エルフの少女
シーザーとスティナは遅めの昼食をとっていた。
ファッティが作ったレトルトシチューだ。
シーナとクスナはコーヒーを飲みながら、同じ食卓についていた。
「何から何まですみません」
と、スティナ。
寒さに震えていたところを保護され、ペットも見つけてもらい、食事までご馳走になってる。
「いえいえ。それでどういった経緯でこんなところまで?」
とシーナ。
「私はエルフの森にあるゲートの管理人で、飼ってるペットがゲートの中に逃げちゃって。それでここまで来てしまいました」
スティナの説明に、三人ともぽかんとしてしまう。
「エルフの森?」
クスナは首を傾げる。
エルフの森という地名にまったく心当たりがない。
「スティナはエルフなの?」
と、シーナ。
「えぇ」
シーナもクスナも、じーっとスティナを見た。
かわいらしい容姿ではある。
エルフというものが存在するらしいというのは噂では聞いたことがあったが、なんとなく目の前の少女がエルフだということが信じられない気持ちだった。
そうは思いつつも、シーナはスティナの髪が不思議な色合いなことに気づく。
「エルフってのはきれいな髪してるのね」
黒い髪だが赤紫の不思議な光沢がある。
「ありがとう。シーナとシーザーの栗色の髪も素敵。それにクスナの深緑の髪も素敵、きっと日差しの強い場所でならエメラルドに輝くわ」
「誉め上手だな。髪なんて初めて褒められ……た」
そこでクスナは、シーザーがじっと自分を見ているのに気づいた。
おそらく嫉妬だろう。
スティナが褒めた男は全員、敵! といった感情なのだろう。
なので、クスナは隣に座るシーナの肩に手を乗せ自分のほうに近づける。まるでシーナ以外の女には興味がない、と言わんばかりに。
そんなクスナの意図には気づかず、シーナは突然の行為に赤くなる。
嬉しくはあったのだがさっと身を離してしまった。
「エルフの森ってどんなところ?」
ごまかすためか、そんなことを聞いた。
「暖かくて、動物がいっぱいで…… いい所!」
それを聞いて、シーザーはくすくす笑った。
スティナは、エルフの森を説明ようとして言葉が出ないから、いい所でまとめてしまったようだ。
顔だけじゃなく、中身も行動も全部かわいい! そう思った。
その様子を見て、こいつらお似合いだ、とクスナは思った。