皆で頑張れば、夢は現実になりますのよ
「葵様っ!!お戻り下さいっ!!」
僕達がオロオロしていると、鈴木と佐藤が僕達のことを本拠地まで連れ帰った。何?
「葵、お前に話がある。」
「父上?どうしたんです?」
父上に呼ばれ、隣に行った。
しかしそれは、8歳の僕がもう、夢を見ていられなくなるような言葉だった。
「葵、お前はわしの子ではないのだ。良いな?」
「父上…?意味が分かりませんよ。」
小さなところとは言え、王子として育てられた僕が、普通の生活なんて出来る筈もないし、したくなかった。
だから、分かりたくなかった。理解したくなかった。
「明日からは、愛世界ってとこの、秋山優さんと、翠さんの子供なのだ…。」
そこまで言われても、僕は理解できなかった。本当は分かってた筈だけど、分からなかった。
「誰か!転移を使えるものはいるか!?」
父上が叫んだ。
「…く、いないのか。では佐藤、葵を愛世界まで…頼む。」
「はっ!!」
訳の分からぬままに、僕と桜は馬車に乗せられた。
「桜、僕には分からないよ。父上は、何がしたいの?」
「…死ぬんじゃないか?」
桜は遠慮なくそう言った。それは僕が期待していた答えとは違うものだったが、もしそこで桜が期待通りの答えを返していたならば、僕は理解を…現実を…避け続けただろう。
「で、お前だけでも助けたかった。……だからよ…葵は明日から…秋山葵と…そう名乗るのだな…。」
「…。」
桜にそこまで言われては、理解せざるを得なくなってきた。
「すぃー。逃げちゃいけませんぞー!」
いちご!?
「和がああなった理由は、私も分からない。どうして…。」
いちごも、和もいい人なのに。
「悪世界で働くのと!ここで死ぬの!どっちがいいですかいなー?」
え!?いちごが悪世界の人ってことは知ってたけど、でも…。
「馬車になんか乗ってないで、答えて欲しいですなー!」
「きゃっ。」
自分でも信じられないくらい、女の子のような悲鳴を上げて、僕は馬車から降ろされた。
「いちご、なの?」
「そうですぞー。私はいちごですぞー。どこかおかしいですかいなー。」
確かに見た目はいちごだ。でも、こんなの…。
「あ・お・いー。悪世界に来て下さいなー。」
「葵様っ!!」
叫んだ佐藤を、いちごは蹴り飛ばした。
「ごめんなさい。愛世界まで、連れて行けなくて。ぐはっ!!」
佐藤は血を吐きだして倒れた。…えっ、さ、佐藤?
「…いちごは…そんなこと…しない…。…僕の…心友である…いちごは…いちごは…絶対そんなことしない…。…いちごを…返してよ…。僕の…心友を!」
それでも僕はまだ、信じたかったんだ。心友のことを…。
「いつまでもそんなこと言ってないで下さいな。私はあんたらとお友達ごっこをしてるほど、低俗な奴じゃないんですぞー!」
酷い…。いちご…いちごぉ…何で…何でよ。僕と遊んでたのは、和や父上に接近するためだったの?…本当に…それだけなの…?…あの笑顔は…嘘だったの…?僕を騙す為の…作り、笑顔なの?
「…あんまりだよ。…助けて、くれたと、思ったのに…。」
その瞬間僕は、全て理解してしまった。
「あ・お・いー。早くぅ、答えて欲しいですなー。働くか、死ぬか。」
「葵、行こう。」
その時桜が、僕の手を掴み走り出した。
「ふふふふふ。この神である私から、逃げられるとでも思っているのか?」
和!?…いや違う。和は操られてるのかな。本物の和が別にある。
「早く走れっ!」
桜は僕を草むらに隠すと、呪文を唱え始めた。この呪文は、隠れみ?
「どうせ、効かないだろうけど。他に何もないしな。」
桜が呪文を唱え終わり、そう呟いた。だよね、隠れみの術なんてのが、通用するとは思えないよね。
「その術は通じませんぞ。逃げたって無駄ってことですなー。」
「…はぁ。」
桜はため息を吐き、走り出そうとした。本当に、最終手段だね。
「逃げて。2人。」
和!?和だ!本物の、本物の和だ!
「まだ意識あったんかいな。この野郎!」
いちごが和を蹴り飛ばした。
「仲間なんじゃ、ないの?」
「仲間ぁ?意味が分かりませんなー。他人の事なんか信じても、裏切られるだけですぞ。この時代、信じられるのは自分だけってことですなー。すぃーすぃーすぃー。」
酷いよ。
「行って。」
その時目まいがして、周りの風景が変わった。




