自称普通の高校生は家を買う
「ウチはペットお断りだよ!」
宿の女将さんの怒声が響く。
ネコにメシを食わせた後に、宿に向かったら速攻で宿泊拒否されてしまった。
獣人族への差別は根が深いらしく、宿へ向かう時から周りの視線を感じていたが、まさか此処まで酷いものだとは思わなかった。
だって、獣人族をペット呼ばわりだ。俺が照れくささからペットとして飼ってやるってセリフとは違い、ガチでペット呼ばわりだ。
「すいませんでした」と女将さんに頭を下げて、部屋の荷物を纏めて半月近く世話になった宿を後にした。
はぁ、今日の寝床どうしよう。
そんな事を考えながら歩く。後ろからネコが着いてくる。
「タロウさん……ごめんなさい、やっぱり私を養うって話は無しでお願いします」
ネコがそんなしおらしい事を言ってくる。
彼女自身、そういう扱いは日常的に受けているのでさほど気にならないが、自分のせいで俺まで同じ扱いをされた事が答えたらしい。
ちょっと考えたら分かりそうなものだと思うが、彼女からすれば浮かれていてそこまで考えが回らなかったらしい。
「まぁ、追い出されたもんはしょうがないよ。別の宿を探すか、どこかで部屋を借りるか、家を探すかしないとな」
ネコの頭をクシャリと撫で付けプッタの街をネコを連れて歩く。
何軒もの宿屋に断られ、俺もネコも心が折れそうになっていた。
俺の頭の中ではブルーなハーツの名曲が流れていた。
「産まれたところや、皮膚や目の色で……」てか、ネコの場合、種族事態が違うわ。
そして見知った商店の前で足が止まった。
アーキンドゥ商店。
俺が贔屓にしている商店だ。店主のアーキンドゥさんは街の商業ギルドでも幹部クラスの偉い人だ。
獣人族への対応がどうかは今までの付き合いの中では話題にも出たことがないので、どういう対応をされるかは分からない。
しかし、何件もの宿屋に断られた事が俺の選択肢を狭めていた。
「よし!」
俺は一人、気合を入れてアーキンドゥ商店の扉を開けた。
「なるほど、なるほど。わかりました。直ぐに格安の物件を手配いたしましょう」
店に入るまでの俺の覚悟はどこへやら、アーキンドゥさんはいつもと変わらない調子でテキパキと話を進めてくれた。
良くも悪くもこの人は、人を見て対応を変えるという事をしない人みたいだ。
ネコを見てしかめっ面をしていた店の従業員を逆に叱り飛ばしていたくらいだ。
「人族でもエルフ族でもドワーフ族でも獣人族でも魔族でも、一歩店内に入られたら全てお客様です。たとえ今回、縁を得ることが出来なかった方でも次回のお客様になる事もあるのですから、全てのお客様に分け隔てなく真摯に対応しなくてはいけません!」
と、ニコニコと笑顔で説教をかましていたアーキンドゥさんが逆に怖かったのは内緒だ。ネコもピンと立てた尻尾を降ろしなさい。
アーキンドゥさんが抱える物件で潰れた食堂だった空き家があった。
値段も一ヶ月金貨五枚の家賃と払えない額ではない。
買い取りの場合は金貨五百枚。これは流石に無理がある。アーキンドゥさんは「タロウさんなら毎月金貨二十枚の二十五回払いで良いですよ」なんて言ってくれたが、利子とか無いんだろうかと尋ねると、「タロウさんの持ち込む素材で結構儲けさせて頂いてますから、これからもご贔屓にして頂くための投資ですね」とニコニコ笑顔で返されたので、アーキンドゥさんの言葉に甘えて貰った。
まさか普通の高校生が家を買うことになるとは日本に居た頃は想像もしなかった。




