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執着



少年は魔王の提案を断った。


だがココペリは少年を自分の保護すべき対象と受け取ったままで、魔王とシルラーナに頭を下げてもう少し側にいて次の村か町まで付き合ってほしいと都合のいい事を言っていると理解しながらも何とかその先は自分の足や力でと健気に言う姿にへらへらとした笑みを浮かべつつ近寄っていき少年と視線を合わせる。



「君、良い子だねぇ。本当、君みたいな子見てると僕も応援したくなっちゃうなぁ」



ココペリは少年の頭を愛しそうに子犬か何かを撫でるように撫でる。


勿論その手には破滅の爪が存在しているが今は通常の人と同じ大きさにまで縮め偽っている。


つまりはこの地には見ない、上半身裸と刺青、それに浅黒い肌と銀の目だけが少年の警戒心を駆り立てる要因なのだ。出会ったばかりでどのような人物とも知れないところも付加してもいいかもしれない。



「小さいのに頑張ってるね」


「そ、そんな。俺はそこまで幼くは」


「ふぅん?じゃあ幾つ?」



そんなやりとりが彼らの間で交わされていた。


十歳を越えていると聞いて少し考えるように間が開くも直ぐに気を取り直しへらりへらりと気の抜ける笑みを浮かべ。庇護される年齢というものはやはり神々の視点からすると重要なのだろうとシルラーナも改めてそう感じ。



「こういうのもなんだが見合いみたいだな」



ぽつりとココペリより離れシルラーナの側にとやってきた魔王相手にそんな事までを呟いては魔王は目を丸くして暫しココペリと少年を見据え。


ブッと吹き出し腹を抱えて笑い出した。



「ははははっ!コイツはいい、傑作だ」



引き笑いすら起こしているのを見たシルラーナは完全に引いている。何事かとココペリも少年も目を丸くして呆然とした。



「おい、そこまで笑うほどでもないだろう……」



長々笑うのを見かねてシルラーナが魔王を突いて諫めたがツボにでも入ってしまったのかなかなか笑いは引かなかった。


終いには魔王は目尻に涙を溜める程に笑い続けた。


漸く笑いが引き始めた頃合いには魔王以外全員沈黙していたがそんな白けた空気にも魔王は動じない。ハァ、と最後に大きく息を吐き出して平素の彼へと落ち着いたようで。



「ガーくん……そんなに笑うんだねぇ。初めて見たかも」



ココペリが涙の跡を鬱陶しそうに乱雑に拭った魔王をまじまじ眺め、シルラーナもこれには驚いた。


随分と長い間友情やら何やらあっただろうものを、こんなどうでもいい話題や単語でその関係や年数を遥かに超えたというのだから無理もない。



「お前と過ごして長いが、私にはお前が完全に理解できる日が来るように思えないんだが」



元々がシルラーナの想像を遥かに超える事をしでかす厄介な男であったが、これも含めて余計にわからなくなったと思わずこぼせば魔王は片眉を上げて金の目をシルラーナへ向ける。



「いきなり何だ?何か妙なものでも食ったのか?」


「失礼な奴だな。そういうところが気に食わん……」



自身の行動のおかしさに気付かず無礼な物言いをした魔王にあからさまにシルラーナは顔を顰め、ココペリがまぁまぁと宥めに入った。



「何が面白かったのか知らないけど急にバカ笑いしだすんだもの、そりゃそういう反応してもしょうがないじゃん?」



ガーくんだって俺がいきなり爆笑したら変な顔するしヒトのこと言えないよ?と付け足されては納得したのか憮然とした顔をしながらも魔王はフンと鼻を鳴らす。


それでよしとココペリは暢気にまた笑みをたたえればそういえばとシルラーナや少年、そして魔王に問いかけた。



「ここ、どこ?久しぶりにこんなとこまで来たから僕、ぶっちゃけどの辺りまで来たのか全然把握してないんだよね」



人間の領地もちょっと目を離したうちに別れてたり無くなってたりでよくわかんないし、という意味の含まれたその問いがわかる彼女と彼は思わず顔を見合わせた。



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