独身貴族
とある日、いつも通り仕事をしていると、職場の電話が鳴った。
管理薬剤師が出れそうなので無視。
薬局という小さな世界でも組織。
組織が乱れないよう配慮をしている。
薬局では管理薬剤師がトップ。
仕事ができようができまいが、個人的に嫌いであろうが、トップはトップ。
社会人としては、トップは立てる、それが涼子の社会人精神の一つである。
管理薬剤師が電話に出た。
しばらくして。
他の店の事務が流産したと報告してきた。
その補充でその店に勤務してくれ、と。
そういう理由なら、と「行きます行きます、行かせて頂きます」快く承諾する。
事務が休みで薬剤師の涼子が補充というのは涼子としては納得できないが、そういう理由なら嫌な気はしないし、何かしたいと思う。
独身女性なので、何となく後ろめたいので、こういうときに社会貢献しなくちゃ、という想いもある。
出産・結婚は個人の自由だと思ってはいるが、それでも少子化と言われてるのは承知してるし、子育てが大変なことも承知しているので、何となく後ろめたい。
「独身貴族なんだから」と、先日も一緒に働いているパートさんから言われて、何となく嫌な気がしてしまう。
「独身貴族」という言葉も嫌いだ。
子育てにお金はかからないのは確かだが、子供はそれ以上の財産だとも思っている。
物理的に金銭で言ったら、確かに裕福かもしれないが。
精神的裕福さとか、人によったらお金以上の価値だと思う人が大半だろう。
それに自分が高齢になったとき、やはり心配だ。
子供が助けてくれるとは限らないが、可能性はあるわけで。
子供にいつまでも悩まされるパターンもあることは承知しているが。
それに、積極的に独身貴族になったつもりもない。
たまたまそこそこ勉強ができて、たまたま薬剤師になり、たまたまそこそこ給料が良くて、たまたま結婚しなかった感じである。
ほんの少し違っていたら、結婚していたかもしれないし、子供もいたかもしれないし。
37歳になった今は、出産もリスクだし、元々子供がそんなに好きではないし、一生独身と腹を決めているが。
それなりの年齢になると腹をくくらないと、今後の人生が不安である。
精神的な図太さは必要だと思う。




