ゲート
「……違うよ」
シーザーは、スティナがあまりにも強く言い切るから、否定するのが悪い気がした。
「僕、そんなとこ行ったことも聞いたこともないよ」
「そう? じゃあ、他人の空似かな」
スティナはじいっとシーザーの顔を見ていたが、やがてうとうとし始め、すうすうと寝息を立てていた。
きっと長い旅をしてきたんだろう。
なんか食事でも作るか。
「ファッティ、頼むな」
シーザーが言うと、ファッティは音を立てず静かに近づいてきた。
「体があったまるシチュー用意して」
シーザーの言葉を聞いて、ファッティは台所へ向かう。
作るといっても、レトルトを温めるだけなのだが。
スティナはすうすう眠ってる。
今は昼時で、ほんの十数分もすれば、スティナは目覚めるだろう。
その顔を、かわいいなと思いつつ、シーザーは眺めてた。
不思議な女の子だ。
彼女の口から出てきたワードは、異国、トカゲ、エルフの森、竜の大地、ゲート……
どれも聞きなれないものばかり。
いや待てよ、とシーザーは思った。
ゲート……?
ゲート?
それって、異世界間ゲートのことか?
シーザーは立ち上がった。
「ファッティ、ちょっと出掛けてくる」
* * *
ここは魔法使いの国と呼ばれている。
魔法使いの国という名前だが、それは国名というより地名のようなものだった。
雪の多い地域。
夏は短く、ほぼ一年中大地は雪に覆われている。
シームァは、窓から外を見るとはなしに見ていた。
シームァは大人になりかけている少女。
雪の積もる中、いやに軽装な女の子が目についた。
――誰かしら?
シームァが考えあぐねている。
――うちの敷地なのに?
積もった雪で他人の敷地とわからず入り込んでしまったようだ。
だが?
外から続くあるはずの少女の足跡がない。
――もしや、異世界間ゲートが繋がった?
少女を見ながら、シームァは色々考え込む。
すると、シーザーが声を掛けていた。
二人は何か話した後、その場を立ち去った。