……結局最後には、力こそが全てなのですね
「姫様、お客様が……。」
私が喋ろうとした時、部屋の外から声が聞こえてきた。
「……客室に連れて行ってです。……私達も行くのです。」
稚夏がそう言うと私達は、客室へと転移した。私は使ってないわよ? 誰が転移なんてしたのかしら。面白いことをするのね。この私がいるのに、転移をするなんてさ。
「稚夏様、遂に戦う覚悟が出来たとのことですが……。」
扉を開けて、入口から少女が入って来た。遠くてよく見えないわ。でも多分、若菜かしらね。
「……で若菜、何のようなのです? ……貴方を呼んだ覚えはないのですが。」
近付いて来て、顔まで見えるようになったわ。やっぱり若菜だったのね。
「酷いことを仰るんですね。まあわたくしは構いませんが、貴方を信じていた人たちのことをもう少しお考えになった方がよろしいのでは?」
若菜は笑顔で近付いて来て、少し手前のところで跪いた。
「……余計な心配です。……そんなことはどうでもいいので、ようを言って欲しいのです。」
やっぱり稚夏がどこか冷たいわ。また、昔の稚夏に戻ってしまったかのようだわ。
「あれ? わたくし伝えておきませんでした? 稚夏様を”お助けします”って。」
若菜にも確かに、助けようって気持ちはあるみたいね。なら大丈夫なのかしら、そんな素直には考えられないわ。若菜が要注意人物があることに変わりない。
「悪世界を攻めるにあたって、わたくしは2つの仕事を承ります。1つ目はいちご様を惑わすということ。2つ目は彩世界と愛世界の背中を押してあげること。どうでございますか?」
背中を押してあげる……? 戦に参加するよう唆すってことかしら。
「へえ、協力して下さるんですの。それはありがたいですわね。」
「……はい、とってもありがたいことです。……では自分で言った仕事、しっかり果たしてですよ。」
若菜は私達を利用するつもりだわ。だから私達が利用したって、文句は言われない筈よ。
「分かっております。では皆様、ご期待なさっていて下さいね。」
そう言って更に微笑むと、若菜は礼をして歩き去って行った。
「……役割を分担するのです。……まずは健人、貴方には呪いのアイテムがついているのです。……だから、それもしっかり使ってやろうです。……健人は敵を、罠の方へ導く案内係なのです。」
呪いのアイテム? ああ、その指輪ね。効果は多分、懐いていない生物に避けられるというもの。でもまあ健人の能力だったら、普段は発動しない呪いでしょうけどね。
「由里さんは合図を出す係りで宜しくって? 鏡とか火とか、まあとにかく光を使えば魔法でなくても合図は出来る筈ですわ。まあ光が仕えなければ、音とかになってしまいますけれど……。」
合図? でもまあ私は、作戦については何も考える気ないからいいわ。疑問なんて持たなくていいの。ただ、命じられた仕事を果たすだけだわ。
「……蘭は攫われたばかりですし、囮をお願いするのです。」
囮かぁ、微妙ね。どうせまた戦場に戻るなら、思う存分暴れ回りたいんだけど……。
「私と稚夏は華世界で待っていますわ。恐らく動くことはないでしょう。」
まあ、2人に動いて貰っちゃ困るわ。この世界の姫と魔王、上に立つべき2人だもの。
「……もう夕方です。……帰っていいですよ。」
姉様と稚夏が頷き合うと、私と姉様は強引に塔の前に送られた。
「蘭、食事に致しましょう。」
姉様が優しくそう言ってくれる。でも私は、一緒に食事なんてする気分ではなかった。
「いいえ、まだ結構よ。お腹なんて空いていないもの。」
私たちはそれぞれ別れた。私は部屋に、姉様は食事に行ったんだと思う。夜まで時間があるわ、ゲームでもやってようかしら。flowerのゲーム買ったのよね。でも時間がなくて、まだ1つも手を付けていないわ。ふふっ、でも最初にやるのはやっぱりゆかたん編よね! 私は電源を付け、ゲームをやり始めた。そして迷森でアイテムを取りに行く為、もう1台別のゲーム機を起動させた。
私は暫くゆかたんに♡♡しながら、再来月にイベントがあると思われる皐月の為にアイテムを集めていた。すると、部屋の扉が開かれたのだ。
「蘭、いつになったらご飯を食べに来るのじゃ? コックさんも文句を言っておったぞ!」
やっぱり愛妃姉様か。まあノックしないで部屋の扉を開けるなんて、1人しかいないもんね。
「分かったよ、今行くわ。」
私はセーブして渋々ゲームを片し、渋々部屋を出た。
「蘭、私はもう食べ終わってしまいましたわよ? 待ってたのに、遅すぎでしてよ。」
途中で姉様にすれ違った。別に待ってなくてもよかったのに。てか、今まで食べてたんだとしたら食事の時間長過ぎだと思うわ。
「セバスチャン、早く料理を持って来て頂戴。」
私は椅子に座ると、セバスチャン(山本さんだっけ?)にそう言った。するとセバスチャンは困ったような顔をしたが、すぐに料理を運んできてくれた。
「いただきます。」
冷めてしまっていたが特には気にせず、私は出された料理を平らげた。そして自室に戻る。ゆかたんの続き♡
翌日(まあ朝までゲームしてたけど……。)
「……蘭、いい情報が入ったのですっ!」
稚夏が私の部屋に飛び込んできた。どうしたのよ、珍しいわね。愛妃姉様じゃないんだから、ノックくらいはして欲しいものよ。
「……王様といちごが、音楽世界にいるそうなのです。……あの2人がいない今なら、結構有利に進めることが出来るのではないですか?」
音楽世界に? だとしたら、知らせも噂も中々届かないわね。
「それは確かな情報なの?」
偽情報だってことも有り得るわ。だとしたら、恐ろしい罠が仕掛けてあるに違いない。だって、あの悪世界なんだもの。
「……恐らくそうです。……蘭、今日早速働いて貰えるですか?」
もう仕事? ふふっ、いいわね。どうせ戦うのなら、思い切り楽しまないと……。
「ええ、私はいつでも働くわよ。どんな注文もど~んと来いね。」
どうしよう、テンションがヤバいわ。これがオールの力なのかしら。
「……蘭、寝不足ですか? ……寝惚けていないようなのですが。」
いきなり言われたから、くまでも出来てるのかと思ったわ。それか、異様なハイテンションが他人から見ても分かるレベルだったとか。でもまあ確かにそうね。私は本当に朝は弱いわ。寝惚けていないことが可笑しいのか……。
「まあ、少し寝不足気味かしら。でも気にしなくていいわ、それよりも朝食を摂りたいから退いてくれると嬉しいんだけど。」
少し寝不足気味とか言ったけど、全く寝ていないわよ実は。ま、若い私にはそんなこと関係ないわ。
「……朝食ですか。……では私は帰るのです。……用意が出来たら呼んでです。」
ぺこりと礼をして、稚夏は去って行った。さあて、今日の朝食は何かしら。
「蘭様は本当に、来る時間がいつもバラバラすぎますよ。毎日3回ずつあるのに、4年経った今も全然読めないんですもん。」
セバスチャン、困った顔なのはそれが理由? でも仕方がないじゃないの。早く食べたい日とか、遅く食べたい日とかあるでしょ? もう、仕方ないじゃないのっ!
「読まなくて結構よ。貴方は所詮セバスチャンなのだから……。」
私は運ばれてきた料理を、お腹いっぱいまで食べ捲った。あれ? 量多くない? まあいいや、久しぶりに働くんだし。
「ごちそうさま。じゃあ、私は城まで行ってくるわ。」
そう言って席を立つと、普通に転移で城まで行った。セバスチャン、私が行く場所をしっかりキャロライン(鈴木さんかな?)に伝えておいてくれるといいけれど……。
「稚夏~! 用意は完璧よ! 私は何をすればいいの?」
私が叫ぶと、稚夏はすぐに城から出て来てくれたわ。
「……敵さんを纏めといて欲しいのです。……出来れば暗いところの方が嬉しいですね。」
あっ、囮役って言われてたような気もするわね。暗いところに纏めるの? でも、暗いところってどう湯ことかしら。
「悪世界のどこかに纏めておくのよね。」
暗いとこって言ったら、悪世界自体くらいし。華世界や愛世界に比べたら、だけどさ。
「……そうですよ。……悪世界の端に纏めておいてくれると、とってもありがたいのです。」
悪世界の端の暗いところ? まあ、了解ね。私は光を出さずに、悪世界の城の陰に転移した。光がないのだから、今来たこともばれないでしょう。逃げ出してここにいる、そう思うんじゃないかしら。
「あれ? お前、蘭なんじゃ……。でも、捕まってる筈。もしかして……。」
あら、脱出したことにすら気付いていなかったのね。まあいいわ、逃げたばかりなのだと思ってくれれば。それで、このまま沢山人を集めればいい訳か。
「蘭が逃げたぞー!」 「王様に怒られるー!」 「早く捕まえろー!」
おっ、来た来た。てか私が逃げたこと、隠しておきたいの? なら阻止しなくても、雄哉たちのところに伝令は行かないかしら。ふふっ、予想以上に簡単そうねぇ。
「もう見つかったのね。……はぁ……はぁ……。」
それっぽくする為に、私は息を切らしている振りもしたわ。そして暗闇の中でも見えるように、目に光属性魔法を付ける。明るくもならないし、自分だけがよく見えていい魔法よ。暗闇を恐れずに、だから私は走ることが出来るの。着いて来てくれればいいんだけど……。まあ大勢の足音は聞こえる、大丈夫そうね。そう判断した私は、稚夏への合図の為に大きな光を発生させた。そしてその光に紛れて愛世界の転移した。
「……待っておったで。」
4人の少女に私を待ってて貰っていた。
「ふふっ、ありがとう。で、4人にお願いはあるんだけど……。」
この人達なら動いてくれる。そう信じているわ。だってこの人達、何だかんだ言っても私と一緒だから。
「我らに願い? 良かろう、聞くだけ聞いてやるか。」
ふふっ、きっと喜んで協力してくれるわ。
「悪世界と戦うんだけど、一緒に戦ってくれるわよね。」
戦い好きな彼女たち、断ったりなんてする筈がないわ。
「うちは戦いたくない! もう戦わないっ!」
林檎にはすぐ否定された。でも、最初から林檎には頼んでいない。4人にお願いとは言っているけど、期待はしていないわよ。抑々、神を戦いに参加させること自体ルール違反になるし。
「貴方達、森に何をしたのか覚えているかしら。きっと悪を倒せば、それも許される筈よ。」
これもまだ否定されるのでしょう。でも、最初はこんなことを言っておくのよ。
「……悪って何やねん。……あんた華世界の人間ちゃうん? ……あんなええ奴がおってもそないなことを言うとる、あんたの方が悪やろが。……どないなことやねん。……それじゃ許されへんわ!」
いい人ぶっちゃって、いつまでそんなことを言ってられるかしら。
「ふふっじゃあさ、私たちを助けてくれたら私が許してあげるわ。どうゆうことか分かる?」
あんな木々を植えているくらいだもの。欲はあるのでしょう? なら釣れる筈だわ。
「いいよ。協力、しようか?」
英里奈が釣れたわ。彼女が動けば、他も動くでしょうね。
「……それは、わいには悪がぴったりやあ言うとるんか? しゃあないな。」
ほら、動いてくれたわ。英里奈はリーダー的感じで、彼女のことを慕っているみたいだから。
「うちは戦いたくないよ。ねえ、エイリン! ユキリン! どうゆうこと?」
雪那は協力してくれるのね? でも林檎はダメ、実里は悩んでいるわ。
「戦いたくないならいいわ。林檎、帰ったらどう? ふふふ、それで……実里はどうするの?」
林檎って確か森の神よね。別に必要ないわ。
「我も戦ってやろう。元々あの連中には腹が立っていたからな。」
実里はいつも通りの満面の笑みでそう言った。悩んでなんかいなかったみたいだわ。でも私に言われて戦うんじゃなく、元々腹立ってたから戦う。そう言うところが可愛らしいわ。
「ちょっと皆!? 何でよ、戦っちゃダメでしょ。」
林檎が3人を説得しようとしていた。ふん、そんなの無駄に決まっているじゃないの。
「神の手、使わせない。リンゴ、待っててね。」
「そうゆうことじゃないよ。戦っちゃいけないんだってば!」
林檎にこの3人を教えてあげるわ。ふふふ、残念だけどこの3人(特に英里奈と実里)は戦いが嫌いではないのよ。そんなに平和主義って感じもしないでしょ? 抑々。
「……まあ、印象ってなんは大事なんやわ。わいはな、森に人が戻って来て欲しいんや。」
そうでしょうね。ふふっ、よく分かっているわ。
「一緒に戦うと言ったよな。具体的には何をするんだ?」
具体的、か。何をさせようかしらね。
「兵士を惑わす、それでどう? 細かいことは実行する、その場で言うわ。じゃあね。」
私は手を振り、華世界に転移した。
「……遅かったですね。……何をしていたんです?」
今現れた私を見て、稚夏が質問してきた。別に、遅くはないじゃないの。まあ、私にしては遅いかもしれないけど。
「ちょっと、ね。まあいいでしょう? で、稚夏はどうなの?」
何か作戦をしようとしていたのでしょう? なんだか知らないけど、うまく行ったのかしら。
「……見てはどうです? ……まだ効果は続いていると思うのです。」
何? どうゆうこと? まあ、見れば分かるかしらね。私は妖精の姿になり、悪世界のさっきのところの空に転移した。これは……! 悪世界の兵士同士が戦っていた。闇……いやこの様子だと、愛属性魔法かしらね。暗闇だから見ずらくて、効果を長引かせることが出来る。それも愛属性魔法は範囲攻撃だから、1部に沢山の人がいれば低魔力で沢山の効果が期待できるわね。これなら私への指令の意味が分かるわ。私はこれで敵に大きな被害が出ることを確信して、華世界に転移した。
「……どうだったですか? ……いいと思わないですか?」
いいとは思うけれど、稚夏にはやって欲しくなかったわ。こんな、こんなにも卑怯なこと。
「こちらに被害は出ないし、とってもいいと思うわ。じゃあ次の指令、待ってるわね。」
私は自室に戻って、ゲームの電源を付けた。ゆかた~ん♡ お待たせ。私が丁度イベントを発生させて、ゆかたんの歌を聴いていた時にノックの音がした。何なのよ、よりにもよってこんなときに……。まあ仕方ないわ、私は部屋の扉を開けた。
「姉様から蘭に、手紙を預かって来たのじゃ。」




