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人員退避

 44連隊長斎木の提案を受けた福島県警警備部長は小野本部長や吉田参事官ら数名と別室に移って協議を始める。向こうの意図がはっきりしないが、庁舎内で市長と職員の救出と言う点で閉所かつ至近距離戦が想定された。こっちの装備するMP5は陸自の小銃より圧倒的に小さくて取り回しに長ける。ハンドガードの直ぐ先は銃口。バレルの長さを考慮に入れて動かないといけない陸自と違って行動を素早く出来る利点があった。

 また、県警が今後の立て直しをする上で「あの状況で市長と職員を助け出した事」がセールスポイントになる可能性も見出される。

 確かに何所かのタイミングで最もそうな言葉を並べ連ねて首を突っ込み、弔い合戦の1つでもと考えていたのは確かだったが、今の局面で警察が加われる最後のチャンスはこれしかなさそうだ。

 この提案にはその辺の事までもが含まれていると、小野以下の全員は思考が同じ答えに辿り着いてしまっていた。

「あまりこの手の口車に乗せられるのは気分の良いものではありませんな」

 吉田は相変わらず心情の全てが態度に表れている。存外、分かりやすい男らしい。

「しかし我々が矢面に介入出来る機会は恐らくこれが最後だ。譲ってくれるなら有難く頂戴しようと思うが、現場の意見が最優先だな。まず聞いて見てくれ」

「承知しました」

 小野の頼みによって警備部長は銃器対策部隊長こと小埜澤警部をまた違う部屋に呼び出し、その意思があるかを確認した。小埜澤自身も明らかに作為的な部分を感じるが防戦一方だったこれまでの憂さを晴らすのは本当に今しかないだろう。市長と職員たちの救出を部隊の手柄にするまでだ。

「じゃあ了承の返事をするが、本当に大丈夫か」

「お願いします。どっちにしろ野口たちの無念は簡単に払拭出来るものではありません。これを以てそうなるかは微妙ですが、ここに及んで我々が犠牲を出しながら事を収めるまでは望まないと思います」

 1機第1小隊壊滅の凶報は県警の士気を大きく落とし込んでいた。特に患者搬送のために目の前を切り抜けるのが精一杯だった警官たちは後になって影響を受け始めている。

「では小埜澤警部。隷下の部隊を持って伊達市長以下、残留している職員の救出作戦参加を命じる」

「復唱。銃器対策部隊は伊達市長以下、残留している職員の救出作戦に参加します。終わり」

 小埜澤が承諾した事によって大志田警部補と分隊長たちを招集。陸自からの要請を受け入れた事を下達した。補給と移動の準備も直ちに進められる。

 陸自の話では装備以外手ぶらで構わないと言われたため人員輸送車での移動が決定。防弾衣や小物類の交換をしている最中に赤色灯付きの小型トラックが県警本部敷地内へ飛び込んで来て少し騒ぎになった。銃対はこれに率いられ最優先経路で出発。伊達体育館ではなく道路を挟んだ向かい側の総合支所へ案内される。

 装備を解いて出動服と略帽の状態になった小埜澤は伊達体育館の作戦指揮所に入った。迷彩服一色に染まった空間で濃紺の出動服は目を惹く存在だが何も気にせず足を進める。先導してくれていた隊員が迷彩服に帽子だけの、恐らく幹部と思われる人間に話し掛けた。

 向こうの階級は完全に把握していないがこっちで考えるに警視監クラスだろうか。

 耳打ちが終わるとその人物が立ち上がって振り向いた。年齢は50代かそこらに見える。自分の方がまだ若い筈だ。

「東北方面隊、第6師団長、柏戸と申します。初期対応については感謝申し上げます」

「福島県警機動隊の小埜澤警部であります。最後のチャンスを頂き恐縮です」

 頂いた? 自分で発言しておきながらその文言を疑問に思った。挑発を受け入れたと言った方が正しいだろうか。餌に釣られた魚の気分でもある。

「詳細はあっちの斎木とお話し下さい。既に必要な許可は出してありますので」

「ありがとうございます」

 柏戸の視線が動いた方に自分も顔を向ける。直立不動で敬礼する男の姿があった。挨拶を終えて歩み寄り、姿勢を正して答礼する。武装ゲリラや工作員への合同対処訓練で何度か見知った関係ではあったが言葉を交わすのはこれが初めてだ。

「第44普通科連隊長の斎木1佐です。要請を受諾頂きありがとうございます」

「小埜澤警部です。あれは何かの挑戦状でしょうか」

「今後、其方が矢面に立てる機会は来ないと思いましたので、もし良ければ一緒にとの考えから提案致しました。作戦を説明します」

 ここに誘き出された時点でもう何を言っても無駄だ。覚悟を決めるしかないのだった。

 作戦の概要は以下の通り。まずミヤギノハギ7と8が市役所南北を徘徊する生物を50口径で排除。市役所までの針路は22即機と44連隊が合同で切り開く。続いて銃対2個分隊を乗せた2両の突入用WAPCと職員たちの脱出用でもう1両が接近。車体後部を庁舎内に突っ込ませ、ハッチ解放と同時に銃対は施設内の生物を迅速に掃討。残っている市長以下数名の職員を救出するのが第1段階だ。

 その勢いのままアドニスを上空に張り付けて至近の敵生物を掃討し、消防本部と伊達署の人員も一気に引き上げさせるのが第2段階。伊達署方面に向かわせる車列は幌を外した3t半トラック2両が担当。万一の場合に警官が射撃出来るようにするための措置だった。これを以て3施設からの人員退避を完了させる。

 市長たちの避難先は遊技協同組合との連携で開設したパチンコ店の避難所で、まだ避難民の受け入れをしていない所に選定。これも何かしらのパフォーマンスに使えるとの目論見があった。

 警官と消防吏員は段列に移送し健康状態のチェックを受け、問題無ければ県警本部と福島市消防本部にそれぞれを送り届けてお別れとなる。

「作戦開始は何時頃になりますか」

「現地到着が12時50分として13時からの予定です。状況が変われば直ぐにでもとなりますが、今までの内容を持ち帰って共有する時間ぐらいは大丈夫でしょう。それと必要でしたら軽食の用意も準備があります」

「では一旦失礼します。軽食については隊内の方で必要かどうか検討しますのでまた後程」

 小埜澤は伊達体育館から出て道路を渡り、支所の駐車場に停まる人員輸送車へ戻った。まず説明された内容を共有し突入と救出を実行する分隊を指定。これには第1第2分隊で臨む。第3分隊はWAPCに徒歩で追従、支援体制を維持して待機。第4分隊は後方で待機し後詰と負傷者発生時の搬出に備える。

 軽食は13時から予定通り始まるなら作戦開始前にゼリー飲料を1つだけ。状況が変われば固形物は摂らずに水分を適量。迅速に現地へ向かう事で決定。

 残り時間を無駄にしないため装備を着けた状態でWAPCへ乗り込み突入時の動きを確認したり、庁舎内の間取りを把握する等に費やす。


伊達市役所2階・上下水道課

 ここから1階フロアを行き来するムカデ数体が見下ろせる。2階への階段は申し訳程度のバリケードで塞いでいた。非常食や備蓄品が入っていた段ボールの中に水で満たした空のペットボトルやコピー用紙、雑紙を詰めて重くしただけの本当に簡素な物である。

 例え1匹でも乗り越えられる可能性が高いのは目に見えていた。その後は3階4階と押し込まれ、僅かな抵抗も空しく道路で轢かれた動物よりも無残な姿に成り果てる最期。避けられるなら避けたい人生の結末だ。

「……まだ居るな」

 総務課職員の矢浪やなみは2階フロアのガラス手摺りに携帯を近付けてカメラを起動し、自身の姿を曝さないようにしながら1階の様子を偵察した。数は2体見える。

 下手な行動に出れば襲って来るのは確実だ。ゆっくりその場から離れて1階から見えない角度になった所で四つん這いになり3階を目指す。膝にはタオルを巻き、両手も軍手して何も音がしないような対策は施してあった。

 階段に辿り着いてようやく立ち上がり静かに3階へ。市長を始めとした残っている全員が出迎える。

「出て行ったりはしてないか」

「そうですね。1階に居続けてくれれば有難いですけど」

 今日まで何も起きなかったのに連中は突然行動に出た。陸自の作戦進行度合いは県庁を通して送られて来ている。無事に助け出されるのも秒読みに入った段階での出来事。矢浪は内心で、他の職員たちを疑い始めた。自分を含めてもたった数名だが、救助が来るのを我慢し切れず連中に存在をアピールしたヤツがこの中に居るかも知れない。そう考えると、誰も信じられなくなりそうだった。

「とにかく静かにしていましょう。県庁から何か返答はありましたか」

「調整中だが状況に変化が無ければ13時に来てくれるらしい。それまで2階に降りるのは禁止しよう」

 市長が言った手前、仮にこの状況を引き起こした犯人が存在したとしても、これ以上の突飛な行動に出る事は無い筈だ。しかし何が起きるかは分からない。工具箱のモンキーレンチを1つ失敬して懐に忍ばせるぐらいの事はしておくべきか――


 市役所で一部不穏な空気が漂う中、時刻は午後12時となる。伊達体育館には既に救出部隊が集合。WAPC3両と幌を外した3t半2両。消防本部のため新たに用意された44連本管情報小隊のLAV2両が全てだ。LAVは消防吏員が何ら抵抗手段を持たないので護りを厚くする必要から組み込まれた。

 伊達署の警官たちはその気になれば2~3匹程度を相手に出来る経験値も士気も備えているし弾もある。

 74式で運んだ銃弾がここに来て意味を持ち始めているかに思えた。

 救出部隊の全体指揮は斎木が担当。小埜澤は人員輸送車に乗り込み車列の最後尾から追従する。最前線で動きを見守りながら突入後の詳細な行動や離脱の指示を行うため、小埜澤にも指揮権が一部預けられた。WAPC乗員などがこれに従う事で決定。

 以後、現地で大きな動きが見られなかったので12時半前に部隊は移動開始。銃対隊員たちは車内でゼリー飲料を飲み干して俄かに腹へ溜まるのを感じながら揺られた。

 先行したミヤギノハギ7と8は既に市役所上空で待機。内部状況監視のため張り付いていたアドニス5はそのまま地上掃射も担当する。これらを纏めるためノスリ2が一時的に至近へと進出していた。

「ノスリ2から各機へ、作戦内容に不明な点はないか」

「こちらアドニス5、作戦進行中はこのまま張り付いていてよろしいか」

「市長以下職員の収容が完了次第で至近の敵生物掃討後、伊達署の方へ向かってくれ。そちらも必要に応じて攻撃は許可する。空域離脱は車列が完全に撤収してからで頼みたい」

「了解。作戦開始を待つ」

「ミヤギノハギ7、我々の離脱するタイミングも同じか」

「同じでいいがWAPC離脱後は高度を上げてアドニスの射線に入らないよう注意願う。各機、位置取りと高度にだけは十分警戒せよ。救出作戦自体は大事だが目も当てられない事故を回避するのが我々の任務の1つでもある」

 ヘリは互いの間隔を大きく開けて待機。救出部隊到着まで同じ高度になるのも禁止した。眼下で蠢く生物は自分たちの上に何が居るか理解している素振りも見せていない。


伊達署・会議室

「13時半頃にトラック2台が我々を運び出すため近付いて来る。その前にヘリがもう1度周辺に居るのを退けるそうだ。連絡があり次第、ここを一時放棄してあづま総合運動公園に移動。健康状態のチェックを受けて問題無ければ県警本部まで送ってくれる。だが油断するな。トラックに乗るまではいつでも撃てるようにしておけ」

 平山副署長が陸自から伝えられていた内容を噛み砕いて全員に下達する。ついにここから出られる時が来た。伊達警備隊以外で残っていた署員たちも脱出の準備に向かう。

「署内の重要書類を纏めてくれ。トラックまで運ぶのが面倒なら動かせる車両をヘリの攻撃後でいいから使えるようにしろ」

「まだ市内の掃討は終わってませんよね。本当にいいんですか」

「さっきも説明したが市役所に何匹が入り込んだそうだ。向こうを助けるついでにこっちも退避させようって算段らしい」

「いえ我々は市内の逃げ遅れが全て救出されるまでここを離れないと大見得切ったじゃないですか」

「主だった逃げ遅れ捜索は今日明日で片が付く見通しと説明があった。1日ぐらい早かろうが誰も文句は言わん」

 鈴森は何かが気に入らないらしく平山に食って掛かった。課長代理の松山と滝口警部が酔っ払いをあしらうように取り押さえる。

「ライフルと装備品を含めて持ち込んだ物は可能な限り回収。急げ」

「署内に積み上げたのはどうしましょうか」

 本機隊長の竹内と副隊長麻木が残っている狙撃班の人間に指示を出しているが、初期の段階で機動隊が使う交換用物資として大盾や警杖、ヘルメット等の装備品が署内の廊下、果ては留置場にも搬入されていた。これらを運び出すのは流石に時間が無さすぎる。竹内を入れても本機の人間は10人しか居ない。

「留置場に入るだけ押し込みましょう。鍵は持って行きますからそう簡単には破られない筈です。陸自に監視を頼めばマニアが入り込む事もないかと」

 平山が提案した。今はそれしかなさそうだ。署内はドアを外した所も多いので下手に置いておく事も出来ない。留置場ならまだ安心だ。

「ではお借りします」

「鈴森、適当に引き連れて諸々を留置場に運ぶの手伝え」

「陸自が来たら自分を置いていく気ですね」

「今日付けで留置管理係に異動してもいいぞ。我々が戻って来るまで番人するか」

「遠慮します。武藤と宮本、それに與曽井、行くぞ。あと4人ぐらい誰か来い」

「2班、手伝いに行ってくれ」

 鈴森は自身の率いる分隊の人間から3名集めた。そこに滝口警部に第4分隊第2班からも人員が差し向けられる。これだけで合計15名近くになり、狙撃班を合わせれば20名を超した。作業も楽になるだろう。

 同時刻、隣の消防本部でも撤収の準備が進んでいた。指揮業務を一時的に福島市消防本部へ引き継ぎ、管轄下にある4つの分署へも通達が行き渡る。事前の対策で消防車や救急車を含んだ車両と資機材、人員を退避させたお陰で目立った被害は無かった。

 しかしこの先がどうなるかはまだ分からない。安全だと思っていた地域で活動している最中に出くわして、負傷者が出る可能性は十分存在するのだ。


 上記両施設で撤収準備が進む中、伊達体育館を出発した救出部隊はWAPCを先頭に県道399号線を東進して市街地へ入っていた。県道150号線と接する交差点を直進した先にあるもう1つの交差点を右折後、展開中の44連隊に誘導されて青春夢通りを南下する。

 市役所庁舎南側にある駐車場へ直接進入出来るT字路に達した所で部隊は停止。44連隊の見込みでは車幅が狭いので前進が難しいとの判断から更に南下した先の交差点へ移動。ここなら十分な広さだ。

「臨時コールサイン多賀城1からノスリ2宛て状況。44連隊の支援下で阿武隈急行沿いに進出可能な道へ到達。送れ」

「こちらノスリ2、確認を待て」

 一時的に市役所直上から持ち場を離れたノスリ2が車列に接近。車長も上空の機影を視認した。

「確認した。これよりミヤギノハギ7、8が地上掃射を実施する。射撃開始と同時にアンダーパス付近まで進出後、以後の指示まで待機せよ」

「多賀城1了解」

 ノスリ2の命令によってドアガンの50口径が撃ち始めた。市役所庁舎周辺の生物を掃討する間に車列は東根川の上に掛かる橋を渡る。44連隊の隊員たちは既に数個班が川の向こうに移動して援護射撃を実施していた。これらの支援により車列はアンダーパス付近に到達。目と鼻の先で空からたまに存在を誇示する曳光弾を見ながら次の指示を待つ。

 2機合わせて200発程度を撃ち込んだ所で多賀城1へノスリ2から通信が入る。庁舎へ突入する時が来た。

「多賀城1から2、3へ。正面出入り口にて方向転換後、所定の行動に移れ」

 車列が前進。追従するLAV2両と人員輸送車は駐車場で待機した。人員輸送車に乗る2個分隊が降車して片方だけはWAPCに接近し待機する。銃対隊員たちがバイザー越しに見守る中でWAPCは車体後部を庁舎に向け高速でバックを開始した。

 窓ガラスの仕切りを意に介さず車体が庁舎に突っ込んでいき、内側に窓ガラスの破片が飛散してムカデの上面に降り注ぐ。外的な刺激を受けてその方向に頭を向けるも、少し距離が開いている。近付き出す前にWAPCの後部ハッチが開放されてMP5を構える銃対2個分隊が一斉に飛び出した。

「撃て!」

 左右に広がった2個分隊は9mm弾の雨で生物を圧倒。のたうち回る体に次々と弾丸が喰らい付いて急速に体液を失わせ、動こうとする意志に反して無力化させていった。頭部に数発撃ち込んで完全に排除する。

「クリア、上階へ急げ」

 弾倉を交換した第1分隊が先頭になって進み出した所で階段に積み上げられた段ボールの上から中年男性が躍り出て来た。その後ろに居る若い職員はあの矢浪だ。

「家に帰る! もう沢山だ!」

「撃たれるぞ! 動くな!」

 しかし彼らから見えない陰にムカデが1匹待ち構えていた。第1分隊はムカデを半包囲するように展開し9mmで制圧。追従する第2分隊が2名を保護してWAPCに収容する。そのまま市長と数名の職員も無事に救出した。

「あんただったのか、窓ガラスに何か投げ付けたの」

「残るんじゃなかった、疲れた、全部どうでもいい、死人の計上なんてやりたくない、帰してくれ」

 愚痴とも弱音とも取れる言葉。たった数日間で人生の全てを上書きされるような経験をしたため精神的に疲弊してしまったのは分かるが、もう直ぐ無事に出られると言う寸前で他の職員すら危険な目に遭わせかねない行為に及んだ事が矢浪の神経を逆撫でした。懐にしまってあったモンキーを取り出して叩き付けようとしたのを咄嗟に気付いた隊員が制する。車内は若干騒ぎになるがこの時点でWAPCの役目は終わった。小埜澤から撤収の指示が出て車体は庁舎から抜け出る。

 続いてアドニス5による地上掃射が行われ、ミヤギノハギは高度を上げて待機に入った。LAVが消防本部の車庫に辿り付き、無線で迎えに来た事を伝えるとシャッターが開く。最後まで残っていた消防吏員もこれで収容が完了。残るは伊達署だ。


 20mm弾の着弾する音を聞きながら撤収準備が進む。裏手の駐車場にあるPCと覆面車が1台ずつ動かせるのでこれに重要書類を詰め込んだ。

 封鎖していた西側通用口はほぼ総出で車を押しのけて退路を確保する。

「副署長、陸自が来ました」

 外を見張っていた松山が報告した。周辺に敵生物は殆ど残っていないため掃討も短時間で終わる。幌を外した3t半が伊達署正門に姿を現し、方向転換も終えて離脱の用意が整った。

「撤収する。業務再開日時は未定。以後の指示は県警本部に従う。以上」

 残っていた人員一同は伊達署を放棄。3t半トラックに続々と乗り込んだ。念のため拳銃は抜き身のままだったが幸い応戦するような事態には至らず、後続のPCと覆面車を引き連れてあづま総合運動公園に向かう。


 人員退避の作戦は無事終了。3日目における作戦行動は既定の時間を持って同様に終了し、4日目で市街地中心部の内部検索は殆どが終わった。

 細かい部分がまだ残っているが後はそこまで重武装じゃなくても進められるため進行速度と疲労度も違って来るだろう。

 市街地奪還作戦の工程が終わりを迎えた事により派遣部隊増派が実施段階に入った。秋田の21連隊は早々に部隊を出発させており、東部方面隊第1師団の各普通科部隊は戦力抽出の会議、航空支援となる空自半個飛行隊進出に向けた調整等が始まる。北海道で足止めを食ったままの2個中隊もようやく海路が確保されて動き出していた。

駆け足になりましたが以上で市街地奪還作戦の流れは終了となります。

次回から新たな局面に入って参りますがこちらの更新は前回の後書きに記した通り暫く休ませて頂きます。

年末までには再開出来ると思いますのでご了承下さい。


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