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目を覚ますたび、世界が過去へ巻き戻っていた。14日目、僕は「地球誕生」の秘密を知った。  作者: 不可思議ラボ


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1/4

第1話 目を覚ますと侍が歩いていた

目を覚ますと

目の前で侍が

人を斬っていた。

血が地面に飛び散った。

悲鳴が上がる。

僕は反射的に

後ずさった。

「おい、そこの男!」

刀を握った侍が

こちらを向いた。

刃先から

赤いものが滴っている。

「何を見ておる」

僕は答えられなかった。

ついさっきまで

僕は別の世界に

いたはずだった。

一つずつ次元を越え

七つ目の世界で

「現実」の正体を知った。

あれですべてが

終わったと思っていた。

なのに

また目覚めてしまった。

しかも今度は

どう見ても江戸時代だった。

木造の家々。

軒先に並ぶ提灯。

着物姿の人々。

遠くには

大きな城が見える。

映画の撮影かと思った。

だが目の前の男は

動かない。

血の臭いも本物だった。

「聞こえぬのか!」

侍が近づいてくる。

僕は逃げようとした。

その瞬間

背後から誰かに

腕をつかまれた。

「死にたくなければ

こちらへ」

振り向くと

笠を深くかぶった

老人がいた。

老人は僕を

細い路地へ引きずり込んだ。

角を曲がった直後

背後で怒鳴り声が響く。

「逃がすな!」

僕たちは

狭い路地を走った。

足元は土だった。

電柱も自動車もない。

空には飛行機雲すら

見えなかった。

老人は

小さな長屋の戸を開け

僕を中へ押し込んだ。

「静かに」

外を数人の侍が

走り抜けていく。

足音が消えるまで

僕たちは息を潜めた。

「助けてくれて

ありがとうございます」

老人は返事をしなかった。

代わりに僕の服を

じっと見つめていた。

黒い上着。

ズボン。

履き慣れた靴。

この時代では

異様な格好だ。

「おぬし

どこから来た」

「それが

僕にも分からなくて」

老人はゆっくりと

笠を外した。

白髪の下には

深いしわが刻まれていた。

「では

ひとつだけ聞こう」

老人の声が低くなった。

「今は何年だと思っておる」

僕は少し迷った。

「二〇二六年……です」

老人は目を閉じた。

驚く様子はなかった。

まるで

その答えを

待っていたようだった。

「やはりな」

「やはり?」

「外へ出るな。

今のおぬしは

ここに存在してはならぬ」

背筋が冷たくなった。

「どういう意味ですか」

老人は壁に掛けられた

暦を指さした。

そこには

見慣れない文字が

並んでいた。

天保十四年。

僕は歴史の授業を

思い出した。

天保年間なら

十九世紀のはずだ。

ポケットから

スマートフォンを取り出した。

画面は真っ暗だった。

電源ボタンを押しても

反応しない。

「これは……」

老人が身を乗り出した。

「その黒い板を

どこで手に入れた」

「僕の持ち物です」

「そうか」

老人の顔色が変わった。

「ならば

おぬしも見たのだな」

「何を?」

老人は答えず

床板を一枚外した。

中から古い木箱を

取り出す。

箱には鍵が

掛かっていなかった。

老人が蓋を開ける。

僕は言葉を失った。

中に入っていたのは

スマートフォンだった。

僕のものとは違う。

画面にひびが入り

背面には見知らぬ

メーカー名が刻まれている。

だがどう見ても

現代の電子機器だ。

「なぜ

こんなものが」

老人は首を横に振った。

「三十年前

山で拾った」

三十年前。

それなら江戸時代の

さらに昔だ。

「持ち主は?」

「死んでおった」

老人は淡々と言った。

「奇妙な衣をまとった

若い男だった。

おぬしと同じような」

僕は箱の中を

のぞき込んだ。

スマートフォンの下には

一枚の紙が

敷かれていた。

黄ばんだ紙に

細かな文字が

書かれている。

老人がそれを差し出した。

「その男が

握っておったものだ」

僕は紙を広げた。

そこには日本語で

たった一文だけ

記されていた。

『眠ってはいけない』

心臓が大きく跳ねた。

眠るたびに

世界が変わる。

それは僕が経験してきた

現象そのものだった。

「この男は

ほかに何か

言っていましたか」

老人はしばらく

黙っていた。

「死ぬ直前に

ひとつだけ」

「何ですか」

「次の朝が来れば

ここは消える、と」

僕は窓の外を見た。

夕日が町を

赤く染めている。

あと数時間で

夜になる。

そして眠れば

僕はまた別の世界へ

移動するのかもしれない。

だが今回は

何かが違った。

これまで僕は

次元が変わる世界を

見てきた。

今度は

時間そのものが

逆向きに流れている

ように見える。

いや

本当に過去なのだろうか。

天保十四年の江戸に

スマートフォンが存在する。

三十年前にも

僕と同じような人物が

現れていた。

ここは歴史の教科書に

載っている江戸ではない。

僕は紙を裏返した。

裏面にも文字があった。

『第一地点 江戸』

その下には

数字が並んでいる。

14

13

12

11

数字は途中まで続き

最後にこう書かれていた。

『到達地点 地球誕生』

僕は息をのんだ。

これは偶然ではない。

誰かが

これから僕が訪れる世界を

知っている。

そのとき

箱の中のスマートフォンが

突然震えた。

電源が入るはずのない

端末に

青白い光が灯る。

画面に数字が浮かんだ。

『残り13回』

そして次の瞬間

表示が切り替わった。

『今回の世界には

あなた以外にも

移動者がいます』

僕は老人を見た。

老人も僕を

見つめていた。

「どうやら

始まったようじゃな」

「何が?」

老人は窓の外を指さした。

町の向こうに見える

江戸城。

その上空に

巨大な青い輪が

浮かんでいた。

あれは雲ではない。

光でもない。

僕はあの形を

知っている。

次元の境界だ。

だが輪の中心から

現れたものを見た瞬間

僕は自分の目を疑った。

そこには

もう一人の僕が

立っていた。

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