第十二話 『みーちゃん=天使』
みーちゃんが俺の寝ていた布団に入ってきた。
中で少しもぞもぞとした後は、すぐに寝息を立て始めてぐっすりといった感じだ。
ここでみーちゃんを起こして咲の部屋に連れていくのも気が引けるし、だからといって俺がこの部屋から出てリビングで寝るのもめんどくさいし、みーちゃんを一人残すのは可哀想だ。
いっそのことこのまま寝ちゃおう。
そう心の中で決意した俺は、俺の方を向いた状態で寝ているみーちゃんの寝顔を眺める。
みーちゃんの顔にかかった髪を俺自らどけて、そのかわいい顔を見て微笑む。
そうやってみーちゃんの顔を眺めているうちに、俺は眠りについてしまっていた。
◆◇◆◇◆◇◆
「お兄ちゃん大変!みーちゃんが……って、え?」
咲の焦ったような大声で目が覚めた。
「ん……どうしたんだ咲、みーちゃんがどうしたって?」
「んん……あ、あーくんおはよ。って、この部屋すごいね。可愛い女の子がいっぱいいる」
あ……!やべ!
昨夜は完全にみーちゃんが俺の布団にもぐりこんできたことしか考えてなかったから、朝起きてこうなることは想定してなかった……。
不覚。
「お兄ちゃんこれはどういうこと!?私が寝てる間にみーちゃんをさらったっていうの!?」
「違うんだ咲これには……」
「あーくん、これっていわゆるオタクってやつ?」
最悪な状況だこれは……。
だが冷静になるんだ俺、焦っている場合じゃない。
「咲、事情は後で説明する。それで、えーと、みーちゃんはもしかしてそういう人無理だったりする……?」
咲のことは後回しにして、みーちゃんに向き直り、恐る恐る聞く。
さすがにこんな部屋小学生に見られたらさすがに、幻滅されるだろうな。
いくらみーちゃんでもさすがに……、
「ううん。ぜんぜんいいと思うよ」
「……え?ほんとに?」
思わぬ返答に、俺は素っ頓狂な声が出てしまった。
「人の趣味はそれぞれだし、あーくんがそういうの好きなら、むしろ私もあーくんの趣味知りたい!」
そこには、天使がいた。
ああ天使よ、あなたはなぜそこまで善人なのでしょう。
一生ついていきます。
「あーくん?」
「ああ、ごめん」
気づいたら俺は、自身の両手を合わせ、みーちゃんを、いや、天使を崇め奉るような姿をしていた。
「みーちゃんありがとう……!いつまでも大好きだからね……!」
「わっ!あーくんなんで泣いてるの?」
感極まって俺はつい、みーちゃんを抱きしめてしまった。
嗚呼、天使を感じる。
この身体はいずれ、天使に包まれて生涯を終えるのだろう。
それこそ、最高の死に方と言えるのだろう。
「で、お兄ちゃん、訳を聞かせてもらおうか?」
普段怒ったりしない咲が、少しお怒りの様子で、俺の部屋の入り口のドアに寄りかかりながら、俺を見据えていた。
あ、まだ片付いてない問題があったわ……。