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眠くなる方法  作者: 紫陽 圭
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12/18

だから約1週間

前話の後書きで書いた閑話は割愛しました。 本編です。

 **********


 さて、馬車移動中の私の様子と神力が確認できたことによって、主席神官たちは方針を確定させたらしい。


「お願いです。 せめて主要神殿6か所分だけでも協力してください。」


 現在、主席神官や同行者や第2神殿関係者などなど、勢揃いで頭を下げて懇願されてたり。



 この世界には、毎回最初の召喚を行う主神殿を中心に、真北に今の第2神殿があり、時計の1時間おき──2時・4時・6時・8時・10時───の方向に第3神殿から第7神殿までが配置されてるらしい。 今回の召喚も主神殿───第1神殿───で行われ、私は馬車で真北の第2神殿に移動してきたということになる。

で、主要神殿を中心に主要都市が建設されていて、主要都市の周辺に中小の都市やら農場やらが有るため、主要神殿を順番に巡るように移動して神力を発揮してもらえれば全域が網羅できる。 だから、まずは第2神殿から帰還して、次は第2神殿に召喚して第3神殿に移動して帰還、第3神殿に召喚して第4神殿に移動・帰還……を繰り返してほしい、と。



「ふ~ん?! 歴代救世主同様に私にも何度も往復しろと?! 私が付き合わなくちゃならない理由は無いんだけど?!」


 お願いという形をとってはいても、『今後も何回か召喚するぞ』と言われてるわけで、怒りが湧く。 どんなに身勝手なことを言ってるか、ホントに自覚が無いらしいところが、余計に腹が立つ。


「ちゃんと毎回還します。 こちらでの安全は保障します。 それなりの謝礼も考えます。 召喚条件が条件だから、あちらでの生活には影響しません。 だから───」

「条件満たすたびに召喚することを承諾しろと?!」


 あぁ、やっぱり、召喚そのものが彼らの都合でしかないということに気付いてもいやしない……。



「……召喚を拒否する方法にお心当たりでも?! あちらには魔術そのものさえ無いんですよね?!」

「!!!」


 少しの間があいた後、主席神官が、顏を上げ、じっと私を見つめて言う。

実際、召喚を拒否する方法に心当たりなんて私には有りはしないし、元の世界に有るとは思えない。 唯一の方法は条件を満たさないこと───つまりは眠らないこと───だから実現不可能だ。


「貴女の生活には支障は有りません。 こちらでの疲れなどの何ごとも向こうには影響しません。 経験の記憶と報酬が残るだけです。 拒否する方法が無いのなら、承諾しないことに意味は無いのでは?! 快く承諾していただいた方がお互いに気まずくならずにすむと思いませんか?!」

「……。」


 何気ない脅しと懐柔……若いながらの主席神官の地位は伊達ではないらしい。 確かに、彼の主張を覆すことができるような何物をも私は持っていない。 実に悔しいし癪(しゃく)に障るけど、感情だけでは事実は動かない。


「むこうでの私の状況がわからないのに、どうやって召喚のタイミングを決めるの? 条件を満たすたびに召喚されたら、ヘタしたら向こうでの1日のうちで何回もってことになるわけだから、支障も影響も無いなんて言わせないわよ?!」


 悪足掻(わるあが)きに聞こえても構わないとばかりに訊いてみる。 拒否する方法が無いならば、せめて詳細を確認して条件を詰めておかなくては……。


「ある程度の魔力を召喚陣に流しておけば、条件をどのくらい満たしているか判ります。 また、この世界と貴女の世界とで時間経過の速さは同じであることが確認されてますので、召喚の間隔を調整することも出来ます。 それに、私たち───こちらの世界───にだって生活は有りますし、状況や救世主様の神力の影響などの調査・確認・分析などの時間も必要です。 1日に何度も召喚するようなことはしません。」

「……1日に何度も召喚するようなことはしません、ねぇ?! つまり、毎日召喚される可能性は有るんだ?!」

「私たちは1日でも早く『眠くならない病』を解決したいのです。 そして、どれだけの期間あるいは何回までなら同じ救世主様を召喚できるのかは未だに確認できていないんです。 救世主様を長期間に渡って煩(わずら)わせない為にも、短期集中にならざるを得ません。」


 事実と、本音と、おためごかしにも聞こえる配慮と……とりあえず、主席神官は嘘だけは言っていない。 それは、彼の表情や口調や目、そして私の直感からも判る。 これは決断せざるを得ない。


「1日1回として、約1週間かぁ。 わかったわよ。 ただし、全域を回る前に召喚可能期間だか回数だかが切れたとしても知らないわよ?!」

「過去の記録を見る限りは約1週間なら大丈夫だと思います。 もちろん、間に合わなかった場合はどうしようもないのだと理解してますから、お気になさらず。」


 はぁ~ぁ、と溜め息を吐いて自分を落ち着かせると、承諾の意を伝える。 


「……回る神殿の数を半分にしたりとかは───」

「諦めてください。」


 ふと思いついて訊いてみるも、一刀両断された。


「馬車移動中の効果も活用したいのです。 馬車で移動できる距離としても、主要神殿同士を結ぶラインが丁度良いんですよ。 それに、まったく初めての場所に召喚されるよりは、帰還に使った神殿のほうが、救世主様も安心でしょう? 召喚先の神官たちとも面識が有る分、お互いに戸惑わなくてすみますし……。」


 こうして、約1週間の異世界往復が決まったのだった……。



 ふわぁ~ぁ。 とりあえず、初回と同じ時間帯を目安にと決まったところで欠伸が出た。 ホント、異世界召喚を初体験したうえに色々盛りだくさんだったからね。 さすがに疲れた、特に精神的に……。

ってことで、早速、第2神殿から帰還させてもらおうと思います。 ふわぁ~ぁ。

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