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第12話 労働という名の再生

「・・彼らを助けるのはいいですが、元・犯罪組織の荒くれ者たちですよ? 街の人は怖がって仕事なんて出しません!」


リナが不安げに、事務所の前に座り込む大勢の男たちを見やった。首筋に蛇の刺青、手にはタコ。長年、地下で過酷な労働を強いられてきた『黒い蛇』の残党たちだ。組織が差し押さえられ、行き場を失った彼らは、ただ飢えた狼のような目で和雄を睨んでいた。


和雄は、事務机の上で一通の『定款ていかん』を書き上げた。


「リナさん。彼らに必要なのは、憐れみではありません。『合法的で誇りの持てる仕事』と、『社会復帰のための更生プログラム』です」


和雄は事務所の表に出ると、男たちに一束の書類を掲げた。


「諸君! 今日からお前たちは『黒い蛇』ではない。新設する『王立・広域防犯運送ギルド:ホワイト・サーペント』の第一期従業員だ!」


男たちが顔を見合わせ、鼻で笑った。「ふん、俺たちみたいな人殺しもどきに、何の仕事があるってんだ、眼鏡」


「ありますよ。あなた方は『地下の裏路地』を知り尽くし、『魔導兵器』の扱いにも慣れている。……つまり、『最高に質の高い警備員』になれる。さらに、あなた方の持つ物流ネットワークを、今度は『適正な運賃』で運用する。……これは、そのための『雇用契約書』だ」


和雄は一人一人に契約書を配り歩いた。そこには、彼らが今まで見たこともない、詳細な条項が並んでいた。


「見てください。『残業代は一分単位で支給』。『労災完備』。そして何より、『前科を不問とし、勤続年数に応じた昇給を保証』する。……どうですか? 闇でコソコソ盗みを働くより、胸を張って『法律の守護者』として給料をもらう方が、よほどマシな人生だと思いませんか?」


「……本当に、俺たちを雇うのか? 裏切るかもしれねえぞ」

一人の巨漢が、震える手で紙を受け取った。和雄は、その男の目を真っ直ぐに見つめ、営業用の名刺を差し出した。


「裏切ったら、私が『損害賠償請求』で地獄の果てまで追い詰めます。……ですが、真面目に働くなら、私が『全力の団体交渉』で、あなた方の権利を王家からでも勝ち取ってみせる。……どちらが賢い選択か、分かりますね?」


その日、犯罪組織の巣窟だった廃ビルに、初めて「就業チャイム」が鳴り響いた。


かつての悪党たちが、慣れない手つきで制服の襟を正し、和雄の用意した「ビジネスマナー研修」に頭を抱えながらも、どこか誇らしげな顔を見せ始める。


それは、剣による制圧ではなく、「労働という名の再生」によって悪を善に変える、和雄にしかできない魔法だった。

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