楽しいだけじゃ、ダメなんですぞ
風
「この愛妃って子、凄い可愛いわよね。」
由里が写真を眺めながら、ニヤニヤした。女子が女子の写真を見て、可愛いってにやけるの?
「可愛いですね、でも僕は山中さんの方が。」
一志が拍手しながら言った。
「そう? ありがとう。」
「恋人か!」
優花が二人のやり取りを見てツッコんだ。このメンバー、平和だね。
「違うよ! 私、夫いるもん。」
え!? 由里結婚してるの!?
「山中さん、誰と結婚したんです!? 聞いてませんよ、まさかあの人ですか…?」
一志が今度こそ凹んだ…、と思ったがすぐに立ち直った。てか、あの人って誰よ。
「結婚なんてしてないわよ! ばっ、バカじゃない!?」
由里が真っ赤になって叫んだ。夫いるのに結婚はしてないのね。
「じゃあ何で夫がいるんじゃ!」
優花が再びツッコんだ。さすがね、優花がツッコミに回るほどとは。
「で、葵はさっきから何してるんですかいな。」
隣で何かやってるから、むっちゃ気になるのよ。
「箱、貰っちゃった。2つ目だよ☆ ほら。」
前回のアレ、葵が盗んでたの? それも、雄哉のせいになるのね…。
「その箱、何が入っているのよ。」
雪様が葵に訊いた。
「ほとんどは、国民のノートって奴だよ。でもたまにね、国王のノートって言うレアアイテムが出てくるんだ! それを、永輝様に…。」
優花が華世界の為に探してるのに、王様や葵が奪っちゃうなんてね。葵は愛世界の為、王様は悪世界の為、雄哉だとしても甘世界の為ね。でもあれ、もともとは夢世界の物なんでしょ?
「助けるから。悪世界と、愛世界を。そして、他のところも…守って、見せるんだから。」
てかそもそも、何で夢世界の物なのに不思議世界にあるの?
「貴方ね、そんなの無理に決まってるじゃないの。全てを守るなんて…助けるなんて…。せっかく力があるのだから、もっと現実的なことをしなさい。」
雪様さえ、呆れた様子だわ。
「何じゃこりゃ!!」
その時優花の叫び声が聞こえてきた。アイドルの、それ以前に女子のものとは思えないわ。
「何よ…。ってぎゃあ~っ!!」
由里も叫んだ。何なの?
「やっ…。」
しかしその悲鳴をあげさせたものを見つけ、私もつい声を漏らしてしまった。さっきのゴキブリ型怪物が、大量発生していたのだ。こ、これを生で見たら…ねえ? うん、悲鳴の理由が分かったよ。
「消えろこのクソッ!!」
優花~!! そんなこと言っちゃダメよ。
「アイドルでしょ…?」
隣で葵がドン引きしている。
「全部倒したの!?」
雪様が驚愕しているようだ。…ってえ!? 全部倒したの!?
「あの木、何かキラキラしてるわ。」
驚く私達のことなど構わず、由里は言う。ん? 3人は、崖の上にいるのかしら。
「空が暗くなってきましたね。」
一志が言った。それよりも、この景色は中々綺麗ね。森が広がっていて、中心で大きな気が光を放っていた。
「ここ下りて行こうよ。」
優花、飛べるの? 飛べないんなら、そっから下りるのきつくね? 飛ぶ技術がもともと高いのは、天使と妖精と鳥…あとは蝙蝠くらいしか知らないわね。
「じゃっ! 行こっ!」
優花が、由里と一志の手を掴んだ。
「行くって、飛び降りるんですか?」
一志の質問に、優花は大きく頷いた。
「大丈夫なの?」
「きっと大丈夫よ、たぶん大丈夫。」
優花!? きっと、多分って。
「何それ~、本当に大丈夫なの?」
由里が不安そうに訊いた。
「なせば成る、なさねば成らぬ、何事も。ってことで、行っくよ~☆」
優花が飛び降りた。
「危ないですよ。」
優花に手を掴まれたままだったので、一志も一緒に落ちて行く。
「1人にしないで!」
それに続いて、由里も飛び降りた。ちょっ!! 大丈夫なの!?
『いや~!!』
悲鳴を上げて落下していき、優花は上手に着地した。そして一志と由里をキャッチした、やっぱ凄いなコイツ。
「皆無事ですね。」
一志の言葉に、2人は頷いた。
「森を進もう! ミッションは多分、森の中にある!! そんな気するもん。」
優花は森に向かって歩き出した。
「あのキラキラの木、いかにも怪しいもんね。」
由里と一志も、森へと歩き出した。そして3人が森に入った時、凄い風で吹き飛ばされた。
「ちっ。」
優花さん!? 舌打ちなんてしないで下さいよ。
「大丈夫ですか?」
一志が呪文を唱え、回復魔法を発動させた。
「何なのよこれ。」
由里が、服の土を掃いながら言った。
「強行突破、あるのみじゃ!!」
優花が葉っぱのバリアを纏って走り出した。えぇ!?
「待ってよ!!」
2人も走って着いて行った。あんたら、優花でさえバリア付けてんのにさ。……あ、由里はバリアしてる。手をクロスさせて…、って何の意味もないやろ!
「このメンバーは最高だね。」
「無茶苦茶だわ。」
葵が爆笑、雪様が失笑していた。
「よっしゃクリア!!」
優花、むっちゃ楽しんじょるやん。
「風は止まったのね。」
「そうみたいですね。」
由里と一志の方が、まだちゃんとやってるわ。んで今の強風だけど、私の隠し部屋と同じトラップだわ。侵入者を防ぐ、専用のもの。
「中心の木目指して、レッツゴー☆」
『イェイ!!』
優花と愉快な仲間達って感じね、本当に愉快な。
「いっつわっ!!」
優花、もっと女の子らしくしなさいよ。何? いっつわって。痛ってことなのだろうけど、逸話みたいになってるわ。
「痛いわボケい!!」
優花も若奈と同じように、手が木に噛まれていた。のだが優花は、噛まれている手から火を出したのかな? 自分で、木を中から燃やしてしまった。
「大丈夫?」
由里が心配そうに訊いた。
「全然大丈夫よ。それよりも、あいつを動かしてたやつを探そうよ。そうしないと、全ての木が敵になるよ?」
優花は言いながら、一つの木を鋭い眼光で見つめた。
「全ての木が敵ですか、きついですね。」
一志の言葉に、由里はキョトンとして言った。
「この、怪しい人じゃないの?」
由里が指差したところには、木の着ぐるみを着た人がいた。
「どう見たって、ただの木なんですが。」
木に見えるように、幻惑魔法を掛けているのかしら。だったら、着ぐるみの意味なくね?
「幻を見せるんなら、もうちょっとロマンチックなのお願いできる?」
優花が魔法無効化魔法らしきものを発動させた、私も使えない魔法なのに。
「着ぐるみですか。」
あっ! 幻惑魔法じゃなくて、変化魔法で着ぐるみを木に見せていたんだわ。そんなことをすると言うことは、低レベル魔法使いである確率が高いわ。
「そこね。」
優花が行き成りビームを放った。
『ステージ11 解放』
…ステージいくつあんのよ。
林
「ほら、はよ来るのじゃ!」
愛妃はスキップしながら言った。
「少し待て、どうゆうことだ?」
花恋が訊いた。
「いろいろあって、一緒に行くことになったのよ。」
若奈は目を反らしながらも、花恋にそう言った。
「まあ、人数が多い方が…よいのだろう。」
花恋も若奈も、笑顔が引き攣ってるよ。でも花恋も、OKしてくれるだけ偉いんじゃない?
「妾はこのようなところにおりとうない、別の場所に行きたいのじゃ。」
結構森の奥まで入って来た頃、愛妃は立ち止まって言った。
「別の場所?」
健人が(幼稚園生を相手にするように)優しく訊いた。
「そうじゃのう、美世界と言うところに行ってみたいのじゃ。」
美世界!? これがミッションならばやらざるを得ないけど、凄い遠いじゃないの…。私も行ったことないのよね、行きたいとも思わないけど。
「調子に乗るな、着いて来るのならば黙ってついて来い。」
花恋はきっぱりと断った。カッコいい!
「うわ~ん、苛められたのじゃ~!」
愛妃は泣き出してしまった、歳考えなさいよ。
『ミッション11 失敗』
え!? 今のミッションは酷くない!? 花恋の視界が真っ暗になった。
「ミッション失敗者はもう動かないから、映像消しちゃうよ?」
葵が言ってきた。もう動かないの!?
「大丈夫ですぞ。」
真っ黒の映像が消え、残った6つの映像が少し大きくなった。言われてみれば、夏澄のが映されてないわね。
火
「あれ? 箱が無くなってる。どこ行ったんだろ。」
桃花がきょろきょろしている。桃花の考えも、少し読ませて貰うわね。
ー可笑しいな、ちゃんと持ってた筈なのにー
凄いわ、裏表が全くないのね。
「桃花、僕が貰っといたんだよ。」
葵が伝えた。あれ? 王様のせいにしといた方が、葵的にはいいと思うんだけどな。
「王様のせいにしたところで、僕に得はないでしょ? だって盗んだこと、あの2人が怒ると思うの? ふふっ、でも王様のせいにすれば無駄にそっちの怒りを買っちゃうでしょ。」
私はテレパシーの侵入を、絶対的に防いでる筈。それを破ったのか、表情から読み取ったのか。普通の人になら両方やられること無いでしょうけど、葵だったら両方やりそうなんだものね。
「あおいくんが貰ったんだ、分かった貰っといて。教えてくれてありがとね。」
さすが桃花、怒ってる様子が全くない。それどころか、お礼を言うなんて…。
「どうするか、アタシにできること…。」
花子が何かを考えるような顔をしていた、花子ってものを考えるだけの脳があったのね。驚いたわ。
「あっ!! 任務思い出した、でも恩は返さないと…。」
だってこれなのよ? 花子は桃花を方を、チラッと見た。
「任務って何? 教えて♡」
「蘭様を捜すこと…ってあ!! 言うなって言われてるんだ。」
だって花子は、正真正銘アホみたいよ。
「言っちゃダメだったの? ごめんね。言わせちゃったからには、わたしも手伝うしかないわ。蘭ちゃんなら、わたしも知ってるしね。」
桃花、凄いよ…。これを見ちゃうと、愛妃の我が儘を断った花恋が酷いように見えてくるわ。
「蘭様を知っている。桃、花。分かった! お前も華世界の人間なんだろ!」
今更!? 桃花が華世界の人間って、一瞬で分かるでしょう? グループ名からして、flowerって言ってるし…つまりflowerを知らないと。花子はあの大人気アイドルflowerも、伝説の魔術師のことも知らないと? そのうえ華世界の人間じゃなくても、蘭のことは結構皆知ってると思うわよ? あの幼さであれだけの強さ、無茶苦茶有名だと思うわ。
「うん、そうだよ。凄いね、何で分かったの?」
いや桃花も、全然凄くないから。…それともわざと? じゃないのが桃花なのよね、優花ならわざとだろうけど。
「だって、桃の花って名前なんだろ。でも良かったぜ、華世界の人にならばれてもいいんだ。」
思いっ切り華世界じゃないとこの人にばれてるわよ? 例えば私とか。
「そうなの? じゃあよかったわ、早く蘭ちゃん捜しに行こう♡」
桃花は笑った。こんな世の中でも、こんな子はいるのね。元気を貰えるわ。アイドルグループflowerのリーダーであるももちゃんとは違うけれど、北条桃花と言う人間は確かに全世界中に花を咲かせることが出来る気がするわ。
「すまねえな、恩は忘れないぜ。」
そう言って花子は、桃花の手を掴んだ。
「ありがとよ、蘭様はこの先にいるみたいだ。」
捜索魔法? 魔力が無くて使えなかったから、桃花の魔力を使ったとかかな。
「そうなの? じゃあ行こう♡」
桃花と花子は歩いて行った。すると、すぐに蘭が見つかった。
「花子!? しょれに桃花も、どうしたんでしゅか?」
蘭はどうして、今その口調を?
『ステージ12 解放』
「ここは、不思議世界なんでしゅか?」
「ええ、そうよ。」
蘭の問いかけに、桃花は笑顔で答えた。あれ? また止まらないわ。
「蘭様、さえ様と愛妃様が消えちまったのです。」
花子、ちゃんとした敬語で話しましょう? 私に言われたくないかもしれないけどさ。
「どうゆうことでしゅ?」
どっちもどっちね、でも蘭は敬語を使わなくてもいい身分だもの。
「アタシが華世界で捜索使ったら、不思議世界にいるって気がしたんだ。それで美希様に、言った。したら、蘭もいるでしょうから一緒に探せと言われたのですよ。」
罠? 華世界の。
「どうやら不思議世界の攻略は、かなり難しそうだね。だってそもそも、攻略させない気みたいなんだもん。」
葵が言った。攻略させない、って誰が?
「愛妃姉様とお婆様を捜すのですきゃ、了解でしゅ。」
蘭がニコッと笑った。確かにほんの少し、愛妃の面影が無くもないわね。
「でもボク、疲れてるんでしゅ。少し、休んでもいいでしゅか?」
「じゃあ昼飯にしようぜ。」
花子が巨大な袋を出現させた。
「好きなだけ食ってくれ。」
「ありがとう、いただきます。」
花子と桃花は同時に袋に手を突っ込んで、入っていた何かを頬張った。
「ゆっくり食べたら? もし急ぐ必要があるんなら、食べない方がいいと思うわ」
蘭も食べ始めた。すぃー? 普通に喋ってるじゃん。
「予備があんまねえから、やっぱ食い過ぎないようにしてくれ。好きなだけ食われちまうと、すぐ空になっちゃうだろ?」
「たくさん食べているのは、花子だけじゃにゃいでしゅか。」
蘭が呆れた声で言った。すぃー? やっぱり、口調の意味が分からないわ。
「アタシもうそんな喰った? じゃあ、ご馳走様でした。」
「わたしももういいよ、ご馳走様でした。」
花子がやめたので、桃花も一緒にやめたようだ。食べる時もぴったりだったし、何で桃花は花子に合わせているの?
「私も結構…ボクもお腹いっぱいでしゅ。」
最初は間違えてたの!? でもどうして、その口調でいる必要があるのかしら。
「そっか、じゃあ片しちまうよ。」
花子は巨大な袋を消滅させた。
「歩いて捜しゅにょですか?」
「アタシ魔力ねぇし、そうなりますね。」
不思議世界をいくら歩いても、さえは見つからないと思うわよ?
「まあ、進もう!」
桃花は歩き出した。あっ、そうゆうことね。ここに登場したのは、全員華世界の人よね…。つまりこれ、華世界が不思議世界攻略の妨害をしているんだわ。…いや華世界の人と言うよりも、華世界の魔王に仕える人たちだわ。犯人は、美希なのかしら。でもそんなに、分かりやすいことするかしらね。
「ひにゃうっ!」
歩き出してすぐに、蘭が転んだ。
『大丈夫!?』
先に進んでいた桃花と花子は、蘭に駆け寄って行った。蘭は愛妃とは違うから、さすがに転んでミッション失敗とはならないようね。
「蘭ちゃん、ちょっと待っててね。」
桃花は呪文を唱え、光を蘭に降り掛けた。
「何でしゅか?」
蘭の傷が綺麗に消えた、回復魔法のようね。
『ステージ13 解放』
ミッションは、蘭の傷を治すこと?




