前へ目次 次へ 56/82 奏。 弦を叩いて音を出し 大気を震わし心を揺する 何も考えない時間 集中できる時間 奏でる音が耳にうるさく けれども嫌ではない 指関節が駆動し 機械のようにメロディを打つ メトロノームの音 規則正しい音が 意識を現実に戻す 一度鍵盤を叩き 十の音を叩き出す 楽譜を開いて目を閉じる 白黒のキィと真鍮のペダルを 残像のように脳裏に映して 黒の椅子 白黒の楽器 踊り躍る十指 楽譜の捲る音 弦と大気の振動 飽きない楽しさ 永遠にこうしていたいと 頭の片隅で願った