前哨戦4
胡散臭いと言いたげに、漁師の態度は硬化した。
「騎士様は女で、一人は顔も見せず、期待の学士様は子供‥‥‥はん、なんの冗談や。誰がこないなことしたんで。いたずらもんのアロッオか、それともお調子もんのトリネか」
アリサ達の知らない名前を出して悪態をつく。憤慨して顔は赤く、しきりに頭をかく。もともとかなり癖のある髪は汗に濡れているところをかき混ぜられ、収拾がつかないほど乱れた。
「帰れ帰れ。お前らに話も用はないわ」
「無礼だろう」
漁師の態度の悪さにさすがに我慢しかねたのか、ミサが怒鳴りかえす。今にも剣に手をかけようと右手が構えにはいる。漁師も立ち上がり手元の剣に手を伸ばそうとする。
「ちょっとミサ。やめて」
「嬢ちゃん、それ抜いたら無事では帰れんぜ」
漁師はちらりとフィンとアリサを横目でみて続けた。
「特に嬢ちゃん以外はな」
天幕の外にはいつでも飛び込めるように、何人か待ち構えてる。
渋々ミサは右手を元に戻し、座り直した。
漁師も体勢を戻し座り直す。額一杯にかいた汗を拭い、
「かまわん」
と外に声をかけた。
少し頭が冷えたのか、語気は柔らかくなった。
水差しからコップに水を注ぎ、グッと飲み干す。
「あんたらがワシの立場なら信用できるか? 確かに城から面会状もきてる。やが、あんたらの組み合わせは普通やない。話聞きたい言うても、なんぞ話したら、足元すくわれるかもしれん。信用できるもんはないのか?」
その時、急にフィンが両手と指を激しく動かした。
何事かとアリサとミサは驚く。
漁師はフィンの動きを見ながら、同じように指を動かした。
「こいつは驚いた。どこで覚えた。やっぱりどこぞの回しもんかい」
その問いに関してもフィンは動作で答える。
それを見た漁師は大声をだして笑った。
そのまま何度かやり取りしたあと、アリサとミサの方を向き、頭を下げた。
「わかったわかった。疑って悪かった。学士様の話はほんまやな。なんでも答えよう。もっとちゃんとした面会状やったら、最初から信じたんやけどな。王の判もサインも、紹介人の名前もない。それで来たのがあんたらやと、疑わんのは無理やで」
ほっとした面持ちでフィンは言葉で答えた。
「内密にしてますから、きちんとした手続きはとれませんでした。バドラーさん」
「どうなったの?」
何があったのか理解していないアリサとミサは、不思議そうにフィンに尋ねた。今まさに切り合いが始まりそうだったのが、一転して和やかな雰囲気になったのだから、無理はなかった。




