お主と共にした時は、無駄ではなかったぞ
「行きますわよ!」
私達も、その光に包まれて塔に出た。
「急いで来て下さいまし。」
走ってく美希にどうにか着いて行った。塔の裏の、崖のような所の先に、1りんだけ花が咲いていた。
「あれ、でいいの?」
「ええ、そうですわよ。」
葵がそこに行って花を摘んだ。すると、花が光に変わり、葵を包み込んだ。
「でもさ、本当に使っちゃって良かったの?」
戻って来て、葵が言う。
「珍しい花ではあるけども、咲く時間は短いし、持ち帰ってあげることも出来ないから、あまり使えませんのよ。」
「…放っとけばまたすぐ咲くですし。」
「蘭、甘世界の城に転移できるかな。」
葵が小さな声で言う。
「誰を?」
「ここにいる全員。」
「分かったわ。」
光で何も見えなくなり、城の前に出た。
「あっ、逃走者さん達じゃないですか。よくぬけぬけとボクの前に現れることが出来ましたね。」
頼華が笑顔で、瑠美の右腕を握った。
「頼華、とかいったっけ?お話に来たよ。」
葵も笑顔で、瑠美の左手を握った。
「なんでしょうか。」
「痛いです!」
「ねぇ愛華、なんで偽名使ってんの?その姿ならばれないと思うけど。」
愛華?偽名?ばれない?何の話よ。
「葵って…あっあ。も、もしかして。」
頼華が涸れた声で言う。
「分かりました。お話をお聞きしましょう。」
頼華が、最初とは違うもっと広い部屋に案内してくれた。
「お話というのは?」
「悪世界を滅ぼしちまおうって話。」
悪世界?何その名前からして、悪そうなとこ。
「そんなこと!」
「君だってうんざりしてるんでしょ。」
「いえっ!」
「少なくとも、4つの世界が協力してくれるよ。」
「は?4つ!?」
どうゆうこと?
「そちらの方々は?」
頼華が戸惑いながら言う。
「…稚夏です。…華世界は、協力するです。」
「永輝だ。愛世界も、手伝うぜ。」
「沙羅よ。彩世界も協力するわ。」
「希。夢世界も。」
その話よりも、後ろで「結構痛いな。」って、呟いてる瑠美の方が気になる。そんなに腕、痛かったんだ。
「本当に!?」
「もちろんだよ。」
「分かりましたぁ。甘世界もぉ、協力しましょおぉ。」
あれ?愛唯居た?
「めっ愛唯!?いつからそこに居たんです?」
「最初っからぁ。」
気が付かなかったわ。…てか、最初っていつ?
「愛華、いつ攻めるのが良いか知らない?勝率は結構低いと思うよ。」
「頼華です。」
「その偽名通すの?まあいいや、頼華。」
偽名って?
「王様の誕生日に、油断すると思います。」
「頭の悪いとこだね。で、誕生日っていつなの?」
「502月の6日だったと思います。」
502月!?なによそれ。
「来月か。丁度いいじゃん。」
今501月なの!?
「おい、500月って何だ?」
「知らないわよ、そんなの。」
私が知る訳ないじゃない。
「どこ行くのー!?」
その時男の子の声が聞こえ、女の子が走ってきた。
「瑠美~。」
走って来た女の子は、瑠美に抱きついた。
「リリじゃないですか。」
あとから、男の子とさやが走ってきた。何でさや?
「星空璃々香でひゅ。」 「君が、勇者さん?」
男の子に手を掴まれた。でも、何つったか分かんなかったし。
「助けて!」
助けてって?
「雪を!雪を!…雪達を!」
雪って連呼しすぎじゃない?
「だ、誰?」
知らない人。やっぱちょっと怖い。
「あっ、失礼。僕は南和也。」
和也ね。私も言った方がいいのかな。
「私は…。」
「大丈夫だよ。全員知ってる。」
何で知ってんの?
「あのよ、解散しちゃダメか?」
「永希様達、いんないから別にいいよ。」
「私が送るわ。」
蘭が右手を前に出すと、光が出てきた。
「じゃあな。」
光が消えると、希、沙羅、永希、璃々香、瑠美、稚夏の6人がいなくなっていた。
「ここは、もう大丈夫よ。」
蘭が言った。えっ?何が?
「じゃあ、いったん小屋まで戻ろう。」
葵の言葉の途中で、もう小屋に出ていた。
「和也君!?どうしてここに。」
「雪、もう大丈夫か?」
「力は戻ってないけど、封印は解けたわ。」
封印?
「じゃあ。」
「いいえ。皆が助かるまで、私はここを離れないわ。」
「そっか。じゃあ、僕も待ってる。」
和也は、雪の隣に座り、何かを囁いた。すると雪が、真っ赤になってうなずいた。どしたの?
「雪ちゃん、真っ赤よ。くくく。」
霞が笑いながら言う。
「なっ、何?ただ暑いだけだわ。」
「それは無理あるんじゃないのぉ?」
「うるさいわね。とにかくっ、実柑はどうするの?残る?行く?」
雪は、霞を軽く蹴った。
「私、沙都子さんが助かるまで、ここで待ってたいです。」
「そう、分かったわ。次の海香は?今すぐ行くの?」
行きたいけど、お腹空いたわね。
「もちろん行くぞ。」
さやが即答した。
「僕はまた、お留守番ね。」
葵は瑠美や永希に、会いたかっただけなんだもんね。
「では、行きまひょう。」
「ちょっと待って。お腹空いたわ。」
食べてから行ってもいいよね。
「あたしの出番ね。」
舞香が台所に消えていった。
「私も、この家から出られるようになるんですね。」
海香が言う。出られないの?
「ええ。この家どころか、この世界の外にも行けるわよ。」
「星さんが私を、一緒に旅に連れてってくれるって言ってたんです。本当に嬉しくて。」
可愛いなぁ。この子。
「出来たよ。」
舞香は、もう料理を運んできた。早くね?でも美味しそう。
『いただきます。』
やっぱ美味しい。はうぅ。
あっという間に、全て食べ終えてしまった。ふう、お腹いっぱい。
『ごちそうさまでした。』
「今度こしょ行きましょう。」
私が海香に触ると、砂浜に出た。やっぱりね。なんかそんな気がしてたよ。…名前的に。
「お前ぇ、なんでおいらのことをジロジロ見てんでぃ?」
「にゃっ!?」
びっくりしたぁ。変な少年が目の前に居た。
「すぃー。待ちなさいな。」
小さな少女も走ってきた。
「誰ですかいな?」
か、可愛い。今まで見た中で1番、いや葵の次に可愛い。
「我はさやだ。そやつらが健人と由里。」
「おいらは乙女だ。そっちは妹のいちご。」
「すぃー。いちご~。」
乙女!?名前が?…もしかして、少年じゃなくて少女だった?
「すぃー。聞いたことありますぞ。勇者だったかいな。」
?すぃーってなんなの?
「そう、勇者の方々なのだ。」
「パチパチパチ」さやが拍手をする。
「すぃー。この海危ない。近付いちゃいけませんな。」
ふぇ?
「すぃー。近付いたものを、えっと、なんでしたっけな。」
「祟り殺すだろう。」
祟り殺す?怖い。
「我、祟りには弱いのだが。」
祟りには弱いって?
「いや、退治しまそう。」
「いけませんな。すぃーすぃー。退治は無理ですぞ。」
…無理?そなの?
「私は言いましたぞ。死んでも私のせいではないですからな。すぃー。」
「おいらたちはこれで。」
乙女達は去って行った。
「そこまで言われちゃ、海を捜索しゅるしかにゃいでしゅね。」
「でも、どうやって?潜る訳にはいかないだろ。」
そうね、潜ってはムリよね。
「船を借りるとかは?」
いい案でしょ!!
「祟り殺すとか言われてるのならば、住民は貸してくれぬだろう。」
なしかー。
「多分、あっちから仕掛けてきましゅよ。」
仕掛けてくる?
「はう?」
私の右手のくすりゆびについていた、花の指輪が外れた。
「取れなかったはずじゃ。」
「稚夏に返しゅときがきたんでしゅよ。」
稚夏に?
「返しまひょう。開花。」
すると指輪は、海とは反対の方向に飛んで行った。
「何で取れなかったの?」
「平和になるまでは、勇者が預かりゅことににゃってるんでひゅ。」
じゃあやっぱり、華世界は平和になったってこと?
「海を荒らす悪人よ。」
海から、女の人の低い声が聞こえてきた。
「誰が悪人よ!」
人を悪人扱いして、失礼ね。
「えっと、海から離れろ!」
…!!えっとって言ったよ!?
「姫様、しっかりして下さいな。すぃーすぃー。」
いちごの声も聞こえたわよ!?
「祟り殺してくれるわ。」
「すぃー。」
すると、海から巨大な魚が出てきた。
「くらえ!!」
その魚の口から、玉のようなものが出てきた。
「危にゃいっ!!」 「由里!!」 「避けるのだー!!」
3人の声が聞こえた。はわわわ。
怖くて私は目を瞑ってしまった。




