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眠くなる方法  作者: 紫陽 圭
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13/18

帰還さえも

 **********


 ふわぁ~ぁ。


 欠伸と共にゆっくりと目を開ける。

 目の前には見慣れない天井……なんてのは異世界転移のお約束表現だけど、実際に私は目の前の天井に見慣れてはいない。 初めて見るわけでもないけれど。


「うわぁ……ホントに第2神殿だよ。」


 上体を起こしながら周りを見て、思わず呟く。

異世界召喚だの救世主だのは夢でした……ってオチを、往生際悪くも期待してたんだけどねぇ。


「おはようございます、救世主様。」

「昨日はありがとうございました。」


 横から聞こえる声のぬしを確認すると、そこに居たのは予想通りの第2神殿長。 そして、彼の周りには当然ながら第2神殿の皆様。


「おはようございます。 ……で、『ありがとうございました』って?」


 確かに、世界を往復しての救世(?)を承諾したのは昨日だし、それを感謝されるのは判る。 けれど、その感謝は昨日聞いているし、ニュアンス的に別件のように聞こえる。

もしかして、私、知らない間に何かやらかした? あるいは、帰還から再召喚までの間に彼らが私に何かやった? 思いついたパターンに不安と警戒心が生まれる。


「警戒なさるようなことは何もございません。 救世主様の帰還のための眠りにも、周りを睡眠に導く力が発揮されることが確認できたのです。」




 応接間っぽい部屋に場所を移し、目覚めの1杯にと淹れてくれたハーブティーを飲みながら説明を聞く。


 救世主様の帰還に必要なのは本人が眠ることのみ。

ということで、第2神殿長たちは、警護を兼ねて見送りに来ていた。 というのは嘘ではないが実際は建前がほとんどだろう。 検証のための観察と───それだけでも私は『どんだけ~』と言いたいのに───それ以上に興味というか好奇心というか探究心というかが勝っていたのは間違いないはず。 帰還を惜しむ言葉とは裏腹に目がキラキラしてたからね。

で、その際に立ち会った者や周辺が、私の眠りに引き込まれるようにして深い眠りを得ることができたらしい。 主神殿で眠気に負けた時とほぼ同じことが、帰還の眠りでも起きたということだ。 さらには、私の帰還が完了するまで神力の影響は広がり続けた……つまり、私がこちらに居る限りは状況問わずに神力は有効という可能性まで判明した。


「威力の素晴らしさに感嘆するばかりです。」


 うっとりと語る神殿長と、「ありがとうございました」と口々に言いつつ頭を下げる人々。

 眠るだけで崇拝に近い感謝を捧げられるなんて居たたまれない……と一般的な異世界転移ヒロインは思うんだろう。 私だって、そう感じないわけではない。 けれど同時に、彼らの都合による召喚で、拒否権が無いも同然の拘束時間で、私にとって一番幸せなこと(眠り)を利用されてる、という事実を忘れることも出来ないので恐縮はしない。 我ながら可愛くないとは思う、けれど、眠りに関しては譲れないの~!

ついでに言うと、召喚されると判ってる限り、さすがに初回のように無防備な(だらしない)格好で眠るわけにはいかなくなったうえに、どうやったって寝起きの顔を他人(神殿関係者)に見られることは諦めるしかないわけで……永眠しそうになってたところを叩き起こされた乙女心は複雑なのよ。




 ───そんなふうに始まった再びの異世界。

第3神殿への行程の説明その他を話してるうちに時間は過ぎて……。


 ふわぁ~ぁ。


 ふと、欠伸が出る。

 普段は仕事が有るからそうでもないんだけど、こっちでは体が休日モードになるのか、一定の感覚で眠気に襲われてる気がする。 『休日モードではなく救世主モードだ』とか『神力発動のためのパッシブスキルだ』とかなんて厨二病的なツッコミは知らない、聞こえない、キニシナイ!!


「それでは、第三神殿に出発しましょう。」


 という神殿長の言葉で馬車に乗り込み、ゆっくりと私は眠りに落ちていく。 何かが頭の片隅に引っ掛かったものの、私が眠りに勝てるはずも無く……。

ふわぁ~ぁ。 おやすみなさい。

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