ヒロインの友達
レビゾンにきて唯一良かったのは友達が出来たことだ。
「それでさあ、不倫相手に山奥のラブホに置き去りにされたのよ」
「自業自得じゃない? 割り切った関係が前提のお遊びでしょ?」
男は愛を囁くばかり、女は憎悪を向けてくる。
「まあね、でも後が酷くて、そのホテルが爆発したのよ」
「爆発? 気の狂った魔導士でも止まっていたのかしら」
その点、マダム・ボンボヤージュは楽ちんなのだ。
「さあね、とにかく、それで死んだ私は、この世界のヒロインになったわけ」
「碌でもないヒロインを迎えて、女神様が不憫ね」
不倫に疲れたOLが、2丁目に嵌る理由がよく解る。 彼女は私の話を夢か空想の話として聞き流してくれる。 私も別に真実を語りたい訳ではない。 この空気が居心地いいのだ。
「ところで、勇者様の攻略は進んだのかしら?」
「ああ、全然。 部屋を訪ねても扉越しに『話し掛けんなババア』よ、信じられる?」
おめぇは引きこもりのガキかよ。
「でも、彼を攻略しないと不味いんでしょ?」
「そうなの、魔人に対抗できるのは勇者だけ。 彼を味方に付けないことには、おちおち遊んでもいられないわ」
はぁ 手を抜かずに勇者の好感度も稼いどけばよかった。
「マリーダは欲張りなくせに横着よね」
「煩いわね。 マダムだって男娼奴隷を買うじゃない」
「それも割り切りの一種よ。 『出会い系』だっけ? あれと同じ」
「ふ~ん」
私にはピンとこないな。
「今日は奴隷商を呼んでるけど、貴女も見ていく?」
「遠慮しとくわ」
地位のない男に興味はない。 元ヤンの夫で既に懲りた。
+++++
奔放で計算高いマリーダ・ソノス・・この国を傾ける黒幕の一人だ。 交流を重ねた結果、ダイアナ殿下の予想は正しいと確信するに至った。
マリーダは転生者だ。
勇者アキラと同じ世界からきた彼女。 荒唐無稽な話の端々に、機密扱いの情報が紛れている。 あの女は危険だ。 秘めた力を隠し持っている。
「本日は、活きのいい新入りを連れてまいりました」
「結構」
この2人が、例の侵攻で落ち延びた令息か。
「あら? 欠損があるじゃない。 戦闘の怪我かしら?」
「いえ、大分以前にカットまたは穴開けされたようです」
「変態坊やなのね」
「お気に召しましたでしょうか?」
マリーダもいい趣味してるじゃない。
「例の首輪を嵌めて、私の部屋に運んでおきなさい」
「ありがとうございます」
趣味と実益を兼ねた買い物になったわ。
+++++
裸に剥かれた俺とステファンは、女装した奇怪な男の前に連れ出された。 不思議と声を発することが出来ない。
「変態坊やね」
俺達の身体を舐め回すように見る男。
その後、リボンの付いた首輪を嵌められた俺達は、広い寝室に連れてこられた。 早く脱出しないと不味い。 何か恐ろしい目に遭う気がする。
「わん わわん(おい、ステファン)」
「わわん? わんわんわん(なんだ? 犬のマネなどして)」
何故か人の言葉が話せない。
「わんわわん(その耳はなんだ?)」
「わふ? わわん? わんわん(耳? 何だこれは? ベレン君も)」
頭には犬のような耳。
「わんわんわん(尻尾も生えてるぞ)」
「わおーんおん(なんてことだ)」
尻尾も生えてる。
「さあ、可愛いワンちゃん達。 朝までた~ぷり可愛がってあげるわ」
*****
「本国に居る協力者の情報によると、マリーダ・ソノスは男に何かしらの呪いを掛けている」
「確かに、エンリケが生き返った途端に頭の霧が晴れたと言ってた」
やっぱり、学院で王太子が篭絡された原因も、彼女の魅力云々ではなく、魔法的な不思議パワーが原因だったようだ。 流石はファンタジーな世界。 ベアトリスがフラれるなんてあり得ないと思ってた。
「呪いを解くにあたって、かなり・・その、過激な処置が必要だったらしい」
「ふ~ん、でも、解呪自体は可能なんだ」
「死ぬより恐ろしい目に遭うようだがな」
何故だろう? 解呪の方法は聞きたくない。
「じゃあ、王太子・・新国王に掛けられた呪いを解けば、阿保な政策も覆るかな」
「覆るだろうが。 解呪自体がちょっとな」
王様に過激な処置は施せないか。
新国王ウィリアム3世は、バドッグ王国を完全な中央集権国家に作り替えるつもりだ。 領地貴族は所領を国に返還、爵位に応じた俸禄を受け取り議会運営を行う。 現場の実務は全て代官に任せ、貴族は全員王都に住まうのだという。
「会議に参加するだけなら楽でいい」
「それで国政が機能すればな」
上手くいく訳ない。 既に代官による不正は常態化してる。 加えて、実情を知らない貴族が議論を重ねたところで、実のある政策に繋がるとは思えない。 国土は荒廃し、民心は益々離れ、果ては革命だろう。
「あ・・でも辺土は王国の領土じゃないらしいぞ。 無視していいんでない?」
「そう都合よくいくでしょうか?」
王様自身が公言してたことだ。
「つまり旦那様は、この機に独立なさるおつもりなのですね」
「皆はどう思う?」
黙って付いてこいと言えるほどの自信はない。
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