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メグル「ネタばれはNGだって、言ってるでしょうがッ!」

連続投稿9つ目。

話は全然進みません。

 オッケー、まずはどや顔している駄女神姉妹は置いといて状況を整理しよう。


・アルファさんに叱られたくない女神姉妹が、私にとりなして欲しくて称号(ワイロ)を送った。


 以上。


「いや、だめでしょ」


 これ以上、問題を増やしてどうする!

 アンツさんやアサヒさんだけじゃなくて、シグルスさん達も興味津々になってるし。


「な、何がだめなのだ、メグル殿! 足りぬか、品が足りぬのか!」

「それでしたらこれもお付けしましょう。『神使なりきりセット・豹(白)』です。ほら、豹耳バンドと尻尾付きベルトですよ。感情に合わせてピコピコ動きますよ。

 スクショ撮りたいんで着けてください」

「だったら、わしも! わしのは『神使なりきりセット・牛(白)』だ! FPとWPの減少を緩める効果があるのだ!」

「いらないって言ってんの! ちょ、こら! 押しつけるな! え、『破棄・譲渡不可』ってどういうこと!?」


「神器だし」とか言わないで。開始二時間で神器なんて貰っていいものじゃないから。いいものじゃないから!

 この状況は何だ。早速ゲットした称号が荒ぶってるのか。


「いいと思う。メグルちゃん、貰えるものは貰うべき」

「キーユちゃん」


 振り向くとキーユちゃんは私の右隣に移動し、手を握ってくる。


「メグルちゃんのやりたいことは他の夢人が出来なかったこと。それでなくともNRシステムを使うメグルちゃんには色んな苦労がつきまとうはず。

 メグルちゃんのプレイは、一人だと絶対行き詰まる。きっと色んな人の協力が必要。

 だから、称号もアイテムも目的の為にあった方がいいと思う。

 もしそれで周りが何か言っても……私が、守るから」


 じっと私を見つめる淡い青の瞳。私のことを考えたキーユちゃんの言葉に、胸が温かくなる。


「キーユちゃ」

「あと牛と豹のコスプレしたメグルちゃんが見たい」

「一瞬前の感動を返して!」


 色々台無しだよ!


「……全く……」


 一つため息。パネルを操作して、貰った神器とやらの説明を見る。


《『神使なりきりセット・牛(白)』

 頭防具の牛耳と装飾具の牛尻尾セット。個別に装着は出来ないから、必ず二つ一緒に着けてね。

 神器だから譲渡や破棄は不可能だよ、貸与は可能だけど。それをすてるなんてとんでもない。

 装備者の感情変化で耳も尻尾も動くから、見てる側が楽しめるよ。

『神使なりきりセット』はステータスに影響しないけど、一つ権能を持つよ。

 牛の権能:『牛食』(ぎゅうしょく)FP・WPの減少が通常の0.5倍になるよ。

 ※実際に反芻はしないから安心してね。》


 おおう、これはこれは。フランクな説明文も気になるが、権能とやらがやばい。

 このゲームは何もしなければ、ハコニワ時間で一時間に一割FPが減少する。ログアウト状態だと現実の二時間で一割減。戦闘や生産活動で減少量が増えるが、大体腹八分目で食事を終わらせると、一日三回の食事が必要になる。

 WPはもう少し管理がめんどくさいので割愛。とりあえず普通に食事と一緒に水分とってれば渇えることはない。


“神々の箱庭”は現実時間で四時間以上の連続ログインは出来ず、二時間のクールタイムを必要とする。

 この仕様をハコニワ的に言い換えると、十六時間活動、八時間睡眠、一日三食、腹八分目で健康を守ろうってことだ。NRシステムをいち早く導入したらしいこの運営、かなりの健康志向らしい。


 そこへ来てこの権能、一日二回の食事、上手く時間がずれ込めば一回でも大丈夫と言っている。ステータスこそ変化しないが、これから万年金欠だろう私には非常にありがたい。

 早速着けておこう。


 ステータスパネルを操作して装備する。リアルのように手動で装備も可能だけど、右手が動かない私はパネル操作の方が早い。


 んー、自分じゃ見えないから実感ないな。


 振り向くとベッドの上でゆらゆら動く真っ白な尻尾が見えた。頭の上へ手をやると、ふわっとした短い毛とふにゃんとした耳に触れる。おお、ぴくぴく動いてる。


「って、何してるの」


 二方向からシャッター音が響く。キーユちゃんとガンマさんが高速でスクショを撮っている。

 手の動きが止まって見える。なにこれこわい。


「キーユちゃん?」

「牛……搾乳……」

「不穏なこと言ってる!」

「いいですね、キーユさん。先ほどのメグさんのスマイルショットを差し上げますので、一枚噛ませてください」

「ややこしくすんな! 両刀女神!」

「いやですね、私は仕事以外で男性のお相手はしませんよ……男なんてもげればいいのに……」

「明るく言って! 冗談に聞こえない!」

「スマイルショットは当然送って。搾乳はそれ相応の薬が必要……ガンマ、知り合いに作れそうなのいないの?」

「そうですね。アイテム担当(おとうと)協力させ(おどし)ましょう」

「逃げて! 顔も名前も知らない弟さん逃げて! って、アンタらいい加減にしなさいよ!?」


 黒い会合へ全力でツッコミを入れる。黙ってたら、マジになりそうだからツッコミ入れまくってギャグにしないと!

 っていうか、みんなこの二人止めてよ!


「無理だ。あんな楽しそうなガンマは止められぬ」

「ボクも、ああなったキーユくんは無理だよ。力及ばず申し訳ない」

「秘の鳥とドS神のタッグに逆らいたくなんてないっす」

「右に同じだ」

「メグル様、今度なりきりセットをお借り出来ないでしょうか?」


 ブリュンヒルデさん以外から目をそらされる。

 ブレないブリュンヒルデさんは私を見つめているけど、私の味方はいない。ちくしょう。

 諦めてもう一つの神器を確認する。こっちもやばそうな気がするなぁ。


《『神使なりきりセット・豹(白)』

 頭防具の豹耳と装飾具の豹尻尾セット。個別に装着は出来ないから、必ず二つ一緒に着けてね。

 神器だから譲渡や破棄は不可能だよ、貸与は可能だけど。それをすてるなんてとんでもない。

 装備者の感情変化で耳も尻尾も動くから、見てる側が楽しめるよ。

『神使なりきりセット』はステータスに影響しないけど、一つ権能を持つよ。

 豹の権能:『豹隠』(ひょういん)パーティーを組んだ人以外には見つかり辛くなるよ。豹の模様は森や雪原で見つかりにくくなる為だけど、これは神器だからフィールドならどこでも効果を発揮するよ。

 ※白いし、混乱した時は尻尾をくわえてみて。落ち着くかもよ?》


 白だから雪豹がイメージなんだろうか。

 豹と雪豹って実は違う種類なんだけど、まあいいか。


 なりきりセットを牛から豹に変えて、説明文に言われた通り尻尾をマフラーのようにくるりと首に巻いてから口にくわえてみる。


「ふむ、全く落ち着かない」


 毛が口の中でちくちくする。

 ああ、だけどこのちくちくはいいかもしれない。少なくとも、今シャッターを押しまくっているキーユちゃんとガンマさんから気はそらせている。

 三十路女のコスプレ写真とか、どこに需要があるんですか?


 それはそうと権能の『豹隠』だ。モンスターと戦えない私には当然有用な力となる。

 都合のいい展開が続いているけど、これも称号の力なのかな。だとすると『γの禍福』の振り幅がかなり怖いんだけど。


 太めの尻尾から口を離して、私は満足するまでスクショを撮ったガンマさんとおどおどとした目でこちらを伺い見るヴィータさんへ頭を下げる。


「メグさん?」

「メグル殿?」

「称号や装備をありがとうございます。下心は……まあ、見なかったことにしますので。

 アルファさんに私は困っていない、お二人のお陰で助かりましたと伝えて貰っていいですか?」


 不思議そうに名前を呼ぶ二人に一気に話す。ちょっと恥ずかしいので、顔は下げたまま。

 話し終えて顔を上げると、二人は顔を見合わせた後、微笑んで私の右手を取った。


「ありがとうございます。ですが、一つだけ。

 下心は多分にありますが、それだけではなく私達はメグさんのお考えが嬉しくて、力添えしたいと思って称号を差し上げたんですよ」

「お主の道行きは決して平坦なものにはならないだろう。

夢人(プレイヤー)”だけではない。“箱人(じゅうにん)”もお主の目的を妨げるやもしれぬ。

 だが、お主の願いは我ら24(にん)の憂いを晴らす未来。

 わしらはお主の大願が果たされることを願っておる」


「ガンマさん、ヴィータさん……」


 身内じゃない人から応援されるのは嬉しい。

 私のやることは間違ってないと背中を押されたような気がするから。


 とてもとても嬉しい

 の、だが……ッ!




「ガンマさん、ヴィータさん……神様(ごきょうだい)(にん)数は公開されてる情報なんでしょうか……?」




 あ。固まった。


「そっ、それではわしは忙しいので帰ろうッ!

 姉上にはメグル殿がわしらを許したと伝えておく!

 称号となりきりセット大切にしろよ!? やったんだからな!?

 いいな!? 「やっぱなし」とか言うなよ!?

 ではなッ!」

「そ、そうですよ? ポンコツロリなのがヴィー姉様の持ち味なのですから!

 ちょっとくらいの情報公開は笑って許してください? ね?

 では私も『閻魔帳』に動きがあるようなないような状態ですので、お暇しますね?

 それではまたお会いしましょう!」


 すぐに解凍されたヴィータさんとガンマさんはさっきまでのいい雰囲気をぶち壊す念押しを繰り返してから、そそくさと光と変わって消えていった。

 残された部屋の中、私はがっくりとうなだれる。


「だから新情報はお腹いっぱいですってばぁ……」


 窓から差し込む光は、まだ昼にもなっていないことを教えてくれた。

 プレイヤーネーム《メグル》

《NRシステム利用中》


 種族:夢人・無

 所持金:450ルピス

 SP:0



 ジョブ1《調教師》

 所持スキル一覧

《調教Lv.1》《識別Lv.1》《意志疎通Lv.1》

 空枠:7



 ジョブ2《商人》

 所持スキル

《契約Lv.1》《道具製作Lv.1》

 空枠:3




《ステータス》

 Str:1[3]

 Vit:1[10](7+3)

 Agi:1[2](1+1)

 Int:1[10]

 Min:1[10]

 Dex:1[3]

 Luk:7[15](10+10)


※デスペナルティ発生中


 称号一覧

《αの祈り》《βの慈愛》《γの禍福》



 装備品一覧


 頭《神使なりきりセット・豹耳(白)》

 上体《夢人のシャツ・白》

 下肢《夢人のズボン・白》

 靴《夢人の靴・白》


 装飾品一覧

《補助装具・NRS腕用・白》

《補助装具・NRS足用・白》

《杖・前腕固定型・白》

《痛覚50%減少のチョーカー・白》

《神使なりきりセット・豹尻尾(白)》

 空枠:5




 所持神器一覧

『神使なりきりセット・牛(白)』

『神使なりきりセット・豹(白)』

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