1.初勝利
属性とは、強さを左右する物。
そう思われてきた。
光と闇は強く。
火、水、風、地は汎用性があり、使い勝手がいい。
残りの雷属性は、弱くて使えないし、いくらでも防げる。
そう認識されており、ハズレ属性と言われていた。
「おいおい。ハズレ属性しか使えないやつとか終わってねぇか?」
言われ慣れているその言葉を、学院に入ってまで言われるんだ、という絶望に打ちひしがれていた俺。魔法学院へ入ったら有用な使い方が学べると思ったんだが。そう甘くはなかったらしい。
属性判別の儀式のあった五歳から、ずっと落ちこぼれと言われ続けて十年。魔法学院へは筆記試験で入ったようなものだ。実技試験の方はあまり芳しくなかった。
でも、親が「自分なりに頑張って来い」って言って送り届けてくれたのだ。だから、俺は、宮廷魔法使いになる夢を諦めてはいない。
皆には無理だと言われた。だって雷属性しか使えないんだからって。
そう言われ続けたけど、何かいい方法があるんじゃないかなぁと模索し続けている。最初の授業が模擬戦だったんだが、呼ばれた順に闘技場へ上がって戦うんだとか。
今は、それを待っているところ。名前が呼ばれるのを待っているんだ。体はずっと鍛えていたからゴツイんだけど、魔法だけが弱いんだよなぁ。
今闘技場で戦っている二人は、火属性と風属性で競っている。炎をかまいたちで切り裂いたり、風の勢いに炎をのせて逆にカウンターしたり。
内容的に見栄えするような戦いだ。今回は火属性の方が勝ったようだ。
「次はー……ゴウキ。と、エルビン・マッカーサ」
俺の名前が呼ばれたから闘技場へと歩を進める。対する生徒は、学年で主席の男だった。先生も意地が悪いなぁ。こうやって俺を叩きのめしてやめさせるつもりかなぁ。
「はーい」
だるそうに声を出す。
「任せてください先生! コイツはコテンパンにしてみせますよ!」
肩を回して出て来たのは金髪をべったりとポマードでつけたような髪の少しふくよかな男。なぜ、俺がこんなブヨブヨのやつにやられるのかがわからない。
魔法とは、体格を関係なくするものだというのは習った。たしかにそうだと思う。どれだけヒョロくても、魔法さえ使えることができれば戦うことができる。
魔力さえ多ければ戦況を逆転する力があるとされている。現に、大魔法使いである宮廷魔術師のゴイス・ユーケスは細くて小柄だ。だが、何千人の軍勢を相手に戦えるとされている。
俺は、逆に魔法が使えないならと肉体を鍛えて来たのだ。
「それでは、模擬戦……始め!」
一発目に岩の礫が飛んできた。俺には、この手の魔法を脚力で逃げるしかないのだ。だが、闘技場というのは、ちょっと高台になった円盤だ。
逃げるところなんてない。ようするに、自分で作るしかないのだ。
「アースウォール。迷路!」
相手の生徒は闘技場を迷路に変えてしまった。これで少し休めるなぁと思って休憩していたのだが、考えが甘かったらしい。
カッと光った。
その瞬間、咄嗟に頭を低くして守った。
爆発したような音がしたがと思ったら、きれいさっぱり頭より上の迷路が無と化していた。
これは、勝てるのかという疑問が沸き。右往左往してしまった。一体何の魔法を放たれたのかもわからない。これは致命的だろう。
魔法の筆記試験はほぼ満点だったはずなのに。実技になるとなんで、こうもダメなんだろう。そんなことを思いながら、魔法をイメージする。
「ライトニング」
──バチッ
小さな雷撃の音が響き渡った。その小さな音の攻撃が相手の防御を削れるわけもなく。相手は、地面へと地属性を張り巡らせていた。
これで、地面へと雷を流しているということだ。
よくある対雷戦闘への対策通りにされている。悪いわけではない。ただ、本来の戦闘はそんなに甘いわけではないということだ。
「そんなものが僕に届くと思っているんですか?」
それを聞いていた、他の生徒もクスクスと笑っている。
俺は大まじめだわ。クソが。
そんな悪態をつきながら、どうしたもんかと少し考えてみる。
「横から攻めてみようかな?」
真っ正面から挑むから悪いんだというスタンスの転換だ。壁を物理的に破壊しながら。
身体強化魔法は無属性だから誰でも扱うことができる。無属性の魔法も強力な物が多い。だが、誰でも使えるだけに、誰もメインに使っていない。
俺の体から黄色の煙が上がる。これは、身体強化魔法がしっかりと発動している証拠だ。
「どこから攻めようと無理ですよ!」
相手はこっちが雷属性ということで油断して、煽ってきている。学院長とかが見ていたらどう思うんだろうかと変なことを考えながら、壁を壊すという作業を進める。
だが、実際に見ているとかそんなことはなく。
「ライトニング」
一瞬の隙をついて倒そうとしてみる。
だが、またもや相手の放った水の魔法に阻まれる。
真水は難しいが習得できるんだとか。水魔法も土魔法と同じくらいの水準にいるんだ。
「ははははっ。無駄ですよ。雷は、落ちこぼれなんですよ?」
ちょっとイラッとしたぞぉ。
「親も雷しか使えないのか? 属性は遺伝するというからなぁ。つかえない一族なんだな?」
頭の中でプツンと何かが切れた。
「帯電」
体へ雷を送る。
そして、駆ける。
目の前に敵。
反射的に目の前にあった顔面をぶん殴った。
──バヂッ
電撃の直撃した音が響き渡り、一瞬痙攣したその生徒は動かなくなった。
「えっ? 勝った?」
俺は、人生初の勝利を経験した。




