第2話 白い蛇竜に乗って〜♪
《イリアス魔法学園 竜扉》
ここは生徒が飼っている竜種が住む竜籠。
セレンは大きな大きなリュックを背負って立ち尽くし―――
「エヘヘ……放課後のスイーツ巡りが。世界を回っての素材探しになっちゃった……」
呆然と不気味な笑みを浮かべていた。
「今回の材料集めは、エスポワル山脈の頂上に住む。飛龍 『スパイラルドラゴン』の卵です。頑張って来て下さいね。セレンさん」
「はい?……スパイラルドラゴン?! そんなの無理です! 無理!無理!無理〜! スパイラルドラゴンって、飛竜種の中でも獰猛な飛竜なんですよ! その卵を持ち帰るなんて無理です! キュルエールお姉ちゃん」
実はキュルエールはセレンの歳の離れた従姉妹同士である。
昔から仲睦まじく。本当の姉妹の様にお互いを大切にしている。
「……お黙りなさい。セレン」
「ひぃ?! 怖い顔!!」
「貴女とは従姉妹同士だと思い優遇し過ぎていた様です。なので、今度からは一般女生徒同様に接していきます」
「そ、そんな! 私をもっと甘やかして下さい〜! 禁書庫とかにもあんなに入らしてくれたじゃないですか。もっと私を可愛いがって下さい! キュルエールお姉ちゃん」
セレンはキュルエール先生の抱き付くと喚き始める。いつもの泣き落とし攻撃だが、キュルエールはそれをされても顔色1つ変えようとしない。
「……色々とお黙りなさい。それと禁書庫の事は秘密といつも言っているでしょう」
「むぎゅ?!……(口に魔法の糸?!しゃ、喋れない〜!)」
「それとスパイラルドラゴンの卵を回収し無事に帰ってこれるまでは、ティファレント家の屋敷には入れさせませんからね」
(む〜!む〜!!)
イリアス魔法学園は教師に対して、魔法攻撃及び物理的な攻撃を生徒が働いた場合は、生徒は謹慎になる。
その為、いくら世界最強の魔女といえども従姉妹であり担任教師には手も足も出せない。
「……そうですか。うん!うん!ですか。セレンさんにしては良い心がけですね」
「ばはぁ?! ちぎゃうよ! イヤ、イヤやって言ったの。キュルエールお姉ちゃ……ばしゃあはあぁ!!」
セレンがあまりに騒ぐ為、キュルエールはセレンの頭部を片手で持ち上げ。万力の力をセレンの頭部に込めた。
「いいから行ってきなさい。これも良い機会です。世界の美しくも汚い所をイヤという程学んで来なさい」
「いーや、いやいや……はしゃあああ!!」
「そうですか。そんなにやる気があるのでしたら安心ですね。アスク。セレンさんをよろしくお願いします」
「シュル〜ル!」
キュルエールが声をかけたラキルラビット程に小型な白蛇は、セレンの使い魔である白蛇竜のアスクである。
「あぐぅ…放課後スイーツの夢があぁ!! 行きたくないですうぅ! キュルエールお姉ちゃん!」
「その材料を集めて自分で作りなさいな。……迂闊でした。まさか。貴女が禁書庫の禁忌の魔法を全て暗記して使える様になってしまうなんて。そして、一ヶ月程にあの組織に入るとは」
じゃれ合う中で、2人はお互いの素で会話する様になってきた。ここがイリアス魔法学園という誰が見ているかも分からない場所で。
「エヘヘ!! 私。天才だったみたいなので、まぁ、それだけじゃなくてちゃんと訓練も少ししたら強くなれましたよ。エヘヘ」
「(ブチッ!) いいからさっさと行きなさい! この問題児生徒!!」
「あわわ!! 止めて。止めて下さい! キュルエールお姉ちゃん!! 頭が割れちゃいます!!」
「かち割ってあげます!」
「いや〜! 体罰教師〜!」
◇
エスポワル山脈。 オリフィス世界の北部に位置する場所で、多種多様な飛竜の住みかとして有名である。
気候は寒暖差が激しく。冬季になると飛種の雌は産卵期を迎え。獰猛になる為、冬季でのエスポワル山脈の立ち入りは、リアナ魔法教会から特別な許可が下りなければ入山も果たす事も叶わない場所である。
〖竜星の魔女 《セレン・ティファレント》殿。スパイラルドラゴンの討伐を依頼する。リアナ魔法教会より〗
《エスポワル山脈 上空》
『シュルル〜!』
「えぐぅ……寒いです。凍えちゃいます。狂暴そうな飛竜さん達が、わんさかいます」
《《エスポワル山脈程の大きさ》》の白蛇竜のアスクの背中に乗り。セレンは目的地であるエスポワル山脈へとやって来た。
【グルルル!!】【キャシャアア!!】【オオォォオ!!】
「………あの危険な場所に下りて、エスポワル山脈の最強種のスパイラルドラゴンの卵を持ち帰れだなんて、鬼畜の所業ですよ。あの魔法学園。私がいったい何をしたっていうんですか?」
ふと。セレンは最近の自身の行動をおもいだしていた。
(アハハ!! 私、強くなれましたし。少し授業をサボっても良いですよね。アハハ!)
(スイーツスイーツ! ランラン〜!)
(爆発しても修復魔法で物は直せますから〜! エヘヘ!!)
「………あれ? 最近の私って完全に調子に乗ってましたか? だからってこんな罰を。くぅぅ。これも全て、キュルエールお姉ちゃんの策力のせいです。一生怨……おや? この気配は? 珍しいですね。こんな場所に人ですか」
【ルオオオ!!】
「く、来るな! 来るなよ! もう!」
セレンが地上の様子を見ると。そこには、スパイラルドラゴンに追いかけられているフードを被った旅人だった。
「助けないと。後、数秒で食べられてしまいますね。アスク……転移します」
『シュ〜!』
旅人は知性が高いスパイラルドラゴンに岩合いの逃げ場のない場所へと追い詰められていた。
【ルオアアァ!!】
「つっ! イ、イヤアアァ!! 食べられ……」
「『火魔神』」
【ルオォ……ルオオオオ!!】
旅人に襲いかかろうとしていたスパイラルドラゴンの身体は、一瞬で全身を赤き火に包まれて絶命した。
「……へ?」
「いや〜! 間一髪ってやつでしたね。お怪我はありませんか? 旅人さん」
「え? あ、う、うん……そんな。スパイラルドラゴンを一瞬で倒すなんて……」
「……簡単ですよ。燃やせば良いんですからね。エヘヘ」
「燃やす?……え?」
この時のセレン・ティファレントは知らなかった。自身の力の大きさと未熟さに。
そして、彼女は知っていく事になる。これからの沢山の出会いと別れを経験し。自身の中にある力の正しい使い方を。




