開戦前夜6
「少々お待ちを」
と、ミサは出ていった。残されたアリサとミアは何となく手持ちぶさたで、ミアの帰りを待った。
「ミサ、遅いね」
「そうですね」
「ミアは私の考え、いいと思う?」
「そうですね」
「そうですね、ばかりね」
「そうですか?」
「もう、ミアは」
しばらくクスクスと二人で笑っていると、
「入ります」
と、ミサが部屋のなかに入ってきた。アリサを連れて。
「え、わたし!」
「これは!」
二人は目を丸くして、椅子から飛び上がらないばかりに、驚いた。
「驚きましたか? この者はメノア、最近私がメイドとして愛でているものです」
得意そうにミサはメノアを紹介した。メノアはお辞儀をしている頭をあげ、アリサとミアを見た。
「お初にお目にかかります。メノアと申します」
正面から見るとアリサより、やや幼い様子だった。一年前といったところだ。
「メイドは愛でるために雇うものではありませんよ」
「そこじゃないから」
頓珍漢な注意をするミアをたしなめ、アリサはメノアを見た。
『良く似ている』
素直に思った。背の高さ、容貌、雰囲気、まず遠目には分からない。双子と間違われても、おかしくない。
近寄ってみると、髪はウィッグで誤魔化しているようで、よくよく見てみると、アリサの金髪に比べやや茶色がかっていた。
「街で見かけたとき、これだと思い、私のメイドにしました。公式の場に連れていくこともありませんし、今のところ誰も知りません」
「なんでこれだと思ったのかと、なんでわざわざ人目につかなくしているのかと、なんで私と似た服を持っているのかと、なんで変装用のウィッグを持たせているのか‥‥‥」
一気にここまで言って一呼吸とる。そして苦虫を潰したような顔で続けた。
「については、この際聞かないでおくけど。あまりいい気分はしないわね。それにあなたと二人きりになるのは、今後考えるわ」
呆れた顔でアリサは曖昧な照れ笑いをするミサを見た。
「きれいな花は手元に置いておきたいのです。ですが、そのお陰でアリサ様が外に出る手助けができます」
否定はできなかった。これなら余程のことがない限りバレないだろう。
「彼女を影武者にってことね。ミアはどう思う?」
「そっくりですけど、大丈夫でしょうか? 王族としての振る舞いなどは、すぐに真似できるものでもございませんし。いかがいたします?」
首を傾げながら考え込むアリサとミアを見ながら、ミサは笑った。
「すでに教えているのなら、問題はないでしょう? 先程私と邸を一周しましたが、誰も気が付きませんでした」
それを聞いてアリサは嫌そうな顔をする。
「嬉しいけど、複雑な気分ね。どちらとしてもミサと二人きりになるのは、もう控えるわ」
ミサは残念そうだったが、気を取り直し、
「それでもご不安でしょうし、念のため常に私か姉さんと一緒に行動するようにいたしましょう。ならば疑うものもございません」
と提案した。
影武者と言っても誰かに狙われているわけではなく、命に関わることもない。
『それなら大丈夫か』
アリサは思った。




