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【web版完結】軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜  作者: 冬瀬
おまけ

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番外編・悪役令嬢の結婚式③



「新婦カーナ・フット・モーテンス。あなたはルベン・アンク・ローズベリを夫とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しい時も。これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、星の導きが照らす限りその真心を尽くすことを誓いますか?」

「――はい」


 誓いの言葉に頷き、指輪の交換がされる。

 ウェディングドレスを着たカーナは、誰よりも美しく綺麗で、今この瞬間において世界で一番の主役だった。

 先ほどから、彼女の父親はもう前が見えないほどに涙を流し続けているし、隣に座っているフォリアもそれに釣られてかじんわり涙を浮かべている。


 そして、そのすべてをラゼは神妙な面差しで見守っていた。


(――あぁ。カーナ様も、これから自分の家庭を築いてくんだ)


 結婚式に参加する度に感じる、この寂しくて悲しい感情をなんと言葉にすればいいのだろう。

 ひとつ、寂寥感という単語が頭をよぎるが、このめでたい席には場違いな感情にラゼは心の中で自嘲する。


(……幸せそうだな、カーナ様。私のことも、たまには構ってほしいなぁ……)


 口づけを交わし、ルベンと笑い合うカーナをただただ黙って目に焼き付ける。

 こうしてふたりが無事に結ばれてくれたのであれば、自分があの学園に通った価値もあったという訳だ。

 これからはルベンとふたりで家族を築き、この国のために色んな人たちと交流を深めて、幸せになっていく。

 そこに自分が入る余地なんて、どれくらい残るだろうか。


(ううん。違う。分かってる。カーナ様が幸せなら、それでいいんだ)


 まだ成人して間もないような娘にしては、大人びたその眼差しに気がついたのは、ひとりだけ。


「……………………」


 アディス・ラグ・ザースだけは、彼女のそんな姿を見て、わずかに抱いた違和感を見逃してはいなかった。



 ◆◆◆



「「ご結婚、おめでとうございます!」」


 披露宴を終え、改めての二次会。

 ラゼはフォリアと共に新婦カーナの元へ。


「ありがとう。ふたりとも」

「すっごく綺麗です。カーナ様!」


 きらきらと目を輝かせるフォリアに、カーナが微笑む。


「誰がなんと言おうと、カーナ様が主役ですからね」


 そんなふたりを見据えて告げればカーナは肩をすくめた。


「ふふ。これもイレギュラーなくらい優秀な軍人さんのおかげね」


 意趣返しにイレギュラーなんて言われたが、ラゼとしてはそんなつもりはない。

 年齢のせいで、歳の割にはと過大評価されるだけで、これからはそれほど悪目立ちはしないだろう。

 二十歳過ぎれば、ただの人というやつである。


「それより、ふたりとも! お祝いのあれはどういうことなの?? プレゼントを開いた時、すごく驚いたのよ!?」


 カーナは嬉しいような、困ったような表情を浮かべる。


「わたくしが望めば、この国の英雄と聖女を呼び出せる御守りなんて……。嬉しいけれど、その、正直わたくしには持て余すというか……」

「そんなことないです。遠慮なく呼んでください」

「はい! カーナ様のピンチには、わたしとラゼちゃんがすぐに駆けつけますから!」


 皇妃の守りを固めるなら、これくらいはしなければ。大事な友人だからこそ、何かあった時には駆けつけたい。

 御守りを発動すれば、タトゥーとして足に刻んだマーキングの魔法陣が連動して、カーナのもとへひとっ飛びできる。

 これくらい当然だとオーラを背負うラゼとフォリアに、カーナはたじたじだった。


「――私からも礼を言うよ。ふたりとも」


 そんな彼女の背後から現れるのは、新郎殿である。


「ルベン殿下。お祝い申し上げます」

「お、おめでとうございます!」


 さらりと祝辞を述べて頭を下げるラゼに、フォリアが続く。


「ありがとう。これからも夫婦共々よろしく頼む。きっと君たちふたりならできる話というのもあるだろう。いつでも、城に来てくれていい」

「……ははは。カーナ様のためなら喜んで」


 仕事で呼ばれないことを祈るとしよう。

 一段と煌びやかなルベンに、ラゼは目を細める。

 そして、視界の端に挨拶を待っている参加者たちを見て、フォリアと顔を見合わせる。


「それでは、私たちはそろそろ」

「また今度じっくりお話しさせてください!」

「えぇ。もちろんよ。この後も、ぜひ楽しんで」

「「はい!」」


 頷いて、ラゼはフォリアとともに主役たちから離れていく。


「フォリア」

「! ゼール様」


 その途中。フォリアを呼び止めたのは、枢機卿のゼール・イレ・モルディールだった。

 厳格に法衣を纏ったゼールはいつも通りのしかめっ面。

 慣れていない子どもであれば、怖がるかもしれないような彼を見て満面の笑顔になるのは、フォリアくらいだろう。

 順調にお付き合いを進めている、こちらのふたり。

 フォリアの話を聞いたところ、結構プラトニックな付き合い方をしているらしいが、ふたりが一緒のところを見ればおしどり夫婦予備軍にしか目に映らない。


「その節は世話になった。狼牙殿」

「とんでもないです。私は私の仕事をしたまでですから」


 ゼールとこうして直接顔を合わせるのは、フォリアがマジェンダ共和国に行くことが決まった時以来。

 想定外のことが色々重なったが、フォリアをこうして無事にゼールのもとへ帰せたのだから結果オーライ。


「ゼール様、ラゼちゃんとお仕事を?」

「そんなところだ。狼牙殿の仕事は多岐にわたるからな」


 そのことをフォリアは知らない。

 隠し事が増えてしまうが、狼牙が聖女の護衛をしていたと共和国に知られるのはデメリットしかない。

 ゼールと無言で意思疎通すると、ラゼはパッと思考を切り替えて話題を変える。


「フォリア。私、陛下やマーギス様にも挨拶してくるから、また後で合流しよう」

「あ、うん。わかった。それじゃあ、わたしはゼール様と一緒にいるね」

「了解。また挨拶回り一段落したら、迎えにいくよ」


 ここからは、カーナの友人ではなく、軍人としての振る舞いが増える。

 フォリアをひとりにさせてしまうと心配していたが、ゼールが来てくれてよかった。

 ラゼはフォリアと別れると、さっそくルベンの父君と母君から挨拶回りを始めた――。



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