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第六話  奪還戦

9時を知らせるブザーが鳴った。当然ながらほかの組は戦う事をためらっている様子。床が画面になっていてリアルタイムで分かってしまう。唯一戦っているのは山之内を置いて一人で相手を秒殺してしまった服部ぐらいなものだ。そしてここでは薙払と加倉井がブザーと同時に出た。

「「死ねェよォオオ!!!」」

お二人さん気持ちは一緒のようです。

俺と木村は少し出遅れた。といっても無武器主義者ノーアーマーキラー同志、相手の出方をうかがっている状態が少し続いてる。

あの二人はホントにヒートアップしている。始まって3分もたっていないのに壁に穴が開きはじめた。

加倉井のあのバカみたいに長い刀は居合として使っている。おそらく構え方と居合から流派は『巌流』。となると厄介なのはなんといっても『燕返し』。あの刀は両刃、ゆえに切ったときの折り返しで切れるという事になる。そして軽く鉄筋コンクリートの壁を難なく切るあの切れ味

要注意人物になるだけある。

もちろんそんな長い刀にアイツの足は1メートルあるわけがない。圧倒的に不利。ましてや相手は殺しの『プロ』裏なんか取れるわけねぇ。どうすんだ薙払。

「このままやってたって埒が明かねえ…ちょっとお願いするか。神様によぉ!」

何を言ってる。その時だった俺の頭の中に声が聞こえた。

おじいさんのような優しい声だった。何を言ってるのかは聞き取れなかった。ただ何を伝えたかったのかは分かった『見届けてやってくれ』だとよ。

そしてびっくりしたことに薙払の瞳の色が変わった。

〈…緑?!〉

その次俺は薙払から信じられない言葉が聞こえた

「頼みますよ…恵比寿様!!」

真っ直ぐ薙払は加倉井に入って行った。もちろんプロの加倉井は対応できないわけもなく、居合を抜いた。ただそれを見越してたかのように切られる寸前で薙払は体操選手のように体をひねってとんだ。

月面水爆ムーンサルトプレスか…〉

そして殺人スパイク丸出しの足の裏を加倉井の顔に合わせて一直線に降りてきた。

加倉井は当然ながら刀でガードできるわけもない。

「もらったァ!!!」

ガツッ

金属音が鳴り響いた。空中で薙払が止まっているかと思った。違う、加倉井が鞘で止めているんだ。

お前らは中国雑技団かよ。

悔しそうな顔をしながら鞘をけって薙払は戻ってきた。

「あと少しだったのによぉ…やっぱプロだな。あとあの鞘、金属だな。撲殺もできる。」

「そんなことより恵比寿ってなんだよ!!」

「ああ?!お前鬼と契約してるだろ?!おれも恵比寿様と契約してんだよ!!」

うそだろ…薙払が?あの自信ありげな顔は嘘ではなかったのか。根拠のある自信だったのか。

「そこで話されても困るんだよぉ!!いいからさっさとかかってこいよぉ!!」

「んじゃいってくるわ。あと木村傷つけたら殺すからな。」

言われなくてもただいま避けてるだけですよ

飛蝗グラス跳躍フットワーク!!」

名前のごとく、軽快で速く、それでいながら動きは最小限のフットーワーク。加倉井に近づきづつも、フェイントとしての役割も果たしている。

結構高度だな、素人でもわかるよ。

ただそのフェイントの中でもハッタリと本命が織り交ぜてある。おそらくいくつかある本命の中から攻撃をする。読めるよ攻撃パターンがよ。

「どらぁ!!」

その脚力には感服だよ。5メートルはあろう距離を左足一本で飛ぶとはな。そこからの長距離の回し蹴り。そしてその攻撃は読まれてたぞ、俺と加倉井に。

「すごいな…武器を使わず俺を本気にさせた事。」

真剣で勢いのついた薙払を刀一本で止めた…?それもスパイクのにぴったり合わせてやがる。

薙払の顔色が変わった。俺だって気づいたよ。こいつの本気・・はヤバイってことはよ。

「二人で来な。木村、下がってろ。」

「…わかったわよ」

気迫と重さのある声だよ。俺と薙払二人でお前かよ。まったく…

「「ふざけやがって!!」」

鈴鹿御前さん、今回もおれは本気アウトファイトだから力、貨してくれよ。











俺の『殺人』スタイル。『デトロイト+ヒットマン』スタイル。通常のヒットマンスタイルは右拳の裏を相手に見せて左手を左右に振って相手の照準を合わせない。ただこのスタイルは右拳の表を見せてさらに前傾姿勢にして攻撃特化、防御はないに等しい。そしてデトロイトスタイルはカウンターパンチャーのスタイルでもある。近接の相手でもカウンターを合わせられれば倒せる。

つまりこのスタイルに死角はない。ただそれも拳VS拳の話。相手は刀か。

だったら…バレットだ!!

「「オラァ!!」」

最近息が合うな。さっき見せた5メートルバックキックより長い8メートルのバックキック。

おまえの脚力には驚かされる。肝心の加倉井は前の薙払に気を取られている。その証拠に前の居合の構えだ。後ろががら空きだよ!!

「うしろががら空きとか思ってんのか?バーカ。」

――――――――――なんだ?この嫌な予感。

相手はどう考えても刀を抜けば片方しか相手できない。ましてや後ろにいる俺を見てもいない。

そこからどうやって?鞘でガードするのか?

「防げられなければ―――――」

何をする?分からない。

いったいどんなトリックを使う?ハッタリか?

「―――――消えればいい。」

フッ

「「消えたぁ?!」」

何が起こった?突然前からいなくなった?前にいるのは薙払!

まずっ、ぶつかる。

俺がそう思ったとき、薙払は残った左足で地面をけって回転して俺のパンチを

かすりながらもかわした。おれもアイツの蹴りを頭でかすめながらも必死で下げた。

数本抜けたよ。痛ってぇ…。

「どこ行った?!」

俺と薙払はあたりを見回す。ただどこにもいない。高速で動いているとかそんな類なら足音ぐらい聞こえる。何も聞こえないとなると地面に居ない。

「「上か!!」」

二人そろって上を見た、予想どうりいたさ。ただ予想どうりじゃなかった事が二つあった。

どこから湧いて出てきたかわからんが逆手に持ってる二つの長短の刀

もう一つはヤツの瞳の色。青色だった。

鬼と神様持ちがいても攻撃一つ当たらないわけだ。

「悪いが、こっから先は俺と薙払だけの戦いにさせてくれや。」

「はぁ?!できるわけねえだろ!!もともと二人で来いって言っ」

薙払が俺を手で止めた。なんでだよ、お前アイツとタイマンで勝てる見込みでもあるのかよ!!

クソッたれ!!

「それにな、これは俺の願いじゃねえ毘沙門天・・・・の願いだよ。」

「毘沙門天?!恵比寿と同じ、七福神のか?!」

「千ノ字、俺もお前と共闘してアイツの顔面ぶん殴りてえよ。ただおれの恵比寿が言ってんだよ。

『少し替われ』ってな」

(小僧、下がってろ。あそこは二人に任せておけ。いざとなったらあの教員とかいうおなごが助けるじゃろう。)

どいつもこいつも…!!

「勝手にしろよ!!」

俺が振り返ったとき。俺の後ろから殺気なんてもんじゃ言い表せないものが感じとれた。

〈毘沙門天と恵比寿…!!〉

まずいと直感で感じた。早く逃げねえと…!!

そう思って全速力で走って振り返ったときにはお互い殺気がさっきより強くなっていた。

同じ七福神同士でなんで戦うんだろうな。

「ところで毘沙門よ、なぜその小僧に憑いたのだ?誇り高いお前が人間に憑くなど七福神誰も思ってはおらぬぞ。」

恵比寿薙払は上品にそういった。あごに手をあてて上品さと殺気がとてもよくで出ている。

「ただの気まぐれだ。お前こそ、なんでそんな無知で無能の人間に憑いた?そのほうが疑問だ。」

「お祈りされたからだのう、『誰かを守れる力が欲しい』と。我々神は人間の願いを聞き入れ、可能である限り叶える義務があるからじゃ。」

「だからお前はお人好しなんだ。そんなのだから人間からは崇拝されても神々からは馬鹿にされているだろうが。」

「ほっほっほ。面白いこと言う。その口きけぬようにするかのう。」

「それはこっちも同じだ。老いぼれはさっさと引っ込んでな。」

まったく…迷惑な神様たちの喧嘩だよ

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