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西洋街、迷宮。
いつか書きたい小説の前頭歌。
彼のような翼もない
彼女のような力もない
だから俺は走るんだ
十字路を右に曲がり
二手の道を左に
正面に見えた水路を左に避け
橋を駆けお前を探す
西洋街の町並みは変わらない
東洋街のような活気もなく
北洋街のような陽気さもなく
南洋街のような人情もない
四手に別れた道に迷い
行き止まりに突き当たり
水路の流れと逆に走る
お前がどこにいるのか
俺がどこにいるのか
当てもなく虱潰しに走る
変わらない風景に
更に更にと水路を上り
水源の湧く高台からは
西洋街を見下ろせた
そこにお前がいた
お前は笑っていた




