↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/22

= 玄武編 = 花火の約束

獣国の襲撃と海が人質に囚われ、混乱する双成国。音図が失われた事により結界が崩れ天変地異、疫病、飢饉、争いの大地になる事を防ぐ為に東西南北に眠る四季神に=名還の儀=(魂の引き換え)の交渉に向けて各国へ向かう。

冬成国へ到着した立冬、睡蓮、葉楓、蟄は冬成国で歓迎の宴に参加する...



= 七年前 =



 暑い日差しは強く美しく、潮の香りと蜃気楼が肌をくすぐる。

四季学仙校の言霊使の子ども達は初めての合宿の為、夏成国に来ていた。


立冬、大雪、大寒は夏成国の暑さに圧倒された。

九歳の小さな三人は初めての夏成国に、まるで異世界に来たような感覚になり自然と身を寄せ合った。


春成国 立春、蟄、清明、

秋成国 葉楓、かぐや、寒露も初めての夏成国に何処か緊張している様子だ。


そこへ西瓜が睡蓮、海、小暑、芒種を連れて合宿所に現れた。


「よく来たね。辰年生まれ、閏言霊の卵たち。私は夏成国言霊使、西瓜だ。これから五日間君たちの指導役だ。あまり互いを意識せずに仲良くするように。では、挨拶をして早速、修行に入ろうか。」


皆はそっと探るように照れ臭く互いの顔を見た。


育つ環境が違えども子どもたちは仲が良くなるのに時間は掛からなかった。

中には、妙な対抗心を出す者もいたが、ずっと片手で数えられるほどの仲間としか過ごしてこなかった者同士、同じ歳の言霊使との交流に自然と笑みが溢れた。


「私たちは中等部になったら毎日、一緒に暮らすんだよ! ワクワクする!」

おとなしい清明が夏成国での時間が余程、楽しいのかキラキラしている。


「その時は、秋成国が春成国を酔イ踊レ乱舞で打ち負かすからな!!」

葉楓がイタズラな顔でキメポーズをとる


「まぁ、勝つのは春成国だと思うがな」

立春が澄まし顔をしている


「冬成国も負けないだぁ!」

大寒の大声に鳥肌が立つ一同


「それ地声なの?言霊込めすぎ! まぁ夏成国には敵わないと思うけど!」

呆れた顔で髪を靡かせた睡蓮が目に力を込めた


「そんなことより今日は花火が上がるわよ!!私たちは子どもだから夜祭には参加できないけど、大花火大会!!夜なのに昼間の様に明るくて夜空一面に花が咲くわ!」


「花火とは夏成国の言霊使の天能力?」

大雪がポカンとしている。


「花火知らないの?天能力じゃないわよ。火薬をつめた丸いのに火をつけて…ボカンよ!」


「説明がわかりずらいが、言っていることは間違えてはない…」

小暑が苦笑いをする


「そこで、私は考えたの!合宿所で大人しく花火観戦?大人たちは夜祭に行っているのに?そんなの不平等だわ! せっかく同期のみんなが夏成国に来ているんだから、

盛大に遊ばない?」

睡蓮の提案に皆は目を丸くした。


「そんな事をして大人たちにバレたら大変だぞ…」

とか言うんでしょ! 立春のモノマネをする睡蓮


「ぶ、ふふ…」

笑いを堪える 蟄


「私はそんな言い方はしないぞ! だが、やはりここは大人しくしておいた方が良いと思うが…」

立春が小声で皆の顔を見ながら言う


「育ちがいいのねぇ。真面目な男はモテないわよ? たまには弾けなきゃ!」

睡蓮と芒種が肩を組む

その姿を見た小暑と海がため息をつく


「この二人が組んでるって事はもう、決定事項よ…」

海が苦笑いをする横で、何処か楽しそうな小暑


「で、遊ぶってなんだよ?俺は花火が見たいぞ?」

葉楓が飛び跳ねながら言う


「花火なんて、また見れるわよ、…やるわよ!かくれんぼ鬼ごっこ!」

睡蓮が張り切って言った


「かくれんぼ鬼ごっこ…それは楽しそうではないか!」

立春は思わず心の声が漏れてしまうと一同が大笑いした


「ルールは簡単よ!かくれて鬼から逃げる。私たちは言霊使だから相手の〝気〟を読む事ができる、と同時に気配を消す練習にもなるわ!」


「素晴らしい、訓練の事も考えているのか!」

立春はますます興奮している


「御籤で鬼を決めるわよ!この筒の中に二つだけ赤い印の棒があるわ!みんなで一斉に引くわよ、恨みっこ無しよ! せーの!」


皆は真剣な顔をし、小さな手で御籤に手を伸ばすと、睡蓮の掛け声と共に一気に棒を引き抜いた。


各々が棒の先を見る


「私が鬼だ… 」

海が少し肩を落とした

「えっと、俺が鬼かな?」

立冬は海を見て少し微笑んだ


「俺らが鬼みたい、みんな捕まえよう!」


立冬の綺麗な瞳に心臓がキュンとなる海は少し照れ笑いした。


〝 ヒュ〜 ドンッ 〟と大きな音が聞こえて大雪がその場にしゃがみ込むと、まだ薄暗い空に綺麗な花が咲いた


「これが、花火…?」

大雪と皆の瞳に映る輝く花は時を止めた。


「次の花火の合図で始めるわよ!鬼は目を閉じて。六十数えてから目を開けてね!」

睡蓮に言われるままに立冬と海が目を閉じると、皆は、そろり、そろりと鬼から離れ身を隠した。


目を瞑ったまま、少しだけ互いの体が触れ合うほど近くで数を数えながら海はドキドキしていた。


〝何なのかしら、この気持ち…〟

目を閉じたまま海は立冬の顔を思い出していた。


「57、58、59、60。  もう良いのかな? 」

立冬と海は静かに目を開けると、それぞれ一歩足を前に出し〝気〟を探す事に集中した。


物置に隠れながら高窓から花火に見惚れる大雪。

一緒に隠れていた芒種が大雪の顔を見て見惚れていた。


「見つけた!」海が腹から声をだす。

「わ、マジかよ。俺ら一番?」芒種がガッカリな顔をする。

「そうね、芒種の気が漂ってきたわ」海が眉を下げて笑った。

「きっと私が花火に見惚れて気を消せていなかったんだと思う。芒種くん、ごめん」大雪は申し訳なさそうに呟いた。

「良いんだよ!海は優秀だから!」照れ笑いしながら芒種は大雪を励ました。


「大雪がいるなんて全く感じなかったよ。」

海は手を振ると次に隠れている人が何処にいるか気を集中させた。


海に見つかった二人はそのままその場で花火を見ることにした。


その頃、火薬庫に隠れていた睡蓮は花火の作り方の本を勝手に読みながら見つかるのを待っていた。


「隠れてるのって暇ねぇ」

あくびをしながらペラペラと本を捲る。


「見つけた!」立冬がそっと声をかけた。


「嘘でしょ?私、結界張ってたつもりだったんだけど!」睡蓮は苦い顔で肩を落とした。


「ほーい、捕まえてごらんなさい。ベー。」睡蓮は舌を出して立冬を煽る


「ハハハハッ」立冬が声を出して笑った。


「笑うんだ…立冬だけ夏成国に来てから笑った所見てなかったから…」


「そうだったかな? 何読んでたの?」睡蓮が持っていた本を指差した。


「あぁ、これ?花火の作り方の本よ。」


睡蓮はつまらなそうな顔で本を戸棚に戻した時、立冬が本に手を伸ばした。

二人の手が触れて眼が合う


「捕まえた。」立冬は静かに呟いた。


「立冬の目は青くて綺麗な瞳ね。その目を耳飾りにしてしまおうかしら!」

不意をつかれた睡蓮は悔しそうに言った。


「いいよ。そしたら、ずっと夏成国を見ていられるね。」静かに微笑む立冬


「こーわ。」睡蓮が身震いすると大きな花火が火薬庫の中の二人を三色に染めた


「いつか、冬成国に大きな花火をあげて…皆に見せてあげたい。」立冬の寂しそうな眼差しは花火に反射して物悲しく見えた。


「手持ち花火持って帰ったら?ここに沢山あるわよ?」睡蓮が指をさした。


「手持ち…花火?」立冬は睡蓮が指差す棒を手に首を傾げた


「本当に花火を知らないのね…」睡蓮は〝気〟を集中させた


「冬成国にとって火は命であり神様なんだ。」


「そ、じゃぁ私も神様かしら?」睡蓮は指先から小さな炎を灯し立冬の手に持たれた花火に火をつけた


「すごいな。火が出せる天能力… 」立冬が炎に見惚れている間に手持ち花火は静かに音を立てて小さな火花を出し二人の空間に小さくて綺麗な花火が踊った。

立冬の青い瞳は淡く赤く染まり一瞬の僅かな時間を暖かくした。


「何をしている!!」

西瓜が少し大きな声で二人を怒鳴ると立冬と睡蓮は口をあけ目を見開いて静かに目を瞑った。


そうして二人はお仕置き部屋に入れられる。


罪状

一、時間外行動

二、火薬庫の花火を無断で使用・つまり窃盗

三、室内での放火、及び天能力の悪用


「何故、この様な行為をした?」西瓜が呆れた顔で二人を見た


立冬と睡蓮は決して口を割らなかった。理由はかくれんぼ鬼ごっこをしていた仲間達を庇う為に無言を貫いた。


「良いだろう、今回は火事にならなかったから良かったが、火薬庫から火が上がれば大変な事になっていた。しばらく二人にはお仕置き部屋で自分の罪と向き合い〝気〟を磨いてもらう。弱音を吐いたら、この部屋にいるのが長くなるからな。では。

この口の硬さはお見事だ。お前たちは真の友の様だな!」

西瓜は苛立ちながらお仕置き部屋の扉を閉めた。


六時間〝気〟を集中させた二人は、お仕置き部屋から解放されるとパタっと倒れ込むように深い眠りにつき、二人は医務室で目を覚ました。


「一時間後には出発だぞ」西瓜が少しホッとした顔をした


「先生、ごめんなさい」

「ごめんなさい」


立冬と睡蓮が謝ると、黙ったまま大きく頷き西瓜はその場を後にした。


「もう、冬成国へ帰るのね。ごめ…」睡蓮が謝ろうとすると立冬が口を開いた


「ありがとう、睡蓮。凄く綺麗だった…花火。」


「… 私がもし、朱雀を継承したら一番に冬成国に花火を送るわ。約束よ。」


「俺と睡蓮は異国の親友だ。ありがとう。」



= 七年後 冬成国 =



肌寒く 吐く息白く、澄み切る地。


立冬、睡蓮、葉楓、蟄は無事に冬成国へ。

そして大命も故郷の地を踏む。


大命は深く息を吸い込むと目を閉じ、吐く息を輝かせ地と血が同化する様に力がみなぎり静かに瞳を開けると微かな声を出した。


「これだ…これだ…これだ…」


大命は、みるみるうちに膨大な〝気〟を纏わせ瞳を生き返る様に真っ直ぐに、立冬たちを見た。


「…ここはカムイの地さ。ようこそ冬成国へ。」


四人は莫大な〝気〟を放つ大命に圧倒され誰一人として声を出せなかった。



「煉獄堂はどうだった?大命。」

到着を待っていた冬成国言霊使カイの声は何処か嬉しさと悲しさと怒りといった感情が見え隠れしていた。


「…ただいま戻りました。」

大命は頭を下げるとパンッと頬を叩かれた。


「ご無事で何より。」


同じく到着を待っていた冬成国言霊使アワンが大命に手をあげた。その手は何処か安堵していた様に震えていた。


「改めまして、ようこそ冬成国へ。今夜は宴だ。」

カイが立冬、睡蓮、葉楓、蟄に優しく微笑んだ。




= ピリカ =


炎を囲いながら人々は輪になり踊り、歓迎の歌と、もてなしの料理を振舞い 

立冬、睡蓮、葉楓、蟄を歓迎した。


「今宵は春成国、夏成国、秋成国から神の子が我が冬成国へ来られた。大地は穏やかにこの時を与えてくださった。そして冬成国に大命が帰還した。全て意味がある事だ、明日、蝦夷本山に向かい玄武神との命還が速やかに結ばれる事を願い、踊ろう」


カイが皆の前で話す声は折り重なった糸のようだった。


「歌も踊りも見た事も聞いた事のない、なんて素晴らしいんだ。森と空気、人、全てが調和していくようだ」


冬成国の歓迎に感動する蟄の周りには雪虫が舞っていた。


「虫使いの天能力をお持ちの様ですね。」

アワンが優しい声で微笑んだ。


「虫使いの天能力を持つ言霊使に合うのは子どもの頃以来です。虫使いは途絶えてはなりません。あなたは自分の命を玄武神に捧げるつもりで来ましたね。」

アワンの目は見透かすように蟄を見ていた。


「…アワン様、僕は冬成国の〝気〟が好きです、人も。私は大きな家、地位、金、人が作り出した物の中で生まれ、それが当たり前で疑問も持ちませんでした。ですが虫と共に過ごしいつしか気がつきました。僅か数週間、数日の命を意味を持って全うする。

本来、人もそうなのだと。蜂が花粉を運び、ミミズが土を肥やし、大地を豊かにする。私は自分を全うしたいのです。」

蟄のアワンの瞳を真っ直ぐ見て微笑んだ。


「愛しているのですね。虫も仲間たちも。国も。ですが、玄武神があなたの命を選ぶかは分かりませんよ。」

アワンはそっと蟄の頬を撫でた。

蟄は一つだけ涙を流した。


「私でなければならないのです。朱雀である睡蓮、大地を操る葉楓、立冬、大雪、大寒を最後に冬成国には言霊使が生まれていません。玄武神に命を捧げるのは私しかいないのです。」

蟄は濡れた瞳でアワンを見た。


「春がなくなれば、花は咲かず、緑も芽吹かず、たくさんの虫が死ぬでしょう。大地が荒れれば荒れるほど虫使いは欠かせません。」


アワンはそっと蟄を抱きしめた。


空が星に濡れる頃、冬成国に〝ドンッ〟と音がすると夜空に美しい花が咲いた。


冬成国の人々は初めて見る花火に声を上げ手を叩いた。


その姿に立冬は心が熱くなった。


「ありがとう、睡蓮。」


「あの時の約束を守れてよかったわ。ナオイク王様の計らいだけどね。」


睡蓮が微笑んだ。

睡蓮の耳には立冬から送られた耳飾りが花火の光に反射して光っていた。


「俺、睡蓮と出会えて良かった。」


立冬の横顔を見つめながら、睡蓮は自分の恋心に気がつく


「私はどうして今頃、こんな気持ちになるのかしら…」


「どんな気持ち?」


「ただ、時が止まればいいのにと思っただけよ。」

睡蓮はいつものように平然を装いながら少し強がった。立冬への気持ちを打ち消す様にした。


「俺も。」


立冬がそっと睡蓮の手を握った。


「捕まえた。」


あの時と同じ台詞を口にした立冬は睡蓮の手をしばらく離さなかった。睡蓮は頬を赤からめながら手を握り返した。


若い二人は互いの恋心に気がつきながらも決して結ばれる事はない他国の言霊使であり、睡蓮はまもなく朱雀を継承する。ただ、今だけは花火が終わるまでは友達でも恋人でも言霊使でもなく、鼓動を通わせ手を握った儚い夜であった。


一方、葉楓は初めての冬成国の大地に心奪われ、地面に耳をつけ神秘的な〝気〟を感じとり自分の体に取り入れていく。


「金が流ている。この地は宝の山だ。間違いない、大地が俺に挨拶をしてくる。何なんだこれは。 そうか…生きてるんだ。意思があるか。冬納様が目覚めない理由はこれか。」


その時、大命が葉楓の肩を叩いた。


「冬納に会いに行こうか、一緒に。」


「え…」


「眠り姫を起こせるかもしれないな。君なら。」



次回、=玄武編= 冬納 名ハ 柊  







次回、=玄武編= 冬納 名ハ 柊 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。