ボーイミーツガール
「いないなー、どこに行ったのかなー?」
雪の中、その人物はかなり長い間うろうろしていた。
何かを探してるようだが、なかなか見つからないらしい。
遠目から注目されているのには気づかず、一心不乱に何かを探している。
そんな人物にやれやれと思いながら、声をかけたのはシーザーだった。
「何してるの?」
シーザーはその人物を見て驚いた。
近くで、改めて見るとかなりの軽装だ。普段着のような恰好で、防寒具は何一つ身に着けていない。
そんなことよりも、この女の子……
――めちゃくちゃかわいい!
年はシーザーと同じくらい。小さな顔。彫りの深い顔つきで、鼻筋がすーっと通り、目はぱっちり。黒かと思えば不思議な赤紫の光沢を放つ髪。
シーザーは女の子のかわいさにしばし釘付けになり、思わず、
「……きみ、かわいいね」
それを聞いて、少女は笑顔になった。
「ありがとう。こんな異国の地でナンパされるなんて思わなかった」
少女はおどけてみた。
「そんなんじゃないよ」
シーザーは慌てて否定する。
「そんなことより、寒いでしょ。これ着て」
シーザーは自分が着ていた防寒着を脱いで少女に着せた。
「他人の服なんて嫌かもしれないけど、そんな恰好じゃ風邪引くよ」
「ありがとう。これ、暖かいね」
言いながら、少女は自分の手にはあっと息を吹きかけた。
体よりも、手の方が冷えているのだろう。
シーザーは自分の手袋も少女に貸した。
「僕の家、近くなんだ。体、冷えちゃってるみたいだし、少しあったまって行けばいいよ」
少し強引かな、とシーザーは思った。
だが、この女の子、放っておけばこのまま凍死してもおかしくない。
今はまだ昼だからいいが、夜になればもっと冷える。
「ありがとう。でも、私、探しモノしてるから」
と少女は断る。
そんな少女をシーザーはやはり強引に誘った。
「そんなの後でいいじゃん。まずはあったまろう」
「……うん」
少女はとりあえず頷いた。
探しモノが気になるようだが、相当、体が冷えているようだ。
「私、スティナ・レイ・アルフ。あなたは?」
「僕、シーザー・レイ・ラング」
「私たち、レイ同士だね!」
お互い名乗りあって、同じ名前なことにシーザーは照れた。
「まあ、レイなんて名前はありふれてるよ」
そんな強がり(?)をシーザーは言うのだった。