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富士。
雲の半ば高嶺を見上げ
点々と連なる蓼花が在り
その向こうの高きに見ゆる
高度三千七百の頂よ
重荷を背負い杖を持ち
齢十六の登山者を
吹き付ける雨風と
雷を持った黒雲が
心を折ろうと荒れ狂う
諦観のないその眼には
必ず山頂からの陽を見んと
その信念は固く
その決意は燃ゆる
陽の落ちた闇の中
灯りを頼りにただ登る
笑う膝を数度叩き
鐘鳴る頭を数度振り
山の裾はもう見えず
今や近くに山頂あり
残る数百の山道を
登らねばと鞭打つ深夜零時
陽が昇るまでに登りきる
六百円の飯を喰らい
寒さに肩を震わせながら
早く早くと心は急き
登れ登れと頭は言う
残る数百の道のりを
若者は登ろうとする




