎士たちを思い浮かべた。彼らも皇子にボコられながら、身体強化も魔法も使えるようになりつつある。二刀流ももうすぐな感じだ。
「ほらー!リコ!すかさず足を埋めちゃえ!」
「はいっ!」
場外からアドバイスを送ると、リコリスは素直に皇子の足元を土魔法で陥没させる。もちろん引っかかってくれるはずもなく、リコリスは胴をまともに食らって地面に沈んだ。
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そうして剣術大会当日。女性も参加OKという異例の大会は、リコリス・ヴィレッジ子爵令嬢の優勝で終わった。全ての試合で1分とかからず相手を倒すという圧勝であった。
彼女は王国初の女性騎士に叙された。正々堂々、“モーリー&ミナミ商会”の社員になったのだ。




