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閑話 王家はOK

その頃、王城では。

※時系列的には、「閑話 院兵アレッサンドロ・ビコー」の後になります。






「陛下、此度の聖女降臨に関する報告書が聖強院師団長より奏上されております。」

「うーん。聞きたくないなあ。」


つるんつるんの頭を手のひらで撫でながら座るのは、シム王国国王ミハイル・サンス・シム、毛は無いが働き盛りの45歳、青いくりくりお目々の元イケメンである。

心優しい人格者であるが、施政者としては凡庸。時とタイミングが読めない若干ヘタレ、投資に不向きなタイプの素敵なミドルエイジだ。

ついでに言うならカツラは蒸れるから普段は外している。


「陛下。今代の聖女は母親と共に現れたとの報告が上がっております。」

「え?」

「え?」


つられて返事をしてしまったのは、シム王国王太子カリスト・サンス・シム18歳独身。金髪に青い目、長身痩躯の優男でいかにも王子様といった風貌のイケメン男子。

王太子である彼はとても真面目で誠実。国家を背負う施政者たらんとし日々精進する優等生。いわゆる遊びが足りない、見た目は良いがモテない残念男子代表のような王子様だ。


「それで、師団長は何と言っているのです。」


2人を無視して報告を促すせっかちな女性は、シム王国王妃シルビア・サンス・シム40歳、亜麻色の豊かな髪にペリドット色の目を持つボンキュボンの超美人。子どもを3人産んだど根性王妃である。


「聖女降臨直後、神殿より大司教含む数名により聖女のみが連れ去られたとの事です。」


担当部署責任者のやらかしを平然と語る、『人は人、自分は自分』を極めたこの男性は、シム王国宰相シャルル・ノワイエ42歳。封建国家にありがちなポジションである現王妃の兄だ。

余談だが彼は若かりし頃、『天上人の如き美貌の公爵』と呼ばれた伝説級のイケメンである。妹と並ぶ姿は『正面から見たら目が潰れる』と噂される程の存在であった。

現在もその美しさは健在だが、外交では無く内政トップにいるため、仕事の役に立つスキルとは言い難いものがある。



「それで?母親は?母親の方はどうなったというのだ?」

「聖女誘拐直後に聖強院を出て現在行方不明との事です。」

「「「はああああ???!!!」」」



現在この部屋には国王、王妃、王太子並びに宰相の4人が集まり、コソコソと密談をしている最中であった。




「うーん。聖女は難しいなあ。」

王は聖女に関わりたくないようだ。

「陛下!何を仰っているのですか!これは神殿の聖女に対する不可侵の条約に背く行為です!聖女を救出しなければ!」

鼻息荒く聖女の保護を訴える王太子。

「聖女はなあ。自由にさせてあげる事はできぬのだろうか…。」

優しいのか弱気なのかはっきりしない王と激昂する王太子。

「なっ!」


王と王太子のやりとりを見ていた宰相が手を上げる。

「それならば、保護した後に自由にさせれば良いだけの事です。」

至極真っ当な意見が出たところで王妃が口を開いた。



「カリストは聖女様を助けた後どうしたいの?」

王太子は王妃へ顔をぐりんと向けると

「それは!勿論、王家で保護し、その後聖女が自分で伴侶を選べるように…。」

王妃に横目で睨まれて勢いが落ちてきた。

「あなたが聖女の結婚相手を斡旋するの?」

「ですから、それは、国益の為に…。」

国益という言葉が出た途端、王妃がため息をついた。


「カリスト失格ぅ。」

「しっ失格とは?母上?私は聖女の為を思って…。」

「国益でしょ?」

「それは!国のためを思えば当然…。」

「それじゃあ保護でも救出でもないわ。拉致とおんなじ。」

王太子は何も言えなくなる。すると国王が

「うん。可哀相だよ。聖女は道具じゃないんだからさ。」

「ねっ陛下っ❤」

「ねっ陛下っじゃないですよ母上!何を暢気に!」

王妃は己の息子に向き直ると微笑んだ。


「大丈夫よ。アレッサンドロちゃんがいるのだから。」

「母上は赤獅子ビコーを信用しすぎでは。」

近衛時代の二つ名である『赤獅子』はビコーの風貌になぞらえた名で、赤い髪と金色の目、獅子の如き強靱な肉体を持つ彼を賞賛して付けられたものだ。

うんうんと頷きながら宰相が口をはさむ。

「ビコー師団長は最強無敵、彼に救出できなければ他の誰が行っても同じです。」

「それは、そうだが。」

カリスト王太子は口ごもる。ここ一番で強く出られない。リーダー気質じゃないのが悩みどころだ。



「それにだ。」

国王がつるつる頭から頬に手を下ろして頬杖をついて話す。

「うちにはほら、シルビアがいるからさ。」

「そうねっ。」



現王妃シルビアは王国に僅か4人しかいない『魔法を使える人物』の1人である。


彼女は土魔法の使い手であり、その力を使い国の繁栄の為に土木工事をし、魔獣からの護りを強化する砦と堀などの建築工事を日々行っていた。

聖女不在の30年間、10歳の時から国のために身を粉にして働いてきた王妃を常に支え、王と王妃は二人三脚で生きてきた。


彼女の苦労と努力をよく知る王だからこそ、聖女1人に平和と安寧を押しつける、この世界に対して思うところがあったのだ。



「聖強院は新代の聖女降臨をもって再び中立の立場をとってもらう。

その約束でビコーを師団長にした。

この10年、彼はよくやっていた。私は彼の判断に委ねようと思う。」

「私もそれが良いと思うわ。」


2人は手をつなぎ微笑み合う。



宰相は空気を読んでと言うか、妹がおっさんとイチャついてるのが見たくないから無視していた。





※登場人物の名称は意図的にバラバラ文化圏にしてあります。専門知識が無いのとイメージを固定したくない(言い訳)。

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