終章 見送る者
白騎士団モルドレン支部舎屋上。
柵に保たれている男が一人。
彼は今、南の方角を眺めている。
キィ バタン
屋上踊り場の鉄扉が開閉。
現れたのは白衣の女性。
「………………マリアか」
「ほんとに行かなくて良かったの? 見送り。そういう規則だから、私もあなたも行けないよ、とは言ってあるけど…」
「…ああ」
「…余計なお世話だったかもしれないけど、教えたわ。彼女がいなくなった頃の話」
「…そうか」
「…知らない方が幸せだったかもしれないし、知って苦しむかもしれない。でも、そんな苦しみも二人で分かち合いなさい。もう、あなたは散々苦しんだんだから。幸せになりなさい。そして、幸せにしなさい。彼女が帰ってきたら、ね…」
「…ああ」
「私もね、彼女と約束した。必ず、戻ってきなさいね、って」
「…あいつは…突拍子もないことをしでかすが、約束は守る」
「うん」
「俺は信じてる」
「うん」
二人の間に初夏のサラッとした風が吹き、止んだ。
「…スマンが、ちょっと一人にしてくれるか?」
「分かった。あとでホケカンに、私のところへ来なさい。傷、診てあげるから」
「…ああ」
「それじゃ、あとで」
「…ああ」
キィ バタン
重い鉄扉が再び開き、再び閉じた。猛き武人一人を残して。
「……………………………………クレハァァァッ!」
男は叫び、その場へ膝から崩れた。
武を愛し、武に生き続けてきた男の、初恋の女性が、今、南へ向けて旅立った。
夏の到来を告げる夏至の太陽は、間も無く真上に到達する。
クレハの季節-『異世界じゃ想いの強さが武器になる』外伝-、これにて終了です。
いかがだったでしょうか?
元々は「異世界じゃ想いの強さが武器になる(以下、『じゃいの』)」シリーズで出てきた「反町ハルキとその一味」、その設定を考えてるうちになんかこれで書けそうだな、と思ったところがスタートでした。
異世界モノなんかで、男女混合のパーティーで移動してて…いや、その状況だったら「男女のアレコレ」とあるんじゃね?と。
割と誰もがその「疑い」を持ったりするわけですが(オレだけかな…)、『じゃいの』本編内でハルキ一味のアレコレまで書いてしまうと話の軸がブレてしまいそうで、だったら外伝としてやっちゃった方がいいかな、と。
そもそも人がヒトである以上、アレコレなところは避けて通れないと思うんですよね。
そういうトコロから逃げずに真正面から向き合ってアレコレなところも書いてみた、ということで。
まぁ18禁案件をご案内はできないというレギュレーションなので(笑)、奥歯になんか挟まったような物言いになってしまうんですが。
さてこの『じゃいの』の舞台では、人々は時間が止まった世界で生きています。
時間が止まっているということは、「死」が無ければ「生」もない。
早い話、細胞分裂が起きませんから「新しい命が生まれる」という現象も起きないわけです。
そんな世界にあって、人は愛を育むことができるのか?
なんてことも、『クレハ』の中ではテーマとして盛り込んでみました。
しかも肉体的には変化していかないのに、意識だけはちゃんと年を経ていくという状態。
設定をおさらいすると
クレハ(カヱデ):死亡時肉体年齢=18歳、経過年積算した年齢=21歳
スティーズ:死亡時肉体年齢=23歳、経過年積算した年齢=30歳
こんな感じ。
なので、見た目的には23歳の男と18歳の女、と、ちょっと年の離れた男女の交際なんですが、精神的には30歳と21歳となるわけです。
スティーズ君からすると、自分はハイティーンの女の子にドキドキしちゃってるおっさん、って立場なわけですね。
いいなと思ってもなかなか手を出せなかったというのは、スティーズ君の性格もあるんですが、一方でそんな年の差があるのに、という心のブレーキもあったりということなのです。
かわいいおっさんだろ?スティーズ君(笑)
しかしここは異世界。
現世のしがらみとかルールとかないわけで。
だとすると、男女の交際も、肉体を超えた精神的なつながりというか、魂同士の共鳴というか、そういうものになってくるのかな、と。
肉体はそのあとからついてくる、みたいなことなのかな、と。
なので、ストーリー的には「肉体の結びつき」に見えるんですが、実際には「魂同士の結びつき」ってなるんですね。
まぁそれ以前にこの世界、肉体はあるのか?という世界観でもあるので。
さて、『クレハ』のラスト、続きがありそうな終わり方になってますが、一応プロットらしきものはあるんです。
なんならラストシーンまで考えてあります、というかラストシーンは書いてみたんですよ。
しかし…『クレハ』は出版社に出してみたら酷評を受けましてですね(つД`)、すっかり心が折れました( ´△`)
というわけで、続きを書く予定はないのですが、要望次第では、と言ったところ。
同時に、『クレハ』と同じ時間軸で動く話が『じゃいの』の3になります。
こちらも…1と2が酷評を受けたので続きを書く気が失せているのでエタる予定。
ただ、これらの作品、そのままほっとくのももったいないってことでこうして公開した、というのもあるですが、設定とかキャラとかは他作品へ移植したものもあります。
なので、設定が似てるとかキャラが似てるとか、大いにある、そういうことですよ(笑)
そんなわけで、他作品の方もひとつよろしくお願いします。




