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残り物には福がある  作者: 橘 葵
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公爵家の義父と義兄

 王都滞在もいよいよ最終日だ。 今日はこれからヘロウ公爵邸に向かいベアトリスの父兄と会談を行い翌朝にはシンセスへと出発する。


「は~腰痛っ 貴方どんだけ溜まってたのよ?」

「・・すまん」

 出発の前夜に戻ってきたジャネット、色々溜まっていた僕は大ハッスルしてしまった。 昨夜は一睡もしてない。


「公爵邸では自重するのよ」

「善処する」

 宿泊したホテルのあった中心街から馬車で1時間。 ヘロウ公爵家の敷地が見えてきた。


「伺ってます。 どうぞお通り下さい」

 守衛に声をかけ敷地内に入る。 整地された土地に自然を模した山や小川、木々もよく手入れされている。 広さはマスタング邸とほぼ同程度。 王都別邸なのに。


 馬車が白亜の優美な邸前に止まった。


「よくお越しくださいました。 私、当館を管理いたしますキリンジと申します」

「ブルース・マスタングだ。 よろしく頼む」

 デキる執事っぽい初老の男キリンジの案内で邸の中へ。 驚いたことに、この建物は迎賓館・・つまり客人をもてなす専用の施設なんだとか。 規模が違い過ぎてクラクラする。


 *****


 ウェルカムドリンクで少し温まった頃に応接室へ案内された。 間の取り方から歩速に至るまで計算された配慮が滲む。 流石は王家の血を引く公爵家の使用人達だ。


「ようこそ婿殿」

 応接の扉が開くと2人の紳士が立ち上がってこちらを歓迎した。


「お初にお目に掛かります。 マスタング辺土伯が当主ブルースにございます。 こちらは側室のジャネット。 本日はお招きいただき誠にありがとうございます」

「うむ、カストル・ヘロウである。 これは長男のジルベルトだ」

 社交辞令を交わした後、ヘロウ公爵との会談が始まった。 事前にベアトリスが詰めた事項の確認が主で、案外らくちんだったりする。 


 それにしてもベアトリスの親族だけあって超絶美形親子だ。 背後に咲き誇る薔薇を幻視するほどに。


「目聡いな。 ブルース君は花や芸術にも造詣が深いのか」

「・・はい?」

「この薔薇は君を歓迎するために用意した。 ヘロウ・ジ・ディーバという品種で5代前の当主が作出した品種なんだよ」

「はは・・どうりで」

 本当に薔薇が咲き誇ってた。


「噂は当てにならんな。 芸術の成績も意図して貶められた結果かもしれん」

「仰る通りだと思います。 私が学院生時代にも高位貴族への阿りは目に余るものがありました」

 勝手に僕の評価が上方修正されていく。 ていうか学院の成績まで調べられとる。


「帰国後に一株渡そうと思っていたのだ。 娘に届けて欲しくてね」

「はい。 ベアトリスも喜ぶと思います」

 なんかいい話になった。


 *****


「これで風通しはよくなるだろう。 勇者の件も道中ジルベルトとよく相談するといい」

「ありがとうございます。 お義父さんのおかげで『奈落』対策にも光明が見えてきました」

 縁を繋いでくれた馬鹿王子には感謝しかない。 辺土を憂いた誰かの計略ではなかろうか?


「さて、少し()()()()()話もせねばな」

「・・お願いします」 ゴクリ

 まさかパパドーラ・ファイトクラブに行った件か?


「12日の件だ」

 やっぱり!


「思い切りの良さは評価するが浅慮であったな」

「恥じ入るばかりです」

 風俗は浮気じゃないけど新婦の父親としては()()()()()ですよね。


「娘がハーベスト伯爵と縁を繋いだのも、武具の安定供給と街道の安全を考えてのことだろう。 しかし、王都の情勢はこの短期間に目まぐるしく変化している」

「そうですか」

 あれ? パパ活令嬢の件じゃないの?


「2億Ptは安くない買い物だ。 しかし、結果だけ見れば悪くない判断だったと言える」

「恐縮です」

 たかり屋のオッサンの件か。


「理由は明かせないが、ハーベスト伯爵家はそう遠くない先に破綻する。 場合によってはマリアンヌ嬢を切り捨てる覚悟もしておいてくれ」

「・・はい」

「・・・。」

 隣のジャネットから怒りと戸惑いを綯交ぜした感情が溢れてくる。


「その時がきたら当主として判断は間違いません」

「それでいい」

 感情論でカストル・ヘロウ公爵の信用を失う訳にはいかない。


 *****


 翌朝、迎賓館の前に馬車5台と護衛する騎士20騎が整列した。


「頼もしい限りです」

「ご冗談を、マスタング卿を相手にしては彼ら全員でも敵いませんよ」

 ジルベルトは『パパドーラの武神にはねと』と耳打ちする。


 やっぱりバレてた!


 ヘロウ公爵家は王家に代わり独自に外交を行う権限がある。 これを利用して、協力しない王家に代わりヘロウ公爵家に調停役を依頼した形だ。 もちろん調整したのは全てベアトリス。


「ジルベルト・ヘロウ、其方をカストル・ヘロウ公爵の名の下にシンセス聖教国への外交特使に任ずる」

「身命を賭し役目を果してご覧に入れます」

「次期ヘロウ公爵として実績にもなる。 しっかりな」

「はい。 父上」

 儀礼と別れを済ませ。 一行は一路シンセス聖教国へ出発した。


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