ラブコメ厨の三者面談
――随分と長い面談だ。
さっきから同じ姿勢で座りっぱなしで、腰が少し痛い。まだ終わらないのかこれ?
「――という感じですね。本当に、私も父も大雑把なのに、どうしてこんなマメな子に育ったのか不思議なんですよ」
「反面教師って奴だろ」
「否定出来ないのが悲しいわねぇ」
話すのは主に親と担任だ。基本暇な状態なので、さっきから欠伸が出そうになるのを堪えるレベルには退屈になってきた。
「なるほど、お家での悠人くんの様子も分かりました。⋯⋯脇阪、お前は家でもそんな感じなんだな」
「そんな感じってなんですか、二面性がないのは良いことでしょ」
今は担任が、家ではどのような感じなのかを母に確認していた所だ。
「まぁそうかもな。⋯⋯さて、お話しなければならない事は話し終わりました。お二人からお聞きしたい事がなければ、これで終わりにしますが」
(⋯⋯やっと終わりか)
少し安堵の声が漏れる。まさかここまで話が長引くとは思っていなかったし、こんなに真面目な話になるとも思っていなかったのだ。無意識に背筋が伸びていたようで、それが疲れに拍車をかけていた。
「俺からは特に何も⋯⋯」
「それでは、一つだけよろしいでしょうか?」
早く締めようと、質問などないと返そうとした所で、母の言葉が俺の返答を遮る。まだ続くのかこの面談。もう休みたいんだが。
「学校内での悠人の、交友関係はどのような感じですか?」
母が担任にした質問は、俺からすれば少しばかり面倒に感じる内容だった。
「⋯⋯母さん?そんなんどうでも良いだろ」
「良くないわよ。だって悠人ったら、友達を家に連れて来たりしないじゃない。親としては気になるのよ」
それは⋯⋯そうだ。中学も含めて、家に友人を呼んだ回数なんて数える程しかない。だが、それは仕方ない事なんだよ。
「そうですねぇ⋯⋯クラスでの様子を見ると、誰隔てなく話していますね。誰とでも仲が良い、と言えるでしょうか」
担任は出来る限りフォローしてくれているのだろう。確かに誰とでも話すからな。友達一杯じゃん俺。⋯⋯何故か言ってて虚しくなるなこれ。
「そうですか、悪く言えば気心知れた仲の良い友達は少ない、と言えますよね」
⋯⋯確かに母の言う通りなんだが、そんなきっぱりと言われると俺だって傷つくかもしれないんだが?
「いえ、仲が良さそうに見える子もいますよ。同性なら、上原くんとは良く話していますね」
(⋯⋯本当に良く周りを見てるんだな、この先生)
生徒の交友関係を知っている事に驚きつつも、上原との絡みを思い出してみる。確かに良く話す方だ。まぁ、向こうが友達と言ってきたし、席も近いからな。それくらいは普通だろう。
「同性、とは?⋯⋯先生、じゃあ異性とはどうなんですか?」
⋯⋯この母親、もしかしてこれが聞きたかっただけじゃないか?
「フッ、何を聞いているんですかお母様。そんなの、この後のお母様の予定からも、分かるでしょう?」
この話題になった途端、真面目な顔をしていた担任の表情が崩れる。やっぱ教師失格だろこの人。
「ウフフフ!そうですよねぇ!」
思った通りの回答だったのだろう、母は随分とご満悦のようだ。
「それで?息子はぶっちゃけ脈ありですか?」
「おいちょっと黙れ」
いくら機嫌が良くても、母親でも限度があるだろうが!
「私は教師なのであまり強い言葉は言えませんが、そんなの聞かなくても、分かっているんじゃないですか?」
「あらあら、これは想像が膨らむわねぇ」
「妄想の間違いだろ」
息子の恋愛模様を知りたがる母と、こういう話が好物の担任、息がぴったりなようで頭が痛くなる。
「あ、そういえば仲が良いというと、最近は森下さんとも仲が良いですね」
⋯⋯先生、今それ言う必要あります??
「? 森下さんは女の子なの?」
「そうだけど、なんだよ」
森下には成り行きで勉強を教えただけだ。他意はないぞ。
「ふーーん、そうなのね⋯⋯」
母が何とも微妙な表情をしている。⋯⋯絶対いらん事考えてるだろ。
「⋯⋯⋯悠人、二股は良くないわよ?」
「しとらんわ!真面目な話をしろよ馬鹿!!」
先程までは真面目な雰囲気に嫌気がさしていた筈なのに、今ではさっきまでの雰囲気が早く返ってきて欲しいと、切に願うのだった。




