表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/129

園遊会

            ♡




 園遊会へ出席することが決まると、大急ぎで衣装の準備に入った。皇子のは王太子専属の服屋に超特急で仕上げてもらう。ミナミは馴染みの侍女たちに任せた。なぜか王太子宮にミナミと皇子の衣裳部屋がある。ドレスを一から作るには時間がなかったので、その中から適当に選んで、飾りを外したり追加したりして済ませた。


 園遊会当日。会は午後からなのに、二人は朝イチから入浴をさせられた。身分が低い者は早めに着いていなければならないらしい。皇子に腕を貸してもらい、ミナミは高いヒールに難儀しながら園遊会の会場に入った。


「モーリー様!ミーナ様!」


 早速皇子推しの令嬢たちがやって来てくれる。今いるということは、それほど高位の貴族家ではないようだ。

 今日の皇子も抜かりない。多少不機嫌だが、それはいつものことなので置いておく。磨き上げた容姿に、オーダーメイドの貴族衣装。匂い立つ色気に令嬢たちは声にならない叫びを上げた。


 続々と位階順に貴族が集まる。令嬢も集まる。推しの会はすでに組織化されていて、行儀良く並んだ会員たちは、一人ずつ皇子に挨拶をすることになっていた。


「モーリー様、ご機嫌よう」「今日も素敵です…」「あ、あの受け取ってください」…


 皇子は「ああ」とか「ご機嫌よう」とか「ありがとう」とか、適当に答える。ミナミが横でプレゼントを受け取る。返礼はできない旨も伝えるが、皆納得している。


(これは握手会とかしたら儲かるのでは…?)


 ミナミは良からぬことを想像して、皇子に睨まれた。


 最後の入場は王家のメンバーだった。王、王妃、側妃、王太子、第二王子、姫の順だ。噂の第二王子を、ミナミは初めて見た。王太子と良く似た美少年だ。金髪碧眼一家だ。金髪が嫁入りの条件なのかもしれない。

 王が園遊会の始まりを宣言し、玉座っぽい椅子に座る。王家のメンバーはその左右に分かれて座った。左が王妃と王太子と姫で、右が側妃と第二王子だった。

 人々は爵位の高い順に、王に挨拶をする。我々以下の身分はいないと思われるので、のんびり令嬢たちとおしゃべりをする。


「そろそろ陛下にご挨拶に参りましょう」


 男爵家の会員が声をかけてくれた。限りなく平民に近い身分らしい。挨拶の列に並び、順番が来ると、玉座を注視していた貴族たちがざわめく。ボアの褒章の時にいた連中だろう。いちゃもん重臣の顔もあった。何か言いたそうだが、王の許可があって来ているのだ。ミナミは胸を張って進み出た。


「王国の太陽たる国王陛下に恩寵あれ。本日はご招待、感謝する」


 皇子が代表して定型の挨拶を述べる。王は機嫌よく笑顔で答える。


「王太子の弓術指南と護衛の特訓の成果は聞いているぞ」


「とんでもない。太子と騎士たちの努力の賜物だ」


「滅多に褒めないのに。雨でも降るんじゃない?」 


 王太子が軽口を挟む。王はその様子を見て喜んだ。


「良い友を得たようだな。今日は楽しんでいけ。モーリー」


 皇子とミナミは一礼をして御前を辞した。王への挨拶が済むと、ユリア姫がやって来た。豪華なピンク色の妖精のようなドレスを着て、嬉しそうに話しかけてくる。


「ごきげんよう、モーリー様。よくお越しくださいました」


「ご機嫌よう、ユリア姫。花のようなドレスだな。よくお似合いだ」


 珍しく、皇子が女子の服装を褒める。姫は真っ赤になりながらも礼を言った。


「ありがとうございます!モーリー様も素敵ですわ。お兄さまと対のようです」


 そう。王太子の専属服屋が、同じデザインの色違いを作ったのだ。金髪に映える紺色と、黒髪に映える白色と。あの服屋も推しの会に入っているに違いない。


 ふと気づくと、不機嫌だった皇子の顔が綻んでいる。ミナミは前から気になっていたことを訊いてみた。


「ヨッシーってユリア姫には優しいよね。もしかして妹とかいた?」


「ああ。ちょうど姫くらいのがいた」


 やはり兄目線だった。そこへ女官が姫を呼びに来た。姫と同世代の挨拶も受けないといけないらしい。

 姫はもっと皇子と一緒にいたがったが、渋々去っていった。


 入れ替わりに推しの会のメンバーが皇子を取り囲む。美貌の皇子に話しかけたそうな貴族女性は多かったが、それに牽制(けんせい)されて近づくこともできなかった。若い貴族の男子たちも、困惑したように見ている。出会いの場を台無しにして、申し訳ない。ミナミは心の中で謝った。


 美味しい菓子やジュースを沢山飲み食いしたので、ミナミはお花摘みに行きたくなった。化粧も直したい。皇子に声をかける。


「ヨッシー、ちょっとお花摘みに」


(かわや)か」


「お花摘みだっつーの。皆さん、ちょっと失礼」


 ヒール問題もあるが防犯のためだ。平民の女が一人でフラフラしていると危ない。よってトイレまで皇子に付き添ってもらう。

 少し離れた建物内にある、女子トイレの前まで皇子にエスコートしてもらった。


「そこの中庭で待ってて」


「分かった」


 用を足して、落ちた口紅を直す。ちゃんと侍女さんが化粧ポーチを持たせてくれたのだ。

 髪も整えたミナミは、トイレを出た。


「!!!!!」


 皇子を探して中庭に出ると、茶髪の令嬢と抱き合う彼の姿が目に飛び込んできた。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ