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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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閑話 恋は幻し 愛は呪い

 いまバドック王国で最も注目されている冒険者パーティー『蒼月の牙』 炎の魔剣士アレックス、氷結の魔女シーマ、重戦士ゴラン、回復師リサリサ、彼ら4人は王都近郊に現れた災害級の魔獣 獣型牛魔人レッサー・ミノタウロスを5日間に及ぶ激闘の末に撃破した。 もし、討伐が遅れて牛魔人ミノタウロスに進化しようものなら王都の陥落は確実だっただろう。


 過日、王太子妃マリーダ様から勲章を授与され、冒険者ランクも最高位のSに昇格した。 名実ともに最強の称号を得たといえる。 


 そして、彼らの次なる目標は前人未到の『奈落』単独横断だ。


 +++++


 そんな新聞記事に俺さまの名前はない。


「おまえはクビだ。 幼馴染のよしみで我慢してきたが、もう限界だ」

「酷いじゃないか! 僕が今日までどれだけ貢献してきたことか」

 ぶひひっ 予定通りだ。


「うっさいわね! あんた足手まといだって言ってるの」

「おまえを護るために怪我するのは御免だぜ」

「貴方の補助魔法なんて不要です。 私の聖法魔法があれば十分」

 いまは好きに吠えてりゃいい。


「解ったよそれが皆の総意なんだね」

 あばよ、踏み台パーティー。


 *****


 無事に追放された俺は、シナリオ通りにメンバー募集掲示板の前でモジモジする。


「ねぇ君、メンバー募集してるの?」

 ぶひっ! きたきた。


「はっ・・はい。 僕、リヒトっていいます。 補助魔法が得意です」

「ふ~ん。 どう思うライラ?」

「私はよく解らない。 アイカが決めて」

 ぶひひ! 生の美少女魔剣士姉妹アイカとライラだ。 ぶほっ あの乳を俺が好き放題していいのか。


「なぜ募集してるの? 前のパーティーを首になったんじゃない?」

「・・はい?」

 ぶひ? 想定外の質問だ。 すんなり『じゃあお試しで!』となる筈なのに。


「答えられないの?」

「ぶひぶひ! 俺・・僕の補助魔法のおかげでSランクに昇格した恩知らずな馬鹿が自分の力を過信して俺・・僕を追放しやがって・・ぶひっ だから俺・・僕は本当は優秀なのに不遇で、おめぇらも俺の女・・僕の仲間になればSランク昇格間違いなしだ・・じゃあお試しで」

 ぶぅ なんとか必要な情報は伝えた。


「行きましょうライラ」

「・・うん」

 早速、3人で依頼を受けるのか。 最初の依頼はたしか・・・。


「付いてくるな!」

「・・キモ」

 ぶっ・・ぶひ? どういうことだ。


「待てよアイカ! 魔獣に喰われておっ死んだ弟に似てる俺をほっとけないだろ?」

「それ以上、汚い口を開くな!」

 これはアイカがアレックスに言う筈のセリフだ。 いったい何を間違った?


 *****


 あれから何度話しかけてもアイカとライラは俺を無視しする。


 不味い。


 周囲の冒険者が2人をいやらしい目で見ている。 俺の女に手を出すんじゃねぇ。 俺の女は俺の手で守らねば。 


 俺は24時間体制で2人を見守ることにした。


 *****


「よう、アイカにライラ、今日も依頼かい?」

「おはようザックさん。 ちょっと奥様とね」

 数日後、領主邸に入っていく2人と護衛騎士が親し気に話す現場に出くわした。 奴は2人に気があるに違いない。 排除せねば。


「・・おい」

「お? なんだ坊主」

 30代前半といった所か・・ロリコン野郎が。


「アイカとライラとはどういう関係だ?」

「態度の悪いガキだな。 アイカ達にはウチの子供が遊んでもらってる。 友達じゃねぇし親しめの知り合いだな」

 ぶひ・・命拾いしたな。 


 *****


 更に見守り続けること1ヵ月。 数日前から2人が変装や隠蔽魔法を使うようになって大変だ。 我儘な女ほど可愛いというのは本当だな。 今の俺はとても充実している。


「おい聞いたか? 王都からきたSランクパ-ティー」

「あーずっと行方不明だった奴らだろ?」

「森に入ってすぐの沼地で魔蛭リーチの餌になってたらしい」

「かーこれだから都会もんは、仮にも冒険者が最弱の魔獣相手に全滅すんなよ。 恥ずかしい」

 ぶひひっ 『蒼月の牙』の馬鹿どもが死んだか。


 まあ、俺にはもう関係ないことだ。


 そろそろ2人が領主邸から出てくる時間だ。 迎えに行かねば。


 *****


「ちょいと君」

「ちっ 話しかけるな」

 今忙しい。


「ここは僕の家の前だ。 退いてくれるかな?」

「ほざけ、ここは公共の場だ。 貴様にとやかく言われる筋合いはない」

 目障りな大男だ。


「アイカとライラが君に付きまとわれて迷惑している。 自覚はあるかな?」

「馬鹿を言うな! 2人は俺の女だ。 部外者が口を出すな」

 この男も2人を狙っているのか?


「あーこりゃ重傷だ」

「なっ・・何をする?」

「マスタング辺土伯領自治法第93条ストーカー防止法違反で現行犯逮捕。 あと宜しく」

 そのまま護衛騎士に連行された俺は『制約の首輪』を嵌められ辺土から追放された。 首輪の効果で2人を迎えに行けない。 アイカ、ライラ、俺はここだ!


 そして、俺はハーベスト伯爵家おかかえ傭兵団に入った。 仕事は辺土に出入りする隊商の襲撃。 俺から女を奪った報いを受けろ。


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