表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残り物には福がある  作者: 橘 葵
7/106

真打登場

「報告します! 全館封鎖が完了しました」

「ご苦労」

 手筈通り客に扮した部下達によって、ボラン修道院は占拠された。


「何をするおつもりですか? 国際問題になりますぞ閣下」

 歓待の座に戻ってきた僕に、ジーム司祭が詰め寄る。


「この修道院では、女神に仕える者、あるまじき蛮行が行われてきた。 故に、領主として摘発したまで」

「横暴な! 儂には何の落ち度もない。 騎士の慰安は教会本部からも認められた事業だ」

 ボラン修道院は、シンセス聖教国と辺土魔境の中継地点だ。 慰安施設は、戦いで擦り切れた男達の何よりの慰めとなる。 故に、シンセス側も公然の秘密として半ば黙認してきたのだ。


「黙れ! 貴殿はこの2人の娘をバドッグ王国の貴族だと紹介した」

「それがどうしたというのだ?」

「我が国では如何なる理由があろうと、貴族を奴隷かそれに準ずる立場に貶める事を禁じている」

 過去、犯罪をでっち上げて、令嬢を奴隷に堕とす事件が頻発した。 その教訓から、貴族の刑罰から奴隷落ちが削除され、バドッグ王国には元貴族の奴隷は存在しなくなったのだ。 因みに、爵位剥奪の次に重い量刑は死罪となる。


「だっ・・だまらっしゃい! ここは女神がおわす教会だ。 たとえ蛮地の領主であろうと、介入は許されない」

「そうであったな。 その件を持ち出されては手が出せない。 貴殿が言う通り、教会内は治外法権が認められている」

「ならば、さっさとお引き取り願おう! 今回の事は、本国を通じて厳重に抗議させて頂きますぞ」

 ベアトリスとの初夜を明けたあの日、彼女が調査したボラン修道院の実情を知った僕は、すぐさま現地に乗り込もうとした。 しかし、彼女に諭され今日まで入念に準備してきたのだ。


「悪行の現場はしかと見届けましたわ!」

 真打登場である。


「なっ? 貴女様は」

「乙女を傷付ける悪党は、聖女セレスティアが成敗します! 女神に代わってお仕置よ!」

 う~ん、今日のセレスティアは変なスイッチ入ってる。 あの決め台詞は誰が指南したんだろう?


「違うんです殿下! これは・・・。」

「問答無用です!」

「ぐわぁ!」

 セレスティアの放った聖法糸で、司祭とその郎党は一瞬でお縄となった。


「一件落着! かっかっかっかっ」

 彼女はいったい何処へ向かっているのだろう?


 *****


 セレスティアの差配で、ボラン修道院は一時閉鎖、収容されていた女性は、マスタング辺土伯家で一旦預かる事となった。


 ところが。


「ようやく解放されたのに『好色卿』の淫獄へなど行きたくありません」

 貴族の女性を中心に、こういう意見があがった。 おかしい、僕は白馬の王子ポジションではなかったのか? 


「助けて聖女様!」

 そっちに持ってかれたか!


「えっと、ブルース様は、酔うとエッチなことをしてくるけど・・いい人だから」

「聖女様にも淫らな行為を?」

「それに最近、100人目のお嫁さんをもらったから、他の人に手を出す余裕はないかな?」

「100人目の嫁ですって?」

 やめろー! 不都合な事実を陳列するんじゃない!


 すったもんだあり。


 ウチの騎士達が『俺達が護ってやるぜ』的な事を宣い、何とか納得してもらった。 彼らが紳士的なのは、僕の教育の賜物なんだぞ!


 *****


 収容した女性は総勢340名。 娼館としては随分な規模感だ。 ここで問題になるのが、今後シンセスから遠征する騎士達のモチベーションである。 そこで代替として、公娼館を跡地に建設することにした。 領都では既に稼働していて、免許制度を設け、本人の意志で働く女性をマスタング家が雇用、衛生管理、性病対策、過激な行為の禁止、等々前世の知識を活用した健全な運営を目指している。


 セレスティアとは現地で別れ、荷馬車に便乗して帰還の途に就いた。


 *****


「貴殿がブルース・マスタング辺土伯か!?」

 やっと帰還した僕を待っていたのは、薄汚れた女騎士だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ