Minority Town(9)
「この街はどうだった? 君はこの街で二日間過ごしたわけだけれど」
「静かで、いい街だった。僕はこれまで二つの街を見たけど、そんな風に思えた街はここが初めてだよ。少し怖い思いもしたし、謎も残っちゃったけどね。僕が出会った人はいい人ばかりだった」
「それは良かった。でもこの街に留まりはしないんだね?」
「うん、僕は、やっぱりこの街を出ることにするよ」
「そうか……それがいいだろうね。私のように障がいを抱えていない、君のような若者がこの街に留まることは、やはり良くないことだよ」
「いつかあなたが言ったように、この街は停滞しているかもしれない。でもそれだけじゃない。この街の人々は自分たちで考え、適応しながら、ここに力強く息づいているんだ。それができればさ、そこがどんな場所なのかなんか関係ない、僕はそう思ったよ。この街の人たちは逃げたかもしれないけど、弱くなんてないんだ」
「君は面白い少年だね」
「そんなことない。ただの卑怯者、臆病者……普通の子どもだよ」
「……」
「そろそろ電車が出る時間だ。最後にひとつだけ質問していい?」
「何だい?」
「もし、もしもだよ。この街の地下に、楽園みたいなもうひとつの街があって、そこに見たこともないような、奇妙な姿の人間――元の世界では化け物だとか怪物だとか言われるような人間たちが住んでいたとする。そしたらあなたはどうします?」
「もちろん」
その名前も知らない老人は白濁した両の瞳をこちらに向け、口元に大きなしわを作りながら、
「友達になってさ、人と違うということの不自由さと愉快さについて語りながら酒を飲むだろうね」
と言って目の前のグラスを傾け、ビールの残りを喉へと流し込んだ。
「僕はもう行くよ、あなたと話せて楽しかった。ありがとう」
「さようなら、少年」
「さようなら、おじいさん」




