3.バーサーカーだけど自分が変な事になってました
遅めの更新。これからも多分こんなペースだと思います。
そこまで長くするつもりでは無いので、ストックが切れないぐらいのペースにするつもりです。
尚、この物語はあくまでもコメディー優先です。
キャラ崩壊、設定崩壊、アホ、バカ、オタンコナス、ご都合主義の要素が含まれてますのでご注意を。(あえてここで宣言)
おかしかった。
何を持ってしておかしいのか――そう問いかけられても分からないが、ともかくおかしい。それだけは鮮明に理解できた。
「はあああああああああああああああああああああああああ?!」
絶叫する隼人の視界には女神――ミュレスの言う『ステータス』という物が浮かんでいた。それは一見してMMORPGの『ステータス表』のようにも見える。
それはいい。『ステータス』と言う名前からこういう物であろうという事は隼人自身、見当が付いていた。しかし、それでも許容できない事はある。
――何故、HPの分母が891であるのに対し、分子の方はその約三百倍の300.000もあるのだろうか、とか。
これはつまり、HPの最大値を実際の隼人のHPが上回っているという事なのだろうか、とか。
それではHPの最大値がある意味がないではないか、とか。
地味にNAMEの所が『?』になっているんだけど、とか。
とにかく色々とツッコミどころが多い。
そして何より、SKILLと記されている欄もおかしい。
暗算や格闘術は分からなくも無いが、もう一つの方が物騒すぎる。
「ステータスを見たようですね」
「見ましたは見ましたよ。でも、何なんですか、これ。全く持って訳わからないんですけど」
「えぇ、でしょうからそれを一つずつ説明していきますね」
そう言い、ミュレスは隼人の方に体を寄せる。
ミュレスの顔が間近まで近づくと、隼人の鼻孔をくすぐる匂いがあった。
何だか、良い匂いがする。
柑橘系の甘い匂い。
心が落ち着くというか、何というか。
ミュレスが女神だからだろうか。
……でも、この匂い、どこかで嗅いだことがあるような気がする。
遠くの昔じゃない。つい、ここ最近。
しかし、隼人はとっさにその記憶を思い出すことは出来なかった。
「まず、ステータスのそれぞれの数値について説明しましょうか」
ミュレスの言葉で強引に思考を打ち切らされる。
まぁでも、気にはなるが今追求すべきではないかなと自分を納得させ、ミュレスの言葉に意識を傾ける。
まず、ミュレスが指差したのは『MP』の欄。
順番的には『HP』の方が先だろうと思わなくも無いが、一番の問題点はどうやら後に回されるらしい。
「このMPは『マナポイント』と言います。私の統括する世界では魔法がごく身近なものとして存在しており、その魔法を扱うための『体内魔力指数』――『マナ』を数値として表した物です」
「『体内魔力指数』とか、『マナ』がどういうのかがよく分からないんですけど……ともかく、このポイントを消費する事によって魔法が使えるって事ですか」
「えぇ、その認識で相違ありません」
ミュレスは隼人の言葉に頷くと、今度はMPの隣を指差した。
「そして、その隣の『POW』は個人の戦闘能力を数値化した物です」
尚、この場合の戦闘力とは少し曖昧な定義となっているらしい。
ミュレスの説明もどこか要領を得るものでは無く、隼人がこの数値に付いて理解するまでにしばし時間を喰ってしまった。
そんな話を掻い摘んで説明するならば――つまるところ、『POW』というのは、その人個人のあらゆる能力、性格、癖など色々なものを加味したうえで算出される、強さ目安という感じらしい。
ここで厄介なのが、その値はあくまでも目安であり、数値は正確ではあるがそれだけが真実ではないという事だ。
例えば、自分のPOW値が敵よりも高いからと言って、確実に相手に勝てるわけでは無い。相手と自分の戦闘スタイルや身体能力の差、武器の扱い云々全てを加味したその数値は、相性によっては簡単に覆されてしまう。
そんな不安定なものだとミュレスは隼人に語った。
――一方で、隼人はそうやって説明を受けている間にどうも腑に落ちない疑問を抱いていた。
そもそも、何故――ミュレスはステータスの概要を隼人に説明しているだろうか?
そんな疑問を抱いた隼人だったが、その答えは意外とすぐに得ることになる。
「続いては……先ほどから気になっているとは思いますが、『HP』の話です」
いよいよか……と、隼人はミュレスの言葉に集中する。
「このHPは『ヒールポイント』と言います。これはその者が持つ自己治癒能力を表しているものです」
「ヒットポイントとか、そう言うのとは違うんですか? この値がゼロになれば死ぬ――みたいな」
「えぇ、直接的な生死を表すようなものではありません。これはあくまでも『自己治癒能力』。私の世界で全ての生命体が宿している、自分を守るための究極的な防衛能力なのです」
「……ええっと……つまり?」
「自分の体が傷つけば、自動的にHPを消費して傷を修復します……ということです。その効果は消費するHPに比例し、隼人さんのような無茶苦茶な数値となれば首ちょんぱされ無い限り死ぬことはありません。腕や足を切り落とされても、切り落とされた部分が存在しているなら、くっ付けて修復する事も可能なんじゃないでしょうか」
「ナニソレ、俺の体マジでキモッ?!」
「まぁ、魔王の力ですからねぇ。軽く人間は辞めちゃってますよ。もはや生物かどうかも怪しいですけどね」
「止め刺しにきやがったァッ!?」
ミュレスの通告に膝を突く。
そのまますっかり怪物化してしまった自分に打ちひしがれていると、ミュレスが肩を叩く。その手には何処から取り出したのか、短めのナイフが握られている。
「……試してみます?」
「嫌だよ?!」
「まぁまぁ、そう言わずに……」
「絶っっっ対嫌だからな! 何でそんなにニヤニヤしてんの?! 怖いよ!? 女神がしていい顔してねぇよ今のあんた!」
「うふふ……女神と言えど私も一人の女。燃え上がりたい時もあるんですようふうふ……」
「おかしいだろ?! 絶対に燃え上がる場面を全力で間違え――ぎゃああああああああああああああああああああ………………?!」
断末魔。